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2011年8月20日 (土)

阪神・淡路大震災を研究した林敏彦教授の警鐘

 東日本大震災の復興の足取りはしっかりとしているのか。阪神・淡路大震災の復旧・復興対策に直接関わり、かつ経済学者として、その過程を分析・研究してきた林敏彦同志社大学教授が19日、日本記者クラブで東日本大震災からの復興に向けて問題点を語った。

 その中から、いくつかポイントを紹介する。

・直接の経済被害額は阪神・淡路の9.9兆円に対し、東日本は林教授の推定では32兆円に達する(福島原発事故による被害は含まない)。ちなみに、被害推計はこれまで全部いい加減。例えば、今回、宮城県の住宅全壊を警察庁は7万戸と言っているが、県などほかは7万棟と言っている。1棟はほぼ3戸だ。明らかに、どちらかが誤っている。

・復旧・復興というが、復旧は法律で定義されている。復旧とは、死者などあらゆるものが還ってこないのに、施設だけを元通り、原形に戻すこと。復興は法律もないし、定義もない。新しい歴史をつくることであり、エンドレスである。

・大きな災害があると、災害ユーフォリアないしユートピアが生ずる。人々は皆、善人になるし、経済は活況を呈する。今回は3~5年か。長くは続かない。このユーフォリアのエネルギーを生かすことができるかが大事だ。その間にできるのは増税だと思う。タイミングを見計らって国民を説得するのが政治である。いまの政治はこのユーフォリアの活用ができていない。

・阪神・淡路のあと、兵庫県の実質GRP(地域内総生産)をみると、ユーフォリアの時期があったことがはっきりわかる。しかし、公共事業で供給サイドを元に戻したため、ピッカピカのゴーストタウン、シャッター商店街ができた。そして、日本経済に占める兵庫県のウエートは下がってきて、長期的な地盤低下がうかがえる。東北3県も、兵庫県のように、3年位のユーフォリアのあと、兵庫県のように沈んでいく可能性がある。

・東日本大震災後の復興需要で数年は食える。しかし、あと何が残るのか、どうなるのか、復興構想会議の報告はその点の言及が乏しかった。

・神戸には魅力があるから、新しい人が流入した。震災で出ていった人の7割位は戻ってこなかった。東日本大震災後、被災地から出ていった人はそっちで生活の基盤ができるので、ほとんど戻らないだろう。新しい魅力で人々を引き付けることを本気で考えねばならない。さもないと過疎化する。災害に強いゴーストタウンができるだけだ。

・東北復興の話は、同時に人口減少と高齢化が進む日本の話だ。東北で復興に失敗したら、日本の未来はない。日本は東アジアやBRICsとどう結び付いていくかを本気で考えなければならない。それと、エネルギーの地産地消、福祉の地産地消など、地産地消型経済モデルを打ち立てる必要がある。

・消費税引き上げは、東北3県は上げず、他は上げるというふうにしたらいい。阪神・淡路のとき、それと同じ構想を打ち出したが、当時の大蔵省はこれをつぶした。阪神・淡路大震災後、いろいろ復興のアイデアを民間から出したが、政府は反対してつぶした。アイデアをつぶすことに熱心な政府だ。

・原発事故では、家も田もそのままあるのに、被害が出ている。これについては、国が全部買い上げ、そして、将来、住める条件が整ったら、国から買い戻せるというのがいい。

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