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2012年2月26日 (日)

AIJ投資顧問にひっかかった背景

 AIJ投資顧問が預かった資金のほとんどが消失しているという現代の怪。厚生年金基金のおカネだけに、運用を委託していた企業年金は、どうしたらいいか、途方にくれていることだろう。

 この事件の背景を探るに、第1に、デフレの長期化に伴い、超低金利が長い間、続いていることが挙げられる。年金の予定運用利回りは5.5%だが、現実はそれを大幅に下回っている。そこで、基金は世間の平均よりも高い利回りを得られそうな資金運用会社に運用委託したがる。そこに危険がある。企業年金の受給者の反発もあるが、予定運用利回りを実勢に応じて変えやすくする必要がある。

 第2に、基金の担当者は資金運用のしろうとである。だから、銀行、証券などに運用を委託している。どこそこの業者が良い運用成績を挙げていると聞けば、そこを頼ろうという気になりやすい。だが、投資顧問会社は登録制なので、簡単に開業できるし、銀行などへの規制と違って政府のチェックもゆるやかである。本当に信頼がおける業者か、徹底的にチェックすべきだが、AIJ投資顧問の顧客はそれが不十分だったとみられる。

 AIJ投資顧問はバブルの末期の1989年に設立。常勤役員3名(ほかに非常勤役員1名)、使用人8名の小世帯で、何千億円も運用する能力がないことは一見してわかりそうなものだった。

 第3に、資金運用の方法は昔ながらの長期投資もあれば、コンピュータ・ソフトを使って寸秒を争う短期売買もある。後者は、高度の数式を用いる運用もあり、普通の人間には理解不能である。したがって、基金は運用を丸投げすることになりやすい。年金を所管する厚生労働省は、年金基金の財産を悪質な行為から護るため、資金運用を引き受ける業者に対するチェック体制が足りなかった。役所の通弊として、書類チェックで事足れりとするきらいがある。それでは悪質な行為を防ぎきれない。

 第4に、資金運用受託は、基金などの顧客から「投資一任」される、つまり、運用を任され、損しても運用資産の一定率の手数料がもらえる、不思議な?商売である。失敗しても、ツケは委託者に回す。もちろん、それで、顧客を失うおそれはある。運用がうまくいけば、手数料収入が増える。運用担当者の給与もそれに応じて増える。したがって、手数料をたくさんもらえる積極運用に走りがちとなる構造的な歪みが存在する。これはリーマンショックが起きた要因の1つにもなっている。

 AIJは受託した資金運用を海外の投資会社に丸投げし、それがさらに別のところに行っているようだ。オリンパスもそうだが、金融のグローバル化は金融犯罪の温床にもなりやすい。そして現代経済を不安定にしている大きな要因でもある。AIJ問題は簡単な話ではない。

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