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2012年6月28日 (木)

抜本見直しが必要な生活保護制度

 週刊ダイヤモンドの6月30日号は「生活保護 3.7兆円が日本を蝕む」という特集を組んでいる。「働くよりもらい得!?」、「NPO・政治団体・病院‥‥受給者拡大で“潤う”面々」、「ほとんどのチェックが機能せず 不正の摘発は絶望的な状況」、「働いて脱するのはわずか2% 就労支援では就職後のケアが重要」、「(外国に比べーー引用者)高い給付水準と低過ぎる保護率(人口に対する受給者の割合) 世界で主流の広く薄い公的扶助」、「受給者増で財政逼迫が加速 ”悲観”で500万人、8.5兆円」などといった見出しが記事の内容を表している。

 これらの見出しから、現行の生活保護制度の抜本的な見直しが必要であることが読み取れるだろう。編集後記の「From Editors」は「現状の生活保護制度は穴だらけ。(中略)国によるセーフティネットへの不信は、間違いなく社会の活力を削いでいきます。」と述べているが、いまの制度ではそうなるのは必至である。

 横浜市などで不正受給の摘発に取り組み始めているが、国、地方自治体などの関係部門がきちんと連携し、効果的なチェック体制を構築することが求められる。生活保護費のおよそ半分を占める医療扶助費が増加の一途をたどっている背景には、生活保護者を食い物にする病院などが存在するといわれる。それらのいわゆる貧困ビジネスをのさばらしてはいけない。

 また、働くよりも生活保護を受けたほうが金銭的にも有利だという歪んだ制度を変えないといけない。その際、できるだけ多くの企業が脱生活保護に協力して、雇用の場を提供し、働く喜びが感じられるようにお手伝いしてほしい。

 20世紀までは、生活保護を受けるのは恥ずかしいという社会的な風潮があった。いまもそういう意識で受給申請しない人たちが少なくなさそう。しかし、一方で、隣近所との付き合いも乏しい都市住民が増えたりして、彼らは生活保護を受けることにためらいを感じなくなっている。雇用情勢の悪化に、そうした意識変化が加わって、受給者が増えてきている。問題は、フルタイム働くよりも生活保護を受けるほうが金銭的に得になっている点だ。加えて、不正受給が横行するようになったことである。

 生活保護に対する財政負担はすでに消費税の1.4%程度に相当する。生活保護受給者が急増すると、財政負担はさらに重くなる。野田政権は消費税引き上げに懸命だが、生活保護制度の改革にも目を向ける必要がある。生活保護を含む社会保障制度を、無駄のない効率的な仕組みにすることは財政破綻を避けるために絶対に欠かせない。

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2012年6月25日 (月)

政党の体をなしていない民主党

 きょう25日、民主党は代議士会を開催。野田首相が出席し、衆議院の消費税引き上げ法案採決に賛成をを懇願した。だが、小沢元代表らに追随する議員らは反対を表明、あす26日の採決では民主党議員の賛否が分かれそうになっている。閣議で決定しても反対する議員が少なくない。これでは民主党はまともな政党と言えない。そのことを改めて痛切に感じる。

 不思議に思うのだが、小沢元代表、鳩山元首相、菅前首相、こうした人たちはどうして代議士会に出席しないのか。小沢氏や鳩山氏は、反対議員を陰で操っているにもかかわらず、自分は代議士会に出て発言しようともしない。なんとも陰湿きわまりない。民主党の議員は操り人形なのか。

 輿石幹事長は党の分裂を避けることしか頭になさそう。採決で反対投票をした議員を除名するのは当たり前なのに、輿石氏は党の結束を唱えるだけだ。したがって、消費税引き上げ法案に反対しても、除名されないのではないかという甘えた考えを持つ民主党議員が出てくる。

 民主党には綱領がない。この国をどうしたいという政治目標やそれを実現するための方法などを持っていない。しいて言えば、マニフェストがそれに近いかもしれない。しかし、そのマニフェストもとっくに破綻している。政権の座に就いたものの、大幅な歳出カットによる新たな財源捻出が失敗する一方、歳出の大盤振る舞いを行なったため、国の財政危機を急速に深刻なものにしてしまった。

