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2011年11月29日 (火)

石橋克彦神戸大学名誉教授の会見から

 M9.0の東北地方太平洋沖地震は、日本の地震学界の主流が全く予想だにしなかった巨大地震であった。一方で、主流の学者・研究者から全く無視されてきた学者・研究者の中に、地震の起こり方をかなり適切に解明した人たちがいた。石橋克彦神戸大学名誉教授がまさにその代表的な学者である。

 11月29日、その石橋氏が記者会見し、冒頭に「日本列島の地震テクトニクスの基本的枠組みの考察」、「南海トラフ巨大地震と糸静線大地震が連動する可能性」などについて1時間ちょっと講演したあと質問に答えた。その中から、素人の私にもわかった(つもりの)話をいくつか紹介する。

 東海、東南海、南海(+それ以西)が連動する巨大地震が起こるとき、富士川河口断層帯~糸魚川ー静岡構造線断層帯とも同時に活動することもありうる。富士川河口断層帯~糸魚川ー静岡構造線断層帯が先行的ないしは誘発的に活動するかもしれない。

 東京~名古屋間を走るリニア新幹線は、巨大地震で山の斜面が崩落する可能性があるので、非常に危険である。建設はとんでもないことだ。電力をものすごく使うことも、反対の理由だ。

 下北半島(再処理工場および原子力発電所を建設中)はめちゃめちゃに危ないところである。あの地形は、周りが海底で、皆、活断層だから。

 日本で核廃棄物を地下何百メートルに貯蔵するのは非常に危険。いま活断層がないと思っても、実際にはあるかもしれない。地下水でつながっているので、高レベル放射能が漏出し、生命を脅かす危険がある。

 地震予知のためには広域地殻変動監視が重要である。GPSでアムールプレートの東進なども含めた監視を行なうべきだが、若い人が広い視野で観測、解析することが大事だ。広域というのは、東アジアまで広げてのことである。

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2011年11月28日 (月)

「大阪維新の会」の勝利

 橋下徹大阪市長、松井一郎大阪府知事の誕生で、大阪市・府が関わる出来事は全国ニュースとして頻繁に報じられることになりそうだ。経済面などで地盤沈下が著しい大阪が新コンビの活躍で活性化することも期待したいところだ。

 「大阪維新の会」の牽引者である橋下氏と、同氏を支える松井氏とは、ロシアのプーチン首相とメドベージェフ大統領のコンビと似たところがある。独裁者的な点で、橋下氏とプーチン氏は似ているし、橋下氏が府知事から市長になったところは、プーチン氏が大統領から首相に転じ、また今度は大統領になろうというのと似ている。2人とも、その時々にやりたいことをやれるポストに移ることを何とも思わない。もしも、大阪府や大阪市が国に求める改革が受け入れられなければ、大阪維新の会は、国政を変えるための政治活動を始めるだろう。橋下氏らが地方政治に新しい波を起こしたことは確かだし、国政の側も、新たなチャレンジとして警戒もするだろう。

 「大阪都構想」の中身についてはここでは触れない。だが、地方分権、地域主権、あるいは道州制などという言葉だけが先走り、国と地方のありかたを抜本的に見直す必要がありながら、さっぱり見直しを進めようとしない国政に大きな一石を投じるのは間違いない。また、コンビの当選で、大阪府と大阪市の間の百年戦争をなくすことが可能となる。二重行政を整理することができれば、財政面で大きなプラスとなる。さらに、労働組合が市政を左右し、人件費をはじめとする歳出が放漫財政そのものになっている点を改める可能性が出てきた。いずれも、きわめて大きな意義がある。

 また「教育基本条例」案については、賛否の意見が分かれているが、いまの義務教育の問題点を指摘し、関係者が改善に取り組むよう求めている点を重視したい。いま、世界が激動している中で、日本の経済・政治・社会は停滞し、若者も内向きになっている。これを打開する方策の1つとして、戦後教育の歪みを直す必要がある。そういう問題意識を公けにして改革を求める橋下氏の問題提起は貴重である。

