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2011年11月23日 (水)

「提言型政策仕分け」の意味は何か

 政府の行政刷新会議(議長=野田首相)が4日間にわたって行なう「提言型政策仕分け」が23日に終わった。全体の議論をきちんとフォローしたわけではないので、以下に書くことは印象に近いと思うが、この仕分けの意味は一体何か、について考える。

 第3日に診療報酬の見直しなど厚生労働省関係の政策が取り上げられたが、民主党政権が引き上げを唱えてきた診療報酬に関して、民主党議員および有識者から成る9人の仕分け人は、報酬の本体部分について据え置き(6人)、抑制(3人)という判定を下した。診療報酬の抑制が医療崩壊を引き起こしたという民主党の基本的な認識に立つ仕分け人はいなかった。

 第4日には、公的年金の給付額が基本的な年金水準より2.5%も高いのを本来のレベルにまで引き下げるよう仕分け人は求めた。急増する生活保護受給者に関しても、給付の適正化や、職業訓練などによって働いてもらうようにすべきだなどの意見が出た。

 こうした仕分けの議論や結論は国民のおおかたの納得するものである。野田首相は「方向性をしっかり受け止め、予算編成に反映させていくと閣僚に指示したい」と述べた(朝日新聞11月23日朝刊)という。しかし、仕分けの結果の提言には拘束力はない。その点について首相は「最大の拘束力は国民が見ていることだ」(同)と言ったという。

 野田政権がこうした政策仕分けを実施した意図は、日本財政のこれ以上の悪化を抑え、財政破綻を回避することにあると思う。財政危機に直面しているにもかかわらず、民主党の国会議員の相当数は歳出抑制・増税をきらい、ばらまきを続ける政策を主張している。したがって、党内だけで議論したら、財政再建は困難である。

 そこで、財政健全化をめざす民主党内の幹部は、ばらまき派を抑え、財政健全化へ一歩でも二歩でも踏み出すためには、党内だけの議論で政策の方向を決めるのではなく、国民の良識に働きかけ、それをバックに政策を決めるしかない、と判断したのだろう。そこで、行政刷新会議の主催とはいえ、有識者を入れて、現在の政策を棚卸してもらい、望ましい改革の方向を明らかにする、それも公開の場で、という持って回った方策をとったわけである。

 もしも、自民党など野党の中に、財政再建を柱に据える政党があったら、野田首相ら財政健全化を志向する民主党政治家は、そうした野党と手を組んで財政改革に邁進していたかもしれない。だが、野党も財政危機を直視せず、倒閣や選挙を追求するにとどまっている。このため、やむをえず、民主党政権は自らの政策の問題点と対策を第三者の手も借りてまとめあげたと解釈することもできる。

 もう一つ、この政策仕分けの真の推進者は財務省である。民主党は政権を握ったばかりのときは政治主導を標榜して、霞が関の官僚たちを政策決定に関与させなかった。しかし、民主党の政治家にそれだけの力量がないことが次第に明らかになり、野田政権は自民党時代と同様、官僚に乗っかる形の運営に変わってきている。3.11以降の日本の難局を乗り越えるためには、民主党政権は官僚たちの知識、経験、能力に頼るしかなくなっている。そして、財政危機の深刻化に伴い、政権の中枢を押さえる財務省の危機感も強まる一方である。今回の政策仕分けは、そうした事情を背景に行なわれたもので、テーマと論点は財務省が用意したと推定される。

 しかし、財務省以外の各省は権限拡張を志向して、民主党内のばらまき志向の国会議員と結託し、財政健全化に抵抗する可能性は十分ある。もし、そうなら、政党と官僚機構とが複雑な権力抗争に走りかねない。そんなことを続けていたら、日本は間違いなく財政破綻する、と思うが。

 

 

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