 おりしもユーロ危機が進行中で、日本政府が閣議決定した消費税引き上げが実現しなければ、日本国債の格付けが引き下げられ、財政破綻が現実化する可能性が一気に強まりかねない。

 増税はいやだ。しかし、歳出を増やしたい。そんな魔法のような政治は、どの民主国家においても許されない。世界の先進国で最も財政悪化が進行している日本の実態を、政治家がきちんと理解しないまま、もっぱら自分が次の選挙で当選するにはどうしたらよいかという政治ゲームにいそしんでいるというのは退廃そのものである。

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2012年6月23日 (土)

大飯原発再開へ抗議集会

 福井県にある関西電力大飯原子力発電所の運転再開決定に対して反対の人たちが、22日夜、東京・永田町の首相官邸前に集まった。主催者発表で4万人、警察調べで1万人というから、近来にない大きな抗議集会である。大飯原発の運転再開に賛成の人たちも集まっていたが、大半は反対の人たちである。

 賛否はさておき、国民が国の将来に関わる重要なテーマについて目に見える形で自分たちの意思を表明するのは、わが国の民主政治にとってプラスだ。

 ただし、原発の運転再開に反対するだけではなく、同時に、「各家庭は電力消費を1割減らそう」などといったプラカードを掲げたらよかったと思う。電気のない暮らしや経済活動は考えられないが、家庭も企業なども野放図に電気の消費を増やしてきたことへの反省を具体的に行動として表す必要がある、それも政府から節電目標として与えられるのではなくてだ。さもないと、電力の供給不安がずっと続いてしまうおそれがある。

 同じこの日、政治のほうでは、民主党の小沢一郎元代表が、消費税増税に反対だとして離党する意向を示し、新党結成に向けて動き出した。小沢氏が3.11(原発事故を含む)にほとんど関心を示さないのと裏腹のように、野田首相は漠然とした脱原発の意向を示してはいるものの、いつまでにどういう原発を止めるかなどといった具体的な内容は審議会・委員会の検討にゆだねたままだ。このように、政府も国会の先生がたも原発問題を真剣に考えていないので、大抗議集会が起きたのである。

 ところで、計画停電の対象地域に、北海道電力管内などが入っているのに、東京電力、東北電力の両社が入っておらず、しかも節電目標も設けないですむのにはびっくり。東電だと、福島第一原発も第二原発も停止し、柏崎刈羽原発もすべて止まっているのにだ。3.11の直後には、私は東電管内から関西電力などのある西日本に工場などがシフトするだろうと予測したが、間違っていた。

 東電は「フクシマ」の起きた原因などを自ら調査した報告書を作成したが、責任回避の色彩が濃いものだった。また、実質倒産企業であるにもかかわらず、経営体制や損害賠償などで、民間企業としての東電の主体性を確保しようとして、批判を浴びた。料金引き上げについても、社員の給与引き下げが足りないなどと指摘されたりしている。しかし、マスコミを含め、東電を叩きすぎるのはどうかと思う。経営陣を批判するのは結構だが、一般社員の士気を殺ぐのは好ましくない。電力の安定供給は彼らの努力のたまものでもあるからだ。

 原発事故が起きた以上、廃止した福島第一原発の1~4号機を安全に、かつできるだけ早期に撤去するようにしなければならない。とはいっても、使用済み燃料の処理処分などを含め、何十年もかかる話である。費用も何兆円かかるかわからない。しかし、優れた技術者たちをできるだけたくさん集めて、彼らに意欲的に働いてもらう必要がある。そうであれば、東電が、ぜひ働きたいと思うような職場でなければならない。それには、東電についても、優秀な人材には高給を払う、といった常識が許されていい。坊主憎けりゃ‥‥は感心しない。

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2012年6月17日 (日)