 現在の日本は国政が停滞しているだけではない。地方政治も似たようなものだ。地方自治体は国からの交付金などに頼り、自ら、歳入源を創出する努力はほとんどしない。歳出削減の努力も足りない。地域で突出している職員の高給与を是正せず、学校図書館の図書購入費用を削ったりしている。自治体の首長、議会議員のほとんどは自治体職員のコントロール下にある。大阪市はその最たるものだった。それに対し、橋下氏らは、従来、無関心で傍観者だった市民を巻き込んで市政・府政の改革を進めようとしている。

 名古屋市と愛知県など、橋下改革に呼応する自治体改革の動きはすでに始まっている。今回の大阪の選挙結果で、新たに刺激を受けて自治体改革に乗り出す地域も出現しよう。橋下氏のエキセントリックな言動に対する好き嫌いはあるだろうが、同氏が提起している問題はきわめて重要である。

 むしろ、問題は同氏の出自まで洗い出して攻撃するというメディアが相次いだことである。橋下氏らが大阪市長などに就任したら、既得権などを失う関係各層がその背後に存在すると思われるが、このこと自体が、橋下改革の必要性を如実に示しているのではないか。

 

 

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2011年11月23日 (水)

「提言型政策仕分け」の意味は何か

 政府の行政刷新会議(議長=野田首相)が4日間にわたって行なう「提言型政策仕分け」が23日に終わった。全体の議論をきちんとフォローしたわけではないので、以下に書くことは印象に近いと思うが、この仕分けの意味は一体何か、について考える。

 第3日に診療報酬の見直しなど厚生労働省関係の政策が取り上げられたが、民主党政権が引き上げを唱えてきた診療報酬に関して、民主党議員および有識者から成る9人の仕分け人は、報酬の本体部分について据え置き(6人)、抑制(3人)という判定を下した。診療報酬の抑制が医療崩壊を引き起こしたという民主党の基本的な認識に立つ仕分け人はいなかった。

 第4日には、公的年金の給付額が基本的な年金水準より2.5%も高いのを本来のレベルにまで引き下げるよう仕分け人は求めた。急増する生活保護受給者に関しても、給付の適正化や、職業訓練などによって働いてもらうようにすべきだなどの意見が出た。

 こうした仕分けの議論や結論は国民のおおかたの納得するものである。野田首相は「方向性をしっかり受け止め、予算編成に反映させていくと閣僚に指示したい」と述べた(朝日新聞11月23日朝刊)という。しかし、仕分けの結果の提言には拘束力はない。その点について首相は「最大の拘束力は国民が見ていることだ」(同)と言ったという。

 野田政権がこうした政策仕分けを実施した意図は、日本財政のこれ以上の悪化を抑え、財政破綻を回避することにあると思う。財政危機に直面しているにもかかわらず、民主党の国会議員の相当数は歳出抑制・増税をきらい、ばらまきを続ける政策を主張している。したがって、党内だけで議論したら、財政再建は困難である。

 そこで、財政健全化をめざす民主党内の幹部は、ばらまき派を抑え、財政健全化へ一歩でも二歩でも踏み出すためには、党内だけの議論で政策の方向を決めるのではなく、国民の良識に働きかけ、それをバックに政策を決めるしかない、と判断したのだろう。そこで、行政刷新会議の主催とはいえ、有識者を入れて、現在の政策を棚卸してもらい、望ましい改革の方向を明らかにする、それも公開の場で、という持って回った方策をとったわけである。

 もしも、自民党など野党の中に、財政再建を柱に据える政党があったら、野田首相ら財政健全化を志向する民主党政治家は、そうした野党と手を組んで財政改革に邁進していたかもしれない。だが、野党も財政危機を直視せず、倒閣や選挙を追求するにとどまっている。このため、やむをえず、民主党政権は自らの政策の問題点と対策を第三者の手も借りてまとめあげたと解釈することもできる。

