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2012年4月28日 (土)

日銀の新たな緩和政策

 日本銀行が27日、さらなる金融緩和に乗り出すことを決めた。デフレ脱却を金融面から支援する政策として、市場に潤沢な資金を提供するために設けた資産買い入れ等基金の枠を5兆円増やし、70兆円にした。2010年に創設した基金は当初35兆円の枠だった。それがたったの1年半で2倍になった。

 長期国債の買い入れ限度は当初1.5兆円だった。それがこれまでに19兆円(今年末)まで膨らんでいたが、今回、今年末24兆円に変更、さらに来年6月末29兆円へと大幅に枠を広げた。税収に匹敵する規模の国債大量発行が続いており、国債市場の値崩れ・金利上昇のおそれが出てきたため、実質的な日銀引き受けを拡大したという解釈もできよう。

 日銀のバランスシートを見ると、資産の部は2012年3月末に139.6兆円。2010年3月末より17.8兆円増えている。その内訳は国債が87.2兆円で14.2兆円増、貸出金は39.0兆円で3.2兆円増などとなっている。27日に決めた金融政策によって、資金をより多く供給し、長期国債の保有をいっそう拡大することになる。

 また、発行銀行券は12年3月末現在、80.8兆円。2年前より3.5兆円多い。一方、日銀の保有する長期国債は2011年9月末現在で62.0兆円。10年3月末に比べて1.8兆円増えている。いまのところ、中央銀行の財務の健全性に問題はないが、これからも政府の圧力に押されて次々に国債の買い入れ枠を増やしていくのは危うい。

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2012年4月26日 (木)

小沢さんは灰色?

 資金管理団体の土地取引について政治資金規正法に違反(虚偽記入)したとして強制起訴されていた小沢一郎元民主党代表は無罪との判決を受けた。疑わしきは罰せず、有罪と決めつけるだけの十分な証拠がそろわなかったということらしい。

 判決は、小沢氏が簿外処理について秘書から報告を受け、了承していたとか、法廷で、収支報告書を一度も見たことがないと供述したが、その供述は信用できない、などと指摘している。「故意、共謀について証明が足りないということで無罪判決とした」という裁判長の発言は、真っ白の無罪ではなく、灰色であるという思いを表明したものとも受け取れる。

 小沢氏は、国会などで追及された4億円の出所について、くるくる説明を変えた。また、会計責任者や秘書などの部下の違法行為について、任せきりにしていたとして自らの責任を回避しようとした。そうした言動は政治資金規正法の精神に反している。政治家としての基本的な責務を果たしていないことは明白だ。

 今回の裁判結果は無罪になったが、今後とも、小沢氏の政治的、あるいは道義的な責任を追及されてしかるべきだし、こうした政治家が大手を振って歩くことのないように、選挙で国民の良識を発揮しなければいけない。無論、民主党の小沢支持議員に対しても、同様に何が道理かをわからせる必要があるだろう。

 ところで、政治家や官僚の不正をただす役割の地検特捜部が、自らの描いた構図をもとに事件をでっちあげるようなことをしていた。戦後、特捜部は、政治家の介入を許さず、メディアも自由に取材できない“聖域”だった。そのことが、特捜部の人たちのおごりを招いた。でっちあげが明らかになっていなければ、小沢氏はあるいは有罪の判決を受けたかもしれない。裁判所は検察の調書をほぼ鵜呑みにする傾向があったからだ。今回の強制起訴裁判はいろいろな面で問題を提起している。

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2012年4月25日 (水)

奥井礼喜氏の話を聞いて

 仕事、組織、労働組合、暮らしなどを切り口に日本社会の問題点を追究している奥井礼喜氏(ライフビジョン)の話を聞いた。なかなか刺激的だった。話の中から、3つぐらいの点を紹介する。ただし、私なりの解釈、受け止め方によるので、誤解していることもあるかもしれない。

 1993年ぐらいから産業界の職場はモラルダウンしたままだ。マネジメントがない、コミュニケーションがない、士気が低い、の3点セットである。統計によると、恒常的な長時間労働、不払い労働、有給休暇をとらない・とれない、パワハラ、が顕著だ。いまや、働かせていただくということになっていて、これは労働組合の大きな課題になっている。1990年代から労使対等はうやむやになっている。

 いま労働運動が元気がないのは、前の時代の人たちの頑張りが足りなかったせいだ。1960年代の労働組合は職場委員がいて労働学校をやっていた。憲法、労働法、就業規則、労働協約を勉強した。70年代になると、福利厚生、賃金のほうの勉強になった。そして80年代には、労働法や賃金などについて勉強することもなく、若い人たちは憲法、労働法などの基礎的な知識を持っていない状態になった。

 かつて、労働法の大家たちは「憲法、労働法には立派なことが書いてあるが、しょせん紙切れ。それを現実に手に入れるのは君たちの双肩にかかっている」と言っていた。制度があればうまくいくなんて考えるのはとんでもない。また、長い間、経済闘争ばかりだったのが一番まずかった。

 いまの憲法ができたとき、基本的人権を喜んだ人はほとんどいなかった。いっきに民主主義の国になるわけがない。日本人はいまだに事大主義、横並び主義、功利主義。なんでも損得勘定だ。そして、状況に合わせて生きようとする。日本では、個人主義はまだまだ。自己中心主義とごっちゃだ。明治時代、日本は欧米から目にみえるハードは真似たが、そのソフト面は学ばなかったからだ。

 いまや賃上げがほとんどないから、賃上げは働く者にとってインセンティブにならない。労働意欲を高めるインセンティブにならないということだから、経営側は賃上げ抑制を喜んでいてはいけない。また、いまの人事部は現場に出ない。労働組合のほうも、職場に行けというといやがる。欧米では、一人ひとりが個性を持った人間であることを前提に人事労務政策を行なうが、日本は上からバッとやるだけ。上意下達が当然という考え方が日本人にはある。 

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2012年4月22日 (日)

「日本でいちばん大切にしたい会社」を読む

 坂本光司著『日本でいちばん大切にしたい会社 3』を読んだ。清月記、徳武産業、日本レーザーなど、人を大切にする中小企業7社を取り上げ、今日の成功に至るまでの苦労、経緯を紹介している。どの企業の話も、涙なしでは読めない。

 本社が仙台市にある葬儀社、清月記の項では、同社の社員が東日本大震災の犠牲者に対して、人間の尊厳を大事にして、遺体の仮埋葬、掘り起こし、葬儀、火葬に献身的に働いた様子が紹介されている。人は、ここまで仕事を通じて社会につくせるのか、と深い感動を覚えた。

 日本レーザー(東京都新宿区)の経営理念は「会社は人を採用するためにあり、雇用が最大のセーフティーネットである」。会社は誰のものか? 社員のものであり、お客さまのものでもある。社員の成長が会社の成長である。近藤宣之社長はそう言う。

 正社員の3分の1が障がい者である、印章製造販売会社、大谷(新潟市)は障がい者に働く喜び・幸せを提供したい、という経営理念で運営されている。

 著者は「はじめに」の中で、人を大切にする経営というときの人は、5人いる、即ち、「社員とその家族」、「社外社員とその家族」、「現在顧客と未来顧客」、「障がい者や高齢者などの社会的弱者」、「出資者・支援者」だという。そして、現実には、多くの経営者が業績、成長、シェア、ランキングといったものを重視する間違った経営をしていると指摘する。「業績や成長は正しい経営を行っているかどうかの結果の現象であり、目的にしてはならない」と言い切っている。

 本書は、取り上げられている会社の経営者が、どのように苦労を重ねて成功するに至ったかを丹念に聞き取っているのだが、その核心は人間尊重である。言うはやすく、行なうは難しであるが、それを貫き通した先に、事業の発展がある。

 今日、大企業や、株式公開企業においても、人間尊重の理念は否定されてはいないが、現実には、競争に勝ち抜くことや成果を挙げることが優先されている。そのため、従業員が健康を害し、精神的に病んだりすることもあるし、人員整理が強行されたりする。仕事優先で家庭生活にしわよせが行くこともある。

 『日本でいちばん大切にしたい会社』は、会社が本来あるべき姿を提示することによって、病んだ我々の企業社会をまともな軌道に乗せようとしている。その意義は大きい。

 

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2012年4月21日 (土)

朝日新聞の記者よ、しっかりしてくれ

 4月21日の朝日新聞夕刊は一面の左上に「公務員減ったら安全は?」という記事を載せている。国家公務員の2013年度新規採用者数が全省庁で09年度比56%減と決まり、警察庁や法務省、国土交通省は一律削減なので、「治安や市民の安全は大丈夫なのか。」という視点で書かれた記事だ。

 刑務所や拘置所は慢性的な人不足。職員採用が減るとどんな問題が出るかを紹介している。また、仕事が増えている海上保安庁の幹部が職員採用減で危機感を募らせていると言う。

 そして識者のコメントとして、新藤宗幸元千葉大学教授の話を載せている。「削減を進める方向性は間違っていない。ただ、5割を超える削減率は極端だ。‥‥(中略)‥‥目に見える数字だけを減らして現場の負担を増やす手法には疑問がある。治安悪化や行政サービスの低下という形で国民にも跳ね返ってくるだろう。」と語っている。

 このほか、「採用減でこんな所に影響も?」と題するグラフが付いていて、例えば、警察庁の場合だと、「51.7%減 非常時の連絡に支障、皇族警備が手薄に」といった悪影響があるという。全体として、読者は、治安や市民の安全は大丈夫ではないという感想を抱くだろう。

 しかし、従来通りの員数を新規採用し続けないと、本当にだめなのか。官庁は、部署によって忙しいところとひまなところがある。忙しいところといえども、必要性が乏しくなった仕事を従来通りおおぜいでやっていることが多い。効率性や生産性を無視した、いわゆるお役所仕事なのである。

 財政が窮迫している今日、行政は民間にできることは民間に任せ、小さな政府にすることが必要不可欠である。そのために、トータルとして過剰な公務員数を減らすことは当然である。小さな政府にふさわしい各部門の適正人員を決め、過剰な人員はある程度時間をかけて減らし、逆に不足する部門には定員を増やして異動も実施する、ということになろう。

 その過程では、現在の公務員を解雇できないので、新規採用を大幅にしぼることが現実的である。そうすれば、役人自ら仕事のやりかたを否応なしに変えるだろうし、部課などの組織やポストも統合し、減らしていくだろう。おそらく、そうしたやりかたによってしか、お役所の効率化はできない。その過程で、多少、問題が起こるが、それを割り切っていかない限り、行政改革・効率化は不可能である。

 民間企業であれば、新規採用者数を半分に減らしたり、ゼロにすることはよくあることだ。その場合、企業で働く人たちは仕事の中身を吟味し、仕事のやりかたを変えたり、相対的に人員にゆとりのあるところから異動させたりして、効率性、生産性を高める努力をする。何年も新卒者がゼロだと、いろいろ歪みが出ることは否めないが、新卒者数を半分に減らすぐらいはごく普通のことだ。

 したがって、公務員の新規採用削減を問題視する記事は、行政改革を真っ向から否定する類いのものである。縦割りの官庁のセクト主義を批判せず、しかもお役所仕事を是認したままで採用減を問題にする記事は、役所の代弁にすぎない。

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2012年4月20日 (金)

首都直下型地震の被害想定

 東京都が首都直下型地震の被害想定の最新版を18日に発表した。積み上げ方式で被害を推計しているが、火災を発生場所で消すことができず、回りに延焼していく事態が起きたら、都の推計をはるかに上回る規模の物的、人的被害になるのではないか。

 今回、発表された被害想定のうち、最も被災規模が大きいケース(M7.3の東京湾北部地震が冬の夕方6時発生、風速は8m/秒)を読むと、首都、東京は都区部の30%が停電し、都区内東部では60%以上が停電する。都市ガスの供給は都区部の大半で停止する。上水道は都区部の45%で供給が止まる。下水道は都区部の管きょの27%が被害を受ける。

 家屋の都区部における全壊は11.2万、半壊は29.5万にのぼる。都区部の出火は754件で、消失棟数は19.5万にのぼる。都区部の死者は9337人、負傷者14万人におよぶ。また、都区部の避難人口は311万人に達し、その内訳をみると、避難生活者が202万人、疎開者が109万人になるという。

 この発表資料に目を通して疑問があるのは、火災の延焼規模である。木造住宅密集地域といわれるところは地震で倒壊する家屋が多いと予想されるが、それとともに、火事が起きたら、火が広がりやすい。普段でも、道路が狭いから消防車が行きにくいところである。そもそも大地震が起きたら、道路は余計混み、消防車は動きがとれないだろう。次々に回りに延焼したら、手のつけようがない。それに、断水する地域が半分ぐらいあるから、水がなくて消防作業自体が不可能な事態もありうる。すぐ近くに川や海があれば別だが。

 東京スカイツリーにのぼって東京を見下ろすまでもない。首都は低層、中層、高層の建物がびっしりと連なっている。したがって、関東大震災や東京大空襲のような火災の拡大版に襲われる可能性がある。その場合、死者は桁違いに多いと思われる。

 江戸時代は天水桶で水をためておき、火消しが延焼を止めるために家屋を壊したりした。それでも、風が強くて、火の勢いを止められなかったことがある。現代の東京は地震と火事の複合にはほとんど備えがないから、国家として本気で早急に対策をとらなければいけない。(といっても、国会を見てもわかるように、いまの政治家や主要政党は全く無能に等しいのだが)

 ここで取り上げたケースは最も火事が起きやすい最悪の条件を想定したものである。したがって、東京直下型地震の到来は自然現象として覚悟せざるをえないが、被災の程度が軽いケースのような条件で地震が起きるのをただただ願うしかない。何と無力なことか。

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2012年4月15日 (日)

辻堂駅前に巨大なショッピングモール

 JR辻堂駅(神奈川県藤沢市)にしばらくぶりに下りたら、北口に「テラスモール湘南」というどでかいショッピングモールができていた。昨年11月11日11時オープンということで、開業してからまだ半年である。辻堂駅というと、昔から、駅前の葬儀屋さんと、関東特殊製鋼の広大な工場・敷地とが記憶に残っていたから、今回、駅前が様変わりしていたのには驚いた。

 鋳鋼ロールなど特殊鋼製品の工場の跡地を更地にしたら、地元の人が「こんなに広かったのか」とびっくりしたほど。25haとかいうが、その再開発の一部として、このショッピングモールができた。少し先には、徳洲会の病院が建設中だった。ぐるりと回ってみて、重化学工業の工場がいかに大きな敷地の中につくられているものであるか、そして重化学工業の土地の生産性が低いことを認識した。

 テラスモール湘南は延べ床面積16.8万㎡もあり、敷地は東京ドームの3.6個分に及ぶそうだ。店舗は281店舗に達し、映画館、スーパー、ファッション、ホビー雑貨、食料品、飲食店など何でもありだ。入って一番感心したのは、通路の幅が広いこと。広々とした空間がある。デパートでも、スーパーでも、普通、通路が狭い。それに比べて解放感がある。

 これだけ各種の店が集まっていると、このモールの中だけで買い物、食事、レジャーなどを楽しむこともできる。湘南地域の商業者の中には、これによって打撃をこうむるところが相当あるのではないか。

 このモールの出現で、モールに通ずる道路が大変に混むようになった。土日などはあちこちで渋滞がちとなる。このような外部不経済はちょっとやそっとでは解消しない。バス通勤などの人たちは大変に困っているのではないか。テラスモール湘南の建設にあたって、民間都市再生事業計画認定制度に基づき、無償貸し付けや減税(都市再生促進税制)といった優遇措置が講じられているが、これは交通渋滞による社会的な損失を考慮していない点で、部分最適にとどまる。

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2012年4月14日 (土)

官優遇を改めない民主党政権

 野田首相から成る民主党政権は会社員の厚生年金と公務員の共済年金とを「一元化」する法案を13日の閣議で決定した。共済年金は厚生年金よりも給付額が多く、かつ保険料が低い。民主党の掲げる税と社会保障の一体改革はこの官優遇を是正するふれこみだったが、法案は官民格差を温存したまま、みかけ上の「一元化」を行なうものである。

 これは、民間企業の統合で、持ち株会社の下に旧来の会社2つがそのまま存続し、人事制度や給与制度の違いなどを残しているようなものだ。これでは、事業の一体化や効率化が行なわれないし、両社の間の格差なども続き、統合の成果はあがらない。

 現在の年金制度だと、公務員のほうが会社員より保険料が安い。労使合計で共済年金は月収の約15.86%、厚生年金は同16.41%である。そして報酬比例の年金給付額は共済年金が月に約12万円、厚生年金が同10万円となっている。共済年金独特の上乗せ給付(職域加算)があるからだ。この官民格差は公務員を優遇するために税金を多く投入していることを意味する。

 法案はみかけ上は2つの年金制度を一つにし、厚生年金という名称にするが、保険料率の統一を2018年に遅らせる。また、それぞれが持っている積立金をすべて一緒にするのでなく、共済年金の積立金45兆円のうち、20兆円は独自に共済年金側に残す。法案では職域加算を廃止し、それに代わる年金制度をつくることになっているが、いずれにせよ、官優遇の何らかの仕組みを残し、その原資に充てる。さらに、共済年金の積立金の運用・管理にあたる事務組織はそのまま残すことになっている。もし、資金の運用に失敗したら、国費で穴埋めすることになりかねない。言ってみれば、見掛けの一本化はするが、官民格差を維持するため、2つの年金制度が実質的に残るわけだ。

 このように、一本化とはいうものの、官優遇を実質的に維持するのが法案の実態だ。将来、共済年金は受給者1人を支える現役が厚生年金よりも少なくなる。そのときには、厚生年金と完全に一体化して、公務員の年金の原資を厚生年金の積立金からいただこうという魂胆も垣間見える。

 かくの通り、民主党政権は徹底した官優遇の立場をとっている。そして、当然のことながら、官優遇に注ぎ込まれる国費(税金)の削減という問題意識は全くうかがえない。財政危機のもと、どうして、こんなに官優遇を推進するのか。社会主義国家、全体主義国家のような国以外では考えにくいほどの官民格差である。それらの国と共通した要素が民主党政権にはあるのだろう。

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2012年4月12日 (木)

中央銀行の役割をめぐって

 12日の朝日新聞朝刊に載った「クルーグマン コラム」は、米FRB(連邦準備制度理事会)に対し、インフレリスクを恐れず失業対策重視の政策をとれ、と要求している。

 中央銀行であるFRBは物価の安定と完全雇用の実現に関与する責務を負っているが、インフレを気にするより、失業率に気を配ることが望ましいという。なぜなら、そのほうが国民の暮らし向きは良くなるし、緩やかなインフレは民間の債務を実質的に軽減し、経済回復を促すからだとクルーグマン氏は述べる。

 FRBが失業対策のためにより積極的な金融政策をとって、3%とか4%のインフレを招いたとしても、それは歓迎すべきことだとまで言い切っている。

 一方、日本では、通貨の番人である日本銀行が2月に、インフレターゲットとも受け取れる金融緩和策に踏み切った。しかし、目途として挙げた1%以内の物価上昇率に対し、米国と同じ2%、ないしそれ以上のターゲットを設けよと唱える学者、エコノミストも少なくない。

 そして、政府も、安住財務大臣が11日の会見で、デフレ脱却のために政府と日銀の協調を強める考えを表明。日銀が今月27日の金融政策決定会合でデフレ脱却策をさらに強化することに期待を示した。

 日銀は政府の意向にかかわらず、独立して金融政策を決定、実施できることになっている。しかし、中央銀行が政府に反して独自の金融政策をとりうる国は日本以外にはない。このため、日銀法の改正論が出始めている。そうした政治の動向は日銀としても無視できない。日本銀行はインフレターゲットを含む金融緩和策の拡大に追い込まれる可能性が大きくなっている。

 ただ、金融政策だけでデフレから脱却できるか疑問だとする意見も多い。日本は財政危機が深刻化しており、金融の舵取りいかんで、国債の暴落(金利が高騰)や大幅な円安などにつながるおそれもある。

 このように、いまは中央銀行の正念場のようである。

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2012年4月 7日 (土)

道路新設の時代ではない

 4半世紀前、米国に取材に行ったとき、デトロイトに寄り、GMの本社を訪れた。そのとき、GMの広報担当者のクルマに乗せてもらい、デトロイトの自動車道路を走った。そして、道路がいたるところデコボコになっているのを知った。クッションがショックをやわらげてくれるので、身体が上下左右に揺れるだけのことだが、自動車王国の道路がお粗末なのを知った。

 これは、すでに、当時、米国は道路や橋などのインフラをきちんと補修するための財政的余裕がなくなっていた証左である。

 いま、日本も、道路、橋梁、上水道、下水道など公共インフラが古くなって、補修や作り替えがあちこちで必要な時期に入った。先頃、NHKが特集でインフラ危機をとりあげていたように、国、地方のいずれも、次々に表面化する傷んだインフラを補修すべきなのに、それが追いつかない。米国の轍を踏むような状況にある。

 しかし、いまもなお、日本の国、地方自治体とも、補修や作り替えに本気で取り組んでいるようにはみえない。上水道の場合、多くの自治体で、配管が古くなっていずれ大がかりな取り換え、ないしそれに類した工事が必要になる。だが、それをやると水道料金を大幅に引き上げなければならず、住民の賛同を得るのは容易ではない。そのため、水漏れが増えても、対症療法ですませている。

 首都高速道路などは高架が多く、しかも24時間、トラックなど重量の大きいクルマがたくさん走るため、傷みが速い。だが、クルマの通行を止めないで傷んだところを早期に修理することは容易でない。経年劣化が進み、きちんと手当しなければ、今後、道路や橋が壊れるような事態が増える可能性は大きい。

 一方で、日本の人口は減少に転じており、国・地方自治体の財政は借金の積み重ねで危機的な状態である。民主党が選挙のマニフェストで掲げた通り、「コンクリートから人へ」をいまこそ実行すべきときである。道路の新設、増設(2車線を4車線になど)は原則としてストップし、いまある道路の補修をきちんと行なうのを優先すべきだろう。

 官僚制度は縦割りなので、道路建設を担う役人であれば、いつでも、国全体の事情を考慮することなく、とにかく道路をつくりたがる。また、人家がまばらな地域の家庭汚水処理には合併浄化槽が経済的だが、公共下水道担当の役人は、そういう地域にも公共事業色の強い下水道を敷設しようとする。

 このように官僚は我が田に水を引く習性を持つから、官僚をしっかり統御するのが政治家のはずだ。それなのに、いまの国土交通大臣は官僚の言うがままに、道路新増設の旗を振ったりしている。野田民主党政権は、財政破綻が起きかねないことをきちんと認識し、カネのかかる新たな道路や鉄道などの建設をストップし、インフラ補修に重点を置くようにすべきである。

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2012年4月 6日 (金)

桜が満開の上野に

 東京の桜が満開となった。上野に午後行ったら、大変な人出だった。桜の下を歩いていて意外だったのは、聞こえる言葉が、日本語とそうでない言語とが半々ぐらいであること。日本人でない人の話す声が大きいのだろうか、あるいは、日本人は会話が少ないか、声が小さいのだろうか。異国の言葉の主は顔を見ると、アジアの人がほとんどだった。白人は少なかった。それはそれとして、皆、美しく咲く桜花に満足げだった。

 同じ上野の一角にある国立科学博物館では、米国の歴史学者、ハイラム・ビンガムがマチュピチュ「発見」を学術雑誌に発表してから100年ということで「インカ帝国展」を開催している。天空の都市、マチュピチュを紹介する3Dの大きなスクリーンを見ていたら、少しめまいがした。それはさておき、インカ帝国の姿をこの展覧会で知ることができた。

 インカ帝国は文字、車輪、鉄器のない独自の世界だった。高地が多いため、インカ道といわれる、帝国をつなぐ山道などが南北4千キロメートルに張り巡らされ、延べ4万キロメートルに達した。このインカ道をチャスキとよばれる“宅急便”が走った。彼らは1日に280キロメートルを運ぶことができたという。

 スペインのフランシスコ・ピサロが1533年、インカ帝国を滅ぼしたのは有名な話だが、この侵略と歩調を合わせて、修道士バルベルデがキリスト教の受容とスペイン王への臣従をインカ帝国の王に求めた。そして、イエズス会は王の斬首までやってのける。また、太陽の神殿を破壊し、もとの土台の上にキリスト教会を建設した。太陽神を意味する金のさまざまな製品は溶かして金の延べ棒にし、本国に送った。そうしたスペインによるインカ帝国滅亡の歴史も展示している。

 その展示の説明には、こうある。「侵略者たちは常に物を奪うだけでなく、人の「心」をも破壊します」と。西欧による侵略、植民地化は今日にいたるも、その地域の文化や経済、社会にまで大きな傷跡を残している。そのスペインも、イスラムの支配を受けた時期がある。

 国立科学博物館を出たら、外は暗く、冷たい風が吹いていた。夜桜見物にはいささか冷える。

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2012年4月 3日 (火)

橋下市長が提起した敬老パス見直しの意義

 大阪市の橋下市長が、70歳以上の市民全員に支給している敬老優待乗車証(敬老パス)の財政負担が増える一方なので、半額の自己負担、利用限度額の設定などを行ないたい旨発言した。現在は敬老パスを無料で支給しており、いくら利用しても個人負担はゼロ。

 東京、名古屋、横浜市といった政令指定都市は利用者の負担が年間いくらといった自己負担がある。しかし、大阪市は1972年11月に制度を開始して以来、ずっと無料で、2011年度当初予算では約84億円を計上。橋下市長は「いずれ100億円以上になるのは目にみえている」と言う。

 そこで、高齢市民の反対を承知のうえで、制度の見直しをぶちあげたわけである。少子高齢化の段階に入り、長期にわたるデフレもあって、日本経済の活力は低下している。財源がいくらでもある成長の時代が終わった以上、それに即した持続可能な経済社会に転換しなければならない。それには歳出が増える一方の福祉、社会保障の制度も見直しが必要である。

 しかし、「フリーランチはない」にもかかわらず、実際に福祉予算や社会保障関連の歳出の増大に歯止めをかける立派な政治家はまず存在しない。橋下市長が真っ向から、この問題に取り組む方針を明らかにしたのは、勇気があり、すばらしいことである。現下の日本の政治家の中で、最も尊敬に値する。

 国政では、例えば70歳~75歳の高齢者の医療費自己負担は本来2割であるのに、特例を継続して1割負担にとどめている。こうした例が示すように、民主党政権は、社会保障費の増大を当然視して、国家財政の借金をどんどん膨らませている。言い換えれば、現役の人々や将来世代にツケを回している。

 だが、国のやっている仕事は非効率だし、そもそもやる国がやる必要のないことまでやっている。地方自治体も似たりよったりだ。したがって、財政破綻のおそれが出てきた今日、中央政府も、地方政府も、財政建て直しに本気に取り組まねばならない。橋下市長の具体的な問題提起は、国、地方のなすべき改革の方向を指し示していると言えよう。

 ところで、東京都の敬老パスには大きな欠陥がある。都営地下鉄、都営バスの路線の住人などにとっては年間いくらか払うだけで無制限に利用できる。しかし、主としてJRや私鉄、民営バスを利用している都民には全くメリットがない。住んでいるところで差別されている。こうした不平等な措置は廃止し、平等な措置に改めるべきである。

 

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2012年4月 2日 (月)

野田首相は国民にもっと語りかけ、わかってもらえ

 野田総理大臣率いる内閣は消費税率引き上げ法案を3月末に閣議決定した。野田氏がほとんど全精力を注ぎ込んで閣議決定までこぎつけたことは評価したい。しかし、このことに手一杯で、外交、内政の諸問題をおろそかにしてきたつけは大きい。それに、消費税引き上げについても、党内反対勢力の突き上げに譲歩を重ねたため、国会で法案が成立しても、実際に8%への増税、および10%への増税ができるかどうか、楽観しがたい。

 野田首相はスマートさはないが、実直な人柄にみえる。したがって、民主党の支持率が低迷しているにもかかわらず、野田総理大臣の支持率は比較的、高い。それゆえ、野田氏はどんどん国民に直接、自分がやりたい政治・政策について語りかけ、理解・支持を増やすことが望まれよう。

 現在の政治状況は、与党が内部で分裂・抗争を繰り返し、最大野党の自民党も一本にまとまらない。このため、明確な国家意思がほとんど見えない。円高・株安が日銀の政策転換によっていくらか是正されたものの、デフレからの脱出口は見えない。二院制や選挙制度の見直し、国会議員の定数削減、公務員優遇の是正、社会保障支出の効率化、むだな歳出の削減などによる財政破綻阻止、原発事故の後始末、エネルギー政策の改定、TPP、安全保障強化、地方分権など、日本が直面している重要な課題は実にたくさんある。

 それにもかかわらず、自民党時代からの既得権益を守ろうとする勢力が国会内でも外でも強い。それらの抵抗勢力を打破するには、国民が大規模なデモなどで改革を強く求めるか、小泉政権時代のように、総理が直接、国民に積極的に語りかけ、理解と支持を求めるしかないように思われる。

 だが、野田氏の注力する消費税引き上げ法案が成立したとしても、財政再建のめどとなるプライマリーバランスの黒字化を達成することはできない。著名な経済学者たちはプライマリーバランス達成には消費税税率を25%以上に引き上げる必要があると指摘している。今回の法案は10%まで引き上げる内容だが、これは単なる一里塚にすぎないのである。野田内閣はそのあたりを国民に丁寧に説明し、事態の深刻さをわかってもらうべきである。国民に知らせないほうがいいという発想はフクシマでの放射能漏れを住民たちに隠したのと同じだ。

 野田総理は国の指導者の最高の位に到達したのだから、これ以上の栄達を考えず、ひたすら国民の未来のために尽くしてほしい。とことん、国民に情報を公開し、消費税増税だけでなく、ほかの諸課題解決に懸命に取り組んでほしい。とにかく、もっともっと国民に直接語りかけていくべきだ。

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