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2012年3月15日 (木)

日銀の政策転換に対する危惧

 2月の金融政策決定会合で、日本銀行はデフレ脱却に向けて相当思い切った対策を打ち出した。そのおかげで、株式相場は上昇し、日経平均株価指数が1万円の大台に乗せた。円相場も円安に転じ、80円台前半にまで戻した。サプライズ効果もあるが、それまでデフレ対策に真正面から取り組むことに及び腰だった日銀が、かなり本気になったと受け取られたからだろう。

 しかし、日銀の方向転換をもろ手を挙げて歓迎していいのか。その点について、日本経済新聞は「経済教室」欄で、「試練続く中央銀行」と題して14日に上、15日に中を掲載している。上は池尾和人慶応大学教授、中は翁邦雄京都大学教授が執筆している。偶然だろうが、珍しく似たトーンの記事である。そして、彼らが共に心配しているのは、財政再建が進まない中で、政府の国債消化に日銀が協力せざるをえなくなっていくのではないかということだ。

 池尾氏は、中央銀行が短期市場金利を低位に維持するとコミットし長期国債の購入を増やすとすると、民間金融機関はリスクのある民間向け融資よりも国債保有を増やすほうが収益が上がる、と指摘。今回の金融緩和策は国債消化と安定保有の促進策として機能するのではとの懸念を表明する。

 そして、民間貯蓄が財政赤字の穴埋めに振り向けられているとすれば、金融緩和が潜在成長率を引き下げることになりかねないと見る。また、政治的圧力をかければ、日銀が金融緩和に動くという教訓を政治に与えたおそれがあるという。

 翁氏は「金融政策だけで日本のデフレが解消するわけではない」のに、効果が顕著だった今回の経験が「デフレが続く限り、金融緩和強化への期待をあおり続けるだろう。そこに日銀のジレンマがある」と述べる。そして「(消費者物価の前年比上昇率1%という)ゴール到達が見えるまでは‥‥国債購入拡大期待は続くだろう」と言う。

 だが、デフレ脱却が展望できたら、「国債購入を平時モードに戻す必要がある」。しかし、その時点で財政再建の道筋ができておらず、日銀の国債購入拡大が国債市場の安定化に不可欠となってしまっていたらどうなるか。「金融システム安定と物価安定に深刻な矛盾が生じる」。つまり、読者としての解釈だと、とめどないインフレの到来である。

 聞くところによると、日銀の上層部は、政治的な圧力で、日銀が今以上に実質的に国債を大量に買い受ける事態に追い込まれる事態を想定してはいない。だが、財政悪化が深刻化する一方で、政治がまともに機能する状態は近い将来にはほとんど期待できない。いまの株価上昇、円高是正が定着すれば幸いだが、そうでない事態に直面し、日銀が使命とする物価安定が保てない危機が来る可能性は十分ある。

 

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