 もう一つ、この政策仕分けの真の推進者は財務省である。民主党は政権を握ったばかりのときは政治主導を標榜して、霞が関の官僚たちを政策決定に関与させなかった。しかし、民主党の政治家にそれだけの力量がないことが次第に明らかになり、野田政権は自民党時代と同様、官僚に乗っかる形の運営に変わってきている。3.11以降の日本の難局を乗り越えるためには、民主党政権は官僚たちの知識、経験、能力に頼るしかなくなっている。そして、財政危機の深刻化に伴い、政権の中枢を押さえる財務省の危機感も強まる一方である。今回の政策仕分けは、そうした事情を背景に行なわれたもので、テーマと論点は財務省が用意したと推定される。

 しかし、財務省以外の各省は権限拡張を志向して、民主党内のばらまき志向の国会議員と結託し、財政健全化に抵抗する可能性は十分ある。もし、そうなら、政党と官僚機構とが複雑な権力抗争に走りかねない。そんなことを続けていたら、日本は間違いなく財政破綻する、と思うが。

 

 

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2011年11月20日 (日)

無い袖を振る日本財政

 原田泰氏が「新潮45」の最新号で、東日本大震災の被害を6兆円と推定、それを元に戻すには、臨時増税は要らないという趣旨の文を書いている。同氏が先に「中央公論」8月号で展開した論旨と大きくは違わない。こっちの文については、ブログの7月15日「復興費用はなぜ巨額?」で取り上げた。

 「新潮45」では、6兆円のうち4兆円を民間の被害とみなし、その2分の1を政府が助成するという前提で計算している。政府が受けた被害2兆円については、政府が負担して元通りにするという。したがって、政府が復興費用を20兆円以上と推計して、次々に補正予算を組んでいくのは、財政の大盤振る舞い、バラマキということになろう。

 被災した地域の自治体は、震災前に戻す復旧は無論のこと、これを機に、新たな街づくりや産業振興を図ろうと復興プランを立て、その資金を政府に出してもらおうとしている。そうした被災地の意欲は結構だが、政府がそれに応じていると、地域の“焼け太り”になりかねないのではと思ってしまう。原田氏の論文を読むと、そうした問題点に気付かされる。

 11月17日の朝日新聞朝刊。世界債務危機に関するインタビューで、伊藤隆敏東大大学院教授が日本の政府債務(借金)について「ここ1、2年は日本国債は心配ないだろうが、5、6年先には危機的な状況になる可能性はある。日本は欧州のことを心配している場合ではない」と語っている。どうすればいいかの質問に対して、「消費税の増税しかない。今の5%から25%に引き上げれば、年50兆円税収が増え、財政赤字が解消できる」、「先延ばしすれば、一気に危機がくる」、「痛みを伴っても徐々に増税するしかない」と述べている。

 また、11月18日の日本経済新聞夕刊のコラムで、足立茂文教大学教授は、イタリアの国債流通利回りが7%を超えて危険水域に入り、日本も財政再建待ったなしだと指摘している。そして、①恒久財源なしに新規施策はないというペイ・アズ・ユー・ゴー原則を守ること、②産業などの保護政策に決別し、教育・訓練で労働能力を高めること、③産業競争力強化をめざし、法人税、自由貿易協定などのビジネスインフラを強化すること、を求めている。

 国会、政治家は目先の政局にばかり目を奪われているのではなく、国の将来を考え、中長期的にものごとを判断してほしい。いまのままだと、間近に財政破綻が起きる可能性があるのではないか。

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2011年11月17日 (木)

バブル時の財テクで思い出すこと

 オリンパスがバブル時の財テクで抱えた巨額の損失を“飛ばし”、その後、企業買収を利用して穴埋めしていたらしい――就任したばかりの外人社長ウッドフォード氏を解任し、それに対し、解任されたウッドフォード氏が関係当局に訴えた事件の背景には、そうした不正行為があったようだ。この事件を機に、バブル時代の企業の財テクに関係したエピソードを思い出した。

 財テクという用語は、新聞社のデスク時代に、ハイテクをもじって思い付いたもので、紙面に使ったら、あっという間にあちこちで使われるようになった。新聞によっては、財務テクノロジーの略だとまで解説していた。