石碑の教訓とてもあてにならない

 東京・西銀座のコリドー街のはずれ、銀座8丁目の街角で、高さ1.5m程度の細長い石碑があるのに気付いた。昭和4年10月に建てられたもので、「鑑大正十二年之惨禍御有志醵金新橋梁干此處以寄贈東京都●●●●安全」と刻まれているようにみえた。

 大正12年(1923年)の惨禍といえば、無論、関東大地震(M7.9)のことだろう。地震、津波と火災の広がりで9万人余りの人が亡くなり、家屋は46万戸が全壊消失した。このため、後世の人たちがこの惨禍を忘れないようにと、寄付金を募って建てたのだと想像される。

 だが、いま、道を通る人々のうち、どれだけの人がこの石碑に気付くだろうか。何という文字が刻まれているのか、立ち止まってよく見ないとわからない状態だ。三陸地方で、津波への警告や教訓を記した石碑がいつの間にやら無視されるようになっていたのと似ている。

 大地震から89年、石碑が建てられてから82年。今日までの間に、この日本に、東京に、起きた出来事や変化はすさまじいものがある。試みに『近代日本総合年表』を数ページ読んでみて、自分や親が生きてきた時代の激動ぶりを痛感した。

 最近、映画「一枚のハガキ」を見たが、私たちは、そんな時代もあったなあと回顧するだけになっていはしないか。時代の変化に受け身的に順応するだけでは、これまでのような豊かさを享受し続けることは難しいだろう。

 ところで、この石碑には寄附者名が刻まれている。二壽生命保険株式会社、日本商業銀行、大阪ビルヂング、東洋拓殖株式会社、東京電燈、立憲政友会、帝国火災保険株式会社、十五銀行新橋支店、増島大一郎、大平生命保険株式会社、第一銀行日比谷支店、住友銀行内幸町出張所、●●第百銀行日比谷支店、新聞聯合社である。社名が変わっただけの企業もあるが、消滅した組織も多い。東京電燈は東京電力の前身とも言うべき会社である。

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2012年6月15日 (金)

日本に学んだ中国の途上国援助

 日本の途上国援助は援助、投資、貿易の相乗効果で当該国の経済発展に貢献してきたが、「新しい援助大国」である中国の対外援助の源流はこの日本のアジア型援助モデルにある。最近、法政大学名誉教授の下村恭民氏から、そんな話を聞いた。

 今世紀に入り、中国は途上国に対し、経済援助だけでなく、直接投資や貿易を通じた経済協力を急速に増やしている。いまの勢いだと、今後5年程度で日本に追いつき、世界第2位の援助大国になる可能性があるという。

 中国の途上国援助はアフリカ向けが多い。また、資源の乱開発や環境破壊を引き起こしたり、非民主的な独裁政権を支えたりするものもある。だが、援助の重点は水力発電所などの経済インフラと生産部門(製造業、資源開発など)への支援であり、相手国のニーズに対応しているという。加えて、中国の内政不干渉原則は途上国側に歓迎されているそうだ。

 中国の対外援助は相手国の自立をめざし、互恵関係を通じて自力更生を支援するという考え方に基づく。実は、そうした考え方に重要な示唆を与えたのは日本が行なった対中援助やASEAN援助だという。中国の研究者は、円借款など日本の対中援助・投資・貿易の三位一体が中国の経済開発や生活環境の改善に大きな役割を果たしたと評価しているそうだ。とともに、日本の援助は受け入れ国と供与国(日本)の双方にメリットがあるウインウインだとも指摘しているという。

 下村氏によると、日本の援助アプローチの有効性に関しては、国際社会は無論のこと日本国内においてさえ十分に理解されていないが、アジアにおけるインフラ建設を中心とする日本の援助効果が見直されているそうだ。日本の援助経験を過去の遺産とせず、アジア型援助モデルとして生かしていくべきだと氏は語っていた。

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2012年6月13日 (水)

貧困からの解放めざす大阪維新の会

 橋下徹大阪市長の動向は国・地方政治の台風の眼になりつつある。同氏が打ち上げた大阪都構想はどのようなものか、地域政党「大阪維新の会」の政調会長である浅田均氏(大阪府議会議員)が12日、東京都千代田区の日本記者クラブで記者会見し、大阪府と大阪市の統合・再編について説明した。

 最初に、大阪維新の会の設立目的を説明。貧困からの解放をめざしていると述べた。大阪市の世帯当たりの平均年収は名古屋市や横浜市と比べてかなり低く、失業率も高い、そして生活保護を受けている人が多い。そうした現実から脱却するために新たな地域経営モデルとして大阪都構想を打ち出したという。

 この大阪都構想は府と市との対立や二重行政的なむだをなくし、住民の所得引き上げと雇用拡大をめざしている。また、関西州の首都としての機能、教育改革などを強化しようとしている。それに、府庁と市庁の役人たちが自らの給与引き上げなどを優先し、住民へのサービス向上などは後回しだった実情を踏まえ、公務員制度改革などにも取り組もうとしている。刺激的なチャレンジである。

 過去約20年間、経済停滞が続いている日本を先進諸国並みの経済成長の国にするためには、国・地方の統治システムを思い切って改革する必要がある。その口火を切る可能性を持つのが大阪維新の会ではないかと思う。

 橋下市長の一挙手一投足がメディアの脚光を浴びている。そして過去にもあったが、これからもメディアが集中的に橋下氏を叩くこともあるかもしれない。だが、大阪都構想が大阪の現実に深く根ざした問題提起である以上、それへの支持層は広い。大阪維新の会自体にいろいろ問題があるかもしれないが、閉塞感に包まれた今日の日本社会を変革しうるほとんど唯一の活動のようにも感じる。

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2012年6月12日 (火)

財政再建先送りができないと皆が思った瞬間、破綻する

 大竹文雄大阪大学教授が月刊雑誌『中央公論』7月号の対談で、財政再建はいつまで先送りできるものかと聞かれて、「誰もが少しでも先送りできるなら先送りしたいということで来ている。みんなが先送りできないと思った瞬間に破綻することになる」と、禅問答のような話をしている。

 この対談の前のほうで、「私を含めて日本の経済学者の多くは悲観的です。財政再建を実現するためには消費税率を20~30%ぐらいにまで上げなければならないのに、現在の5%を10%に引き上げるだけでも難しいのですから、そこまで上げられるかというと、非常に疑問です」と語っている。大竹氏は、財政破綻は避けられないと想定しているようである。

 財政再建を図るには、大幅な歳出削減、成長政策、消費税や相続税などの増税が必要である。そのうち、最初に挙げた大幅な歳出削減には全く手がついていない。民主党のマニフェストは国民をだましたに等しい。一般会計予算で圧倒的なウエートを占める社会保障関係の歳出を効率化しなければいけないが、国会議員には、そのような問題意識はない。地方交付税交付金も地方分権の推進と相まってむだの排除が欠かせない。

 二番目の成長政策も大事だが、そのうち、規制の撤廃・緩和は既得権益層の抵抗が強いため、なかなか進まない。日銀がもっと金融緩和をすればデフレから脱却できるという意見の経済学者、エコノミストもいるが、すでに日銀は国債買い入れや基金を通じて有価証券を相当に購入しているので、これ以上何をするのかという指摘もある。

 三番目の増税は、消費税増税論議の陰で、相続税の課税強化がすんなりと決まった。資産課税で世代間格差を縮めるのは結構な話だ(租税法定主義だから、国会での審議が尽くされたのかは疑問がある)。国会ではもっぱら消費税引き上げ法案の取り扱いで大騒ぎになっているが、いまの8%、10%への2段階引き上げが実現しても、社会保障に増収分の全てを充てる方針なので、国の債務は膨らみ続ける。

 そうした日本財政の深刻な実態を国民に訴え、現在の消費税引き上げ法案は財政再建に向けての初めの一歩にすぎないことを国民に広く知ってもらわなければいけない。メディアは民主党内の対立など愚にもつかないことを追いかけることに一生懸命で、危機の実相を国民に知らせ、どうしたらよいかを国民に考えさせる役割を果たしていない。大竹教授ら財政再建を危ぶむ経済学者は