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2012年5月15日 (火)

東電の社外取締役をどう見る

 6月27日の株主総会で正式にスタートする東京電力の新役員人事が発表になった。ソニーなどにみられる、米国流の、監査役を置かない委員会設置会社となるので、社外取締役が過半数を占める。

 会社法に基づき、委員会設置会社では、取締役は取締役会の一員として業務に関する意思決定に参加する。また、「指名委員会」、「報酬委員会」、および「監査委員会」の委員となって、委員会の意思決定に参加する。ただし、委員会の委員は社外取締役が過半数でなければならない。

 業務の執行については、取締役は何の権限も持たない。取締役会で選任された執行役にゆだねられる。代表執行役も取締役会で選任される。取締役(会)は業務執行の監督を行なう。もっとも取締役が執行役を兼ねることはできるとされる。

 委員会設置会社方式を採用する東電の新経営陣も、下河辺和彦(原子力損害賠償支援機構運営委員長)、樫谷隆夫(公認会計士)、小林喜光(三菱ケミカルホールディングス社長)、数土文夫(NHK経営委員長)ら7人が社外から取締役に入る。うち嶋田隆(原子力損害賠償支援機構理事)だけは執行役を兼ねる常勤の取締役に就任する。言うなれば天下りである。東電の内部起用は4人で、広瀬直己常務が取締役・社長(代表執行役)に就く。

 下河辺氏は取締役就任とともに新会長に就任すると報じられているが、それが取締役会議長を指すのか、もう1人の代表執行役としての意味なのか、がはっきりしない。後者なら、社外取締役の範疇には入らない。社外取締役は非常勤だと解されているからだ。

 社外取締役は、フルタイムの勤務ではないから、ほかで役職を持っていてもおかしくはない。しかし、本業以外に、よその社外取締役などをいくつも兼ねているのはいささか問題がある。第1に、取締役会や重要な会議などの開催日時が重なって物理的にいずれかを欠席せざるをえなくなることがある。第2に、東電なら東電の抱える諸課題に通暁するのは容易なことではない。経営の基本的な知識経験があれば、どこでも通用すると思うのは自信過剰だろう。

 経営者から選ばれた社外取締役候補は皆、経営者として高い評価を得ている。だが、東電が抱えている課題を十分に理解して再建のために寄与するには、いまの主たる役職を退くぐらいの集中が必要ではなかろうか。

 ところで、東電は、国が支援機構を通じて1兆円を出資するため、50%を超える株主になるという。これで東電は実質的に国有化される。下河辺会長は国(政府)の利益を代弁することになる。新経営陣も政府の意思に沿った経営の実現を要請される。となると、産業界から入る社外取締役は民間企業のマネジメントとは異質の問題に直面する可能性がありそうだ。

 現政権が東電の将来について、あるいは国のエネルギー政策について、明確な図面を書いていない状態で、社外取締役に入る人たちの見識を疑いたくなるのは私だけか。

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