« 林正義東大准教授が「地方公共団体も自ら増税を考えよ」と | トップページ | ダーバン合意では温暖化の勢いは止まらない »

2011年12月10日 (土)

学者のなれあい

 12月10日の朝日新聞「私の視点」に科学ジャーナリスト、元北国新聞論説委員の井上正男氏が書いている。その指摘は正鵠を射ていると思う。

 東北沖ではM9以上の地震は起きないという地震学者の思い込みはなぜ続いたのか。それについて、①東大地震研を頂点とする仲良しクラブ的な学会の体質、②そうした学者や学会に依存して、その研究成果を鵜呑みにして報道しすぎた科学ジャーナリズムの体質、を挙げている。地震予知を地震予測などと混同しているとか、「予知できる」を前提に多額の研究費をもらう学者に引きずられていたなど報道関係者の問題点を指摘している。

 だが、こうした問題点の指摘および反省を、これまで朝日新聞など大手メディアの現役の記者は書いていない。朝日は井上氏の指摘を受けて、なるほどと思い、投稿の掲載で自分たちの反省に代えたのだろうか。もし、そうなら、それは逃げではないかと思う。

 私の経験では、井上氏が指摘するほど明確なものではないが、学者の世界の内々のなれあいや仲良しクラブ的な出来事を見聞きすることがあった。

 某企業関係の財団がすぐれた著書を表彰しているが、その選考委員である著名な学者は、選考結果の発表会で、かつて自分が教授をしていた大学の講師だったか助教授(いまは准教授というが)だったか、受賞内定者とけっこう親密な関係を感じさせる長話をしていた。すぐ傍で聞くともなしに聞いていて、公正な審査で受賞者を決めたのか、が気になった。

 すぐれた社史を表彰するための審査委員になっていたことがある。私を除いて委員すべてが大学の先生だった。予備審査を突破した社史を、委員が議論して合否を決めるのだが、驚いたことに、企業の依頼で当該社史を書いた大学教授の委員も審査の席に出ていた(ほかの委員もどこかの社史を書いていた)。そして、執筆のいきさつなどを話し出した。そこで、私は筆者である教授に退席してもらい、そのうえで審査するよう主張し、受け入れてもらった。審査の結果は×だった。もし、執筆者が審査の席にいたら、問題点を明快に言いにくいため、表彰対象になっていただろう。

 井上氏は科学ジャーナリズムの体質を問題にしていたが、一般論として、取材相手の言うがままに書くのではなく、取材先と適度の緊張関係があることは重要である。検察担当の記者は、ついこの間まで、検察庁の取材を規制され、検察の言うことを鵜呑みにする傾向があった。また、かつての中国特派員や、外報部(外信部)の中国担当者は、中国(政府)を真っ向から批判するのを避ける傾向があった。大陸中国での取材の許可が得られなくなるような記事は書かないようにしていたのである。しかし、このように取材対象に遠慮すればするほど、相手は居丈高になる。井上氏の問題提起はいろいろなことを考えさせる。

 

|

« 林正義東大准教授が「地方公共団体も自ら増税を考えよ」と | トップページ | ダーバン合意では温暖化の勢いは止まらない »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/53452542

この記事へのトラックバック一覧です: 学者のなれあい:

« 林正義東大准教授が「地方公共団体も自ら増税を考えよ」と | トップページ | ダーバン合意では温暖化の勢いは止まらない »