 戦後、普通だった額面増資から、当時までに、時価発行増資へと企業の資金調達のありかたが変わっていた。だが、当時の上場会社は、株主資本という考え方をせず、時価から額面を差し引いた残りは株主のものではなく、会社のものという受け止め方をしていた。時価発行増資、時価転換社債などの時価ファイナンスで得た額面を超す資金を、企業はコストがゼロの自己資金と理解していた。

 例をあげると、株価が1000円している会社が時価発行増資をすると、「1000円マイナス額面の50円」つまり950円はタダのカネが入ってきたというように企業は思い込んだ。配当は50円額面の1株に対して行なえばよい、そういう理解をした。それで、企業は、まず借金をできるだけ返そうとした。そうするだけで、金融費用が減り、増益になるからである。

 しかし、金融機関は融資返済に抵抗する。そこで、企業側は設備投資などの本業にカネをつぎ込むよりも、資金運用に充てるほうがもうかると解釈し、財テクに積極的になった。そして、株価が高いので、繰り返し時価ファイナンスを行い、資金運用ビジネスを膨らませる大企業が続出したわけである。

 企業の中には、コストがゼロの資金を運用して入ってくる金融収入を成長ビジネスのように思ったところもある。いま隆盛の大手商社でも、財テクを事業の新たな柱とまじめに考えていたほどである。

 財テクがさかんになった背景には、別の事情もあった。財テクを企業本体でやらず、特定金銭信託(いわゆる特金)やファンドトラスト(同、ファントラ)という別勘定でやることを証券会社や信託銀行が企業に勧め、企業側もそれに乗ったことである。

 証券会社の多くは優良顧客の企業に最低運用利回りを保証し、証券会社の投資判断で株式売買などを行なった。それによって自らの売買手数料をかせいだ。それを指をくわえて見ていた信託銀行も、主要な融資先に対し、特金などの設定と資金運用の一任を働きかけた。こうした際、信託銀行も最低運用利回り保証を行なったりしていた。その際、支店長が一札入れるなどしていた例もある。

 1980年代後半のバブルの時代、財テクをやらない企業はどうかしているという雰囲気が濃厚だった。オリンパスも財テクにのめりこんでいたというわけだ。ただ、同社の場合、証券会社や信託銀行の利回り保証を得ていなかったかどうかはわからない。バブル崩壊後、証券会社の損失補てんが国会などで大きな問題になり、事業会社の中には、利回り保証や損失補てんの約束をしていた文書を持ちだして、その実行を要求することがやりにくくなったところが多い。オリンパスはそっちのケースかもしれない。

 バブルの時代の財テクはバブル崩壊で一挙に消滅した。その過程は歴史的な経緯を踏まえないとわかりにくい。

 

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2011年11月16日 (水)

被災地中小企業の再生支援

 国会議員は誰も、財政健全化を意識して歳出や立法に取り組まねばならない。これは当たり前のことである。

 東日本大震災で被災した中小企業は被災前からの借金を抱えているだけでなく、事業を再建しようとすると、新たな借り入れが必要となる。このため、政府・民主党は産業復興機構を設立して、そこが金融機関から中小企業向けの債権を肩代わりし、借金返済を猶予するスキームを考え、財源に、中小企業基盤整備機構から出資させることにした。

 これに対し、自民党、公明党などの野党は再建困難とみられるような中小企業をも債権肩代わりの対象に入れるよう求めた。そして、それに沿った仕組みを東日本大震災事業者再生支援機構法案として国会に提出した。焦げ付きになった場合には国が穴埋めするというもの。

 民主党案は、事業仕分けで国庫に返納することが決まっているカネを“流用”すれば、新たな法律を制定する必要がないため、被災地救済にすみやかに対処できるという。いったん手にしたカネを返したくない役所の悪知恵と言えなくもない。

 結局、産業復興機構と東日本大震災事業者再生支援機構の両方を併存させ、連携させるという妥協が成立し、それをもとに修正された再生支援機構法案が15日、衆議院を通過した。近く参議院でも可決し、成立する見通しという。

 衆参のねじれがあるため、与党が野党に譲歩する形で法案が成立するケースが増えたのはやむをえない。さりとて、野党が反対のための反対をして、いたずらに時間を空費したり、歳出が膨張することになるのは、内外の経済情勢が緊迫の度合いを強めているときだけに非常に問題だ。

 今回の件では、野党が、再建困難とみられる中小事業者への融資債権までも実質上、国が金融機関から肩代わりし、焦げ付いた場合には国が穴埋めするというスキームを主張し、それが法制化する見込みだ。しかし、再建がむずかしいとみられる中小事業者の被災前の債務を肩代わりするというのは、国はどぶにカネを捨てるようなものではないか。

 被災した中小企業が気の毒だからといって、再建の見通しのない事業にまで政府がカネを出すのはおかしい。事業をやめざるをえない中小企業主の生活支援は当然行なう必要があるし、政府がやるのはそこまででいい。そして、財政負担も少なくてすむ。

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2011年11月 9日 (水)

リーダーシップを欠く野田民主党政権

●TPP(環太平洋経済連携協定)に日本が参加する方針を10日、野田首相が記者会見で表明する予定と伝えられている。このTPPの交渉に参加するか否かについて、野田首相は民主党内の、この問題に関するプロジェクトチームの結論が出るのを受けて、自らの意向を決定するという言い方に終始してきた。

 複雑な問題なので、慎重に党内で検討してもらうというのは必ずしも悪いとは言えない。しかし、農業関係や医療関係の強い反対を受けて、街頭演説までしてTPPに絶対反対と唱えてきた民主党議員までいる。それだけ、政治的にも大きな問題になったTPPである。野田政権は、TPPとは何か、その詳細な内容と論点、そして、わが国の将来にどのようなプラスとマイナスがあるかを国民にわかりやすく説明すべきであった。国会でも、十分に時間をかけて議論すべきだった。

 野田首相が一貫して、自らの見解を明らかにしなかったのは、TPPの全体像がよくわからなかったからではないか、とすら疑う。が、それはさておき、プロジェクトチームの結論が最終的に交渉参加すべきではない、という内容だったら、野田首相はそれに従うつもりだったのだろうか。あるいは内閣と党執行部との内々の合意で、反対する勢力に言わせるだけ言わせ、最終的には交渉参加に反対しないという結論にするという筋書きで田舎芝居を国民にやってみせたということか。はっきりしているのは、これほど重要な問題に対して、首相が積極的にリーダーシップを発揮することはなかったということだ。

 野田首相がTPP交渉への参加を発表したとしても、国民はTPPへの参加で何が起こるか、日本の経済や社会がどう変わる可能性があるかについて、よく知りたいと思う。それに答えることができるよう、十分に情報公開、わかりやすい説明を求めたい。

●東日本大震災の復興財源となる所得税増税の期間が25年間になるという。民主、自民、公明の三党の合意による。償還期限が最長25年までの復興国債を発行し、その償還財源として所得税の増税を25年間行うことになる。民主党は当初10年としていたが、増税の負担が重すぎると自民、公明が反対し、期間を25年にまで延ばした。

 復興財源を所得増税で賄うのは、大震災の被災者に対して「かわいそうに」と他地域の人々の同情や支援が集まりやすいからだ。したがって、被災からあまり年月が経たないうちに増税を終えるのが望ましい。

 だが、三党の合意はそれとは正反対である。年々の負担が軽ければいいという政治的な判断があるからだろう。しかし、年収500万円の標準世帯では、年間1240円の増税にしかならない。増税期間を10年としても、その3倍程度にすぎない。家族で1回、外で食事したら支払う程度なので、復興のためなら国民に受け入れてもらえる額だ。

 自民、公明は現在の国の財政状況をわかっているはずである。国民1人あたま800万円ぐらいの借金を抱えており、財政破綻を避けるには、大幅の増税が必須である。税と社会保障の一体改革においても、消費税の増税を実施せざるをえない。したがって、いまのうちに、復興財源となる臨時所得増税は早く終えておきたい。それなのに、復興財源確保のための時限的な所得増税さえも期間を延ばして見かけ上、少なくしようとするのはどうみても納得できない。

 野田首相は10年のほうが望ましいという考えを表明している。だが、何が何でもそうしたいという主張や説得をするわけでもない。国民に向けて訴えるわけでもない。要するに、与野党折衝にゆだねてしまっているのである。残念ながら、これでは野田首相を理念なき政治家と言わざるをえない。

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2011年11月 6日 (日)

スリー・マイル事故の調査団報告書(1979年)を読み返す

 古い書籍などを整理しようと物置を調べていたら、「スリー・マイル・アイランド原子力発電所事故調査団報告書(昭和54年4月、電気事業連合会)が出てきた。興味深いので、少し紹介する。

 調査団は当時の九州電力取締役原子力部長が団長となり、副団長および団員も九電力の原発担当者および米国事務所のメンバー。1979年3月28日に事故が起きてからわずか半月ちょっとあとの4月14日に成田を出発し、同23日に帰国した。そして報告書の日付は4月となっている。電力業界がスリー・マイルの事故をいかに重視していたかが想像できよう。

 「まえがき」には、「事故に関して電気事業者の立場で、直接関係者から事情を聴取し、その詳細を調査することにより、何が発端になって事故が発生し、何が事故を拡大させたかを明らかにし、国内の原発の安全性、信頼性の一層の向上に資するため」と述べている。

 報告書本文で注目したのは、第一に、事故の時間を追っての経過(事故シーケンス)がかなりくわしい。政府発表資料などにより「3~6秒後 加圧器逃し弁開」などと事故発生時からの事故事象が明らかにされていること。

 第二に、軽微な放射能放出にとどまったにもかかわらず、州知事が3月30日に5マイル以内の妊婦と学齢期前の幼児に退避勧告を出したりしたことなどで、大きな社会的反響をよんだことから、「正確かつ迅速な情報伝達がまず第一に肝要と考える」と指摘していること。

 第三に、「カーター大統領は4月11日付けで11名の広範囲の人々からなる事故調査特別委員を任命し、約6ヵ月の予定で事故等の究明に当たらせることを発表した」。「この報告は非常に強い影響力を持つものと予想され、為すべきことが為されていたか、安全対策でどのような変更が必要か等々が検討され、その結果が議会に報告されることになる」と述べていることだ。

 「調査結果のまとめ」は「調査の結果、日本の軽水炉はスリー・マイル・アイランド2号機の設備に比較して、種々の点で安全性が高いことが判明した」と言っている。

 スリー・マイル・アイランド2号機はバブコック&ウイルコックス社製のPWR(加圧水型軽水炉)で、日本の関西電力などが導入しているウェスチングハウス社製のPWRと若干違うが、「日本のPWRがより安全性が高いと言える」としている。また、フクシマなどのBWR(沸騰水型軽水炉)はPWR発電所と設計理念が異なっているため、直接、設備面から比較することはできないが、「スリー・マイルのような事象に対して十分対処でき、安全であると考える」と結論づけている。

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2011年11月 4日 (金)

ギリシャ危機は数年先の日本を予告しているのかも

 世界中を脅かしているギリシャの財政危機。同国の政治が全く指導力を失っており、“苦い良薬”を飲むよう国民を説得できそうにない。国債市況は暴落し、最新の情報では、海外でギリシャ国債を最も多く保有しているBNPパリバは保有する同国債の簿価を60%切り下げたという。ギリシャ危機の深化につれて、イタリア、ポルトガルなど財政状態が悪い国の国債も値下がり(利回り上昇)しており、ギリシャがこければ、これらの国も連鎖的に金融危機に見舞われるかもしれない。

 だが、日本はこのEU諸国の危機を遠い対岸の火事視してはいないだろうか。いま、すぐに日本が財政破綻する可能性は小さいとはいえ、近い将来を考えると、その可能性は非常に大きいと言わざるをえない。

 国内貯蓄で国債を消化している限り、財政破綻は起きないといわれてきた。別の言い方をすれば、経常収支が黒字である限り、大丈夫、というわけである。しかし、最近は貿易収支が赤字になる月もあり、円高による生産拠点の海外シフトが顕著になっているので、間もなく年間合計で赤字になると見込まれる。そして、経常収支の黒字が縮小し、赤字に転換する時期がやって来るだろう。枝野経済産業大臣は「おそらく2015年に日本の経常収支は赤字になる」と語っている(朝日新聞11月4日朝刊)。同大臣は、日本の経常収支が赤字になれば、円は暴落する、ギリシャの財政赤字は日本にとってひとごとでなくなる、ということも言っている。

 いまは“安全資産”にみえるからか、外国の投資家が円を買う勢いが強い。その一部は日本国債の購入に向かっている。このため、ことし6月末現在、外国投資家の日本国債保有額は66兆8600億円で、国債発行残高に対する比率は7.4%と前年同期を1.4%ポイント上回っている。その後も、外国人投資家の日本国債買い越しは続いているようだ。

 だが、外国投資家はEUの金融危機の動向や日本の財政健全化への取り組みいかんなどですばやく日本国債を売ったり買ったりするだろう。それが日本国債の市況に及ぼす影響はまださほどではないと思われるが、保有比率が2ケタになれば、外国投資家の売りや買いで相場がかなり振れるおそれが出てこよう。それがきっかけで、財政危機に追い込まれる懸念もある。

 野田総理大臣はG20の首脳会議で、社会保障費の安定財源を確保するため2010年代の半ばまでに段階的に消費税を10%まで引き上げると明言した。しかし、この増税で国債発行残高が減るわけではない。毎年、数十兆円ずつ国債残高が増えるのを抑える手だてはほとんど何も示されていない。当然、財政悪化は年を追って深刻化しよう。ギリシャの危機は日本の危機の前触れと受け止めるのが適切ではなかろうか。

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2011年11月 3日 (木)

「主婦年金過払い」問題にみられる民主党議員のでたらめ

 夫が会社や官庁を退職すると、専業主婦は国民年金に入り、保険料を納付しなければならない。しかし、忘れたりして、この手続きをしないまま60歳になると、年金を受給できない場合もあるが、一方で、受け取る年金が本来の支給額よりも多いというケースが生じているという。本来の年金額よりも過払い(もらいすぎ)になっているわけだ。昨年12月に明らかになったこの問題をめぐって、このほど民主党は多く受け取った分の返還を求めないことにしたという。

 厚生年金や共済年金は、専業主婦から別途、保険料を受け取ってはいない。そのことの是非はかねて争点になっている。また、年金制度には国民年金などを含め、いくつもあり、その一本化も大きな課題になっている。主婦年金の過払い問題は、そうした複雑な年金制度のせいで起こった出来事と言えなくもない。年金制度の抜本的な再編成を怠る政府の責任は重大である。

 それはそれとして、過払い(もらいすぎ)分を返還しなくてもよい、という民主党の方針は常識や正義に反する。まじめに国民年金への変更を届け出た人たちが馬鹿を見る。年金は被保険者の積み立てと国からの拠出とで支払われるのである。国の負担する分は言ってみれば国民の納める税金である。それを制度の不備などで払い過ぎたのだから、政権与党としては、何が何でも取り戻すのが当たり前ではないか。

 民主党厚生労働部門会議は次の総選挙を意識し、過払いの回収をすべきではないという同党議員たちの主張を受け入れたといわれる。選挙で勝つためには、このような一種のばらまきはやむをえないということらしい。

 日本国の財政状態は民主党政権になって以降、税収を超える借金(国債発行)続きで急速に悪化している。世界的な金融危機のもと、日本の財政破綻リスクは大きくなる一方である。したがって、政権与党、民主党の議員が依然、財政に関してバラマキ的なセンスでいるとしたら、この国は危うい。

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