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2012年1月22日 (日)

後味が悪いオリンパスのその後

 オリンパスの不祥事は、なんだか釈然としない形で終息をみようとしている。

 同社は巨額の財テク損失を“飛ばし”で隠ぺいし、企業買収などを利用して徐々に処理してきた。その事実を知り、究明を始めたウッドフォード社長は、不正に関わった一人である菊川会長(当時)のイニシアチブで解任された。同氏はそうした措置の非を鳴らし、復帰をめざした。だが、主取引銀行や大株主の多くはウッドフォード氏を支持しなかった。

 株主総会で争うのを好まないからか、対立鮮明化によって株価が下がって損することを恐れたからか、外国人だから社長になっても社内の支持は得られないと考えたからか、よくわからない。ただ、その結果、主取引銀行を含め、同社の国内外の大株主は正義、公正、透明性といった価値観に縁遠いことがはっきりした。

 同社は昨年11月に第三者委員会を設置して、飛ばしなどの実態をおおむね解明した。そして、弁護士など外部の人に依頼して、取締役責任調査委員会および監査役等責任調査委員会を社内に設置して、誰にどんな責任があるかを究明してきた。具体的に、誰がいくら会社に損害を与えたかも算出した。

 それらを受けて、同社(の取締役会)は6人の現取締役と13人の旧取締役に対し、36億1千万円の賠償を求める訴えを起こした。高山社長は自分を相手どって損害賠償を求めるという変な立場にある。これは異常なことだ。取締役責任調査委員会の報告によれば、不正に関わった現・旧経営者は会社に859億円の損害を与えた。しかし、同社は、支払い能力や責任の度合いなどを考慮して36億円ちょっとの請求額に決めたという。高山社長以下、現経営陣は知らぬ存ぜぬではすまない。その連中が自分を相手どっての損害賠償請求額を自分たちで決めるようなものだから、請求額が適正なものとは限らない。

 同社の取締役会を構成する現経営陣はウッドフォード追い出しに全員賛成しており、不正に多かれ少なかれ関与している。この、不正に関わった役員たちが損害賠償の提訴をし、いかにも公正、中立的な立場にあるかのような印象を世間に振りまいているとしたら、それはサギ的行為ではないか。

 監査役にしてもしかり、監査役等責任調査委員会によれば、5人の旧監査役が83億円の損害を与えた。それに対し、同社取締役会は1人が5億円、4人連帯で5億円の損害賠償を請求する訴えを起こした。すでに述べた通り、取締役会のメンバーはオモテを堂々と歩ける立場ではない。そんな連中が決めた損害賠償請求額が適正かどうか。

 第三者委員会の報告は、公認会計士(監査法人)についても触れてはいるが、損害賠償を求めるような責任があるとは言っていない。したがって、オリンパスは公認会計士への賠償請求を起こしていない。だが、隠ぺいがうまいから、会計士が気付かなかったということで責任を免れていいものか。監査は決まった手続きさえとっていれば免責という発想は、監査の機能を形骸化する。会計士界は衰退しよう。

 ところで、東証はオリンパスの上場を維持すると発表したが、その根拠として、債務超過になっておらず、損失隠しが投資家の判断に重大な影響を与えたとは言えないことを挙げた。損失隠しに歴代トップが関わっていたものの、社内の一部に限られていたから、組織ぐるみとは言えないと判断したという。

 株主にとって上場維持は望ましい。でも、東証が、オリンパスの大がかり、かつ悪質な損失隠しを大したことではないかのように判断したのは問題がある。裁量的な対応としか思えない。世間では、オリンパス事件をコーポレートガバナンスの観点から大きな問題とみている。そういう動向ともそぐわない。

 また、主取引銀行はウッドフォード氏の面会要請を拒否し続けた。それが、ウッドフォード氏の社長復帰の可能性を断ち切った。なぜかはさておき、主取引銀行はオリンパスの資金運用の失敗と巨額の損失発生を知っていたのではないか。財テクが華々しい頃、大手銀行も事業会社や個人にどんどん財テクを勧めていた。必要な資金を積極的に貸していた。それは周知の事実である。企業が主取引銀行と深い付き合いを持ち、メーンから頼まれたら、事業会社もノーと言いにくい。そんな時代があったことをオリンパス事件は思い出させてくれる。

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