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2012年3月19日 (月)

春闘のヤマ場を過ぎて

 20年近く前のこと、米国の労働組合幹部の話を聞いたことがある。同国の労働者の3分の1は睡眠薬を常用している、と。レイオフが簡単に行なわれる同国では、明日にでもクビになるのではないかという不安が労働者に強いからだという。米国は転職しやすい。それでも、突然、クビになるのは精神的に大きなショックなのだろう。その点、長期雇用の日本はいい、と当時思った。

 だが、その頃と比べ、日本も大きく変わった。デフレが長く、いつの間にやら、非正規労働者が働く者のおよそ3分の1を占めるようになった。労働組合のメンバーも1千万人を割ってきた。公務員は別として、長期雇用のもとで安心して働ける民間労働者は減る一方である。自ら望んで派遣やパートで働く人々もいるが、非正規雇用よりも、正社員になり、ずっと続けて働けるのを求める人たちは多い。転職の市場は以前に比べ広がったとはいえ、まだまだ転職は不利とみられている。

 それなのに、最近の調査では、大学を卒業し、就職してから3年以内にやめる人が約3分の1もいるという。大人たちは「石の上にも3年」というように、少なくとも3年は我慢しなさいと諭す。私も、大学に勤めていたとき、就職活動をする学生に対し、同様なことを言っていた。我慢できなくてすぐ辞める人だ、と思われたら、転職は難しいよ、と学生や卒業生に言ったことを覚えている。

 しかし、若者が厳しい就職活動を経て、大学を卒業して会社に入ったにもかかわらず、じきに辞めてしまうのはなぜだろうか。家庭でも社会でも甘やかされ、忍耐力などが足りないという見方もある。また、高い労働密度、長時間の残業、厳しいノルマなどに追われ、プライベートな時間がほとんど持てないという非人間的な暮らしに嫌気がさしたのかもしれない。先輩の指導で少しずつ力を付けていくという育成の過程なしに、一人で仕事をこなさねばならないしんどさに疲れたということもありうる。

 いずれにしても、次代を担う若者が意欲的に職場で働くことによって富を生み出し、自身の労働能力をも高めていくというステップが壊れつつあるのは、日本経済にとって憂慮すべきことである。日本型経営の限界が現われたとも言える。

 ことしの春闘はヤマ場を過ぎた。残念ながら、連合をはじめとする労働運動は、定昇を守るとか、受け身の運動が中心で、新たに職場に加わってくる若者たちがやる気を起こすような職場づくりには無関心である。日本の将来、会社の将来を考えれば、若者が意欲的に働く、活気ある職場にすることが労働運動の目的の1つであろうに。

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