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2011年12月 1日 (木)

現実を見ようともせず、財政危機に対し、あまりに鈍感な民主党

 民主党の厚生労働部門会議は、「社会保障と税の一体改革」で進める年金、医療、介護などの改革について分野ごとの作業チームがまとめた報告を了承した。その内容の要約が新聞に載っている。政府・与党が一体改革大綱をつくるときに、この報告がベースになるのかもしれないが、報告の底流にある、「弱者を助ける」、「社会保障は手厚ければ手厚いほどいい」といった発想はいまの財政危機に対して、あまりにも鈍感すぎるのではないか。

 東日本大震災の被災地の首長によると、支援や補償金をもらった被災者の中には、自分で働こうとせず、日用品まで援助してもらうようになっている人がいる、あるいは好条件の職がないので、失業手当が切れるまでは働かない人が少なくないという。新聞報道によれば、事業を復活しようと努力している事業者が求人しても、応募がほとんどないので、事業再生が困難とのことだ。被災者がかわいそうだから、と援助をしすぎると、怠けてしまう人が少なからず出てくる。援助もやりすぎるのはよくない。

 JR沿線の駅のそばにある大きなゲームセンターは、昼間、店内をのぞくと、毎度のことだが、高年齢の男女が何人も並んでゲーム機とにらめっこしている。よくまあ暇だね、とあきれるほどだ。年寄りはお金があるからだろう。街でゲームセンターの広告入りのティッシュを高齢者にもどんどん配っているわけだ。観光地を訪れる人も元気な高齢者が多い。社会保障制度が前提としている「高齢者は弱者」という決めつけは、暇で元気で、かつ豊かな高齢者が少なくないという実態を映していないように思える。

 そうした現実を踏まえると、以下のような考え方が妥当ではないか。

 社会保障はその重要性を誰もが認識しているが、その財源にはおのずと限度がある。「フリーランチはない」のである。年金、医療、介護、子育てなどのサービスを充実するというなら、それに必要な財源を確保しなくてはならない。その際、企業に出させればいいとか、金持ちに負担させればいい、という意見が必ず出るが、それをやりすぎたら、企業が国際競争に負けるため海外に移ってしまうとか、社会を引っ張っていく優秀な人材がやる気を失い、外国に行ってしまうとか、といったマイナスが生じよう。真の弱者を見極めること、そして、これまでほとんど行なわれていない社会保障支出のムダや歪みを徹底的になくすという取り組みもまた不可欠である。

 いまは高齢化で年々膨らむ社会保障の財政負担を、国債発行という形で将来世代につけ回ししている。政府の国家戦略会議は11月30日の会議で、来年度予算では新規国債の発行は44兆円を上回らないという目標を再確認した(震災で発行する国債は含まない)というが、現在の年間税収に匹敵する“借金”を毎年積み上げて平然としているのは狂気の沙汰としか思えない。一体改革で消費税を5%引き上げても、年に12、3兆円の税収にしかならないのである。

 民主党の厚生労働部門会議は族議員の集団だと思えばいいのかもしれない。しかし、それにしても、上記のような現実を見ようともしないこと、そしてユーロ圏の経済危機を対岸の火事のように思っている認識の甘さには唖然とする。

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