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2012年2月29日 (水)

福島原発の民間事故調報告書は必読の書

 福島第一原発の事故の経緯、対応や、事故の歴史的・構造的な要因などを民間の立場で追及してきた一般財団法人日本再建イニシアティブの福島原発事故独立検証委員会が2月28日、調査・検証報告書を発表した。

 報告書は400ページにものぼるが、一番、注目されるのは、最悪の場合、福島の原発が次々に燃料破損や溶融で放射能を広範囲にまき散らし、首都圏の3000万人が退避(どこへ?)を余儀なくされることもありえたということである。日本国の中枢が完全にマヒ、空洞化する可能性もあったということだ。日本国は滅亡の瀬戸際までいったのである。

 その意味では、東京電力から福島第一原発の従業員を撤退させたいという申し入れをはねつけた菅総理大臣のリーダーシップは大いに評価できる。ほかの点では、マイナスだらけの首相だったが。2011年3月15日、東電本店に乗り込んだ菅首相は東電社員に「訓示」した。「放棄すれば、何ヵ月のちにはすべての原子炉と使用ずみ燃料プールが崩壊して、放射能を発する。チェルノブイリの2倍から3倍のものが10基、20基と合わさる。そうなれば日本の国が成り立たなくなる。‥‥君たちは当事者なんだ。命をかけてくれ。‥‥日本がつぶれるかもしれないときに撤退はありえない。」と。

 その時点を境に、東電と政府とが歩調を合わせ、危機突破に向けて動き出した。官邸の中枢スタッフは「この国にはやっぱり神様がついていると心から思った」と漏らしたそうだが、日本沈没の破局一歩手前まで行った事実を、日本国民はしっかりと認識する必要があると思う。

   この報告書は、原子力発電のリスクに対して、東京電力が十分な備えをしてこなかったこと、また、原発を推進し、監督する政府のほうは安全規制をおろそかにしたままだったのを具体的に指摘。また、事故が起きたら、どうやって被害を最小限にとどめるか、の備えが全くできていなかったことを詳しく述べている。

 検証は原発事故を対象にしているのだが、読んでいると、日本の社会・政治・経済などにおいて相次いで起きているさまざまな不祥事の背後にある日本社会の欠陥を明らかにしているように思えてくる。その意味で、この報告書は現代日本の病理をえぐりだしている警世の書でもある。

 ところで、日本は原発を廃止すべきか、否か。発表会見で質問が出た。それに対し、検証委員会の北澤宏一委員長は今回の検証とは関係ないことして回答を避けたが、遠藤哲也委員は「人災は克服できる。原発は進めるべきだ」と答えた。山地憲治委員も「選択肢として維持すべきだ。開けたパンドラの箱を閉めるのはむりだ」と。但木敬一委員は「風力発電などで全部補えればいいが、いまの技術では電力が不足する。したがって、電力使用を減らすか、さもなければ、人智の限りをつくしてきめ細かい対策をとる必要がある」と言った。野中郁次郎氏は「私はプラグマティズム。現実を直視する。こういう機会に多元化を議論するのはいいこと。イノベーションもある」と述べた。

 東電はこういう人たちによる調査聞き取りを拒否したのだが、後世、それは誤った判断だったと批判されるかもしれない。

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