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2011年10月26日 (水)

TPPと農業問題

 TPP交渉に参加すべきか、否かが大きな政治的争点になってきた。この問題をどう考えたらいいのか。たまたま読んだ川島博之著『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(2011年8月刊)は、なかなか説得力のある内容であった。

 「全ての農民が、貿易の自由化に反対しているわけではありません。大規模に畜産や野菜生産を展開している、いわゆるアントレプレナー型の農民は、貿易自由化に賛成しています」。「強く反対しているのは農協とその周辺の人々」だという。

 農協は20万人の職員を抱え、483万人の正組合員とほぼ同数の467万人の准組合員(農業を行っていない)を有している。農協はいまや「地方で金融や信用事業を行っている団体に変質して」いる。その金融事業の建て前は営農を補助することにあるが、もしも貿易自由化が行われ、多くの兼業農家が農業をやめると、農協は存在の大義名分を失う。だから、農協も、また、権限縮小につながる農林水産省も、現状を維持したいのである。そして、「農地の保有と転売益を優先する兼業農家の利害」も現状維持を求める。

 このように、「農協や兼業農家が貿易の自由化に強硬に反対することが、農業とは離れた利害にあることは否めない事実でしょう」。しかし、ここで、著者は「地方の悲しみ」とも呼べる感情が色濃く存在しているような気がしてなりません」、「真の(自由化)反対理由は、経済にあると考えるより、疲弊が止まらない地方の悲しみにあると考えるほうがよい」と述べる。「貿易自由化は、苦しんでいる地方により多くの犠牲を強いながら、豊かな暮らしをしている都市の人々がより豊かになるためのものに見えるのです」と。

 そこで、著者はコメを例外にして貿易自由化を行うこと、TPPもそうすることで参加可能だと主張している。興味深い主張である。

 ただし、一点、川島氏の認識に疑問がある。地方と東京などの大都市とを対比し、大都市が豊かな暮らしをしている、という認識が地方に根深く浸透していることは確かだが、本当に大都市の住民のほうが地方の住民より豊かだと言えるだろうか。非正規労働者が増え、失業者も多い大都市のほうが厳しい労働環境にあり、住宅事情などを含め、生活の質は地方よりも劣っているように思える。地方では、高度成長時代の格差観をいまだにひきずっているのではないか。そういう格差論を唱えるほうが、地方にとっては何かと都合がいいという事情もあるだろうが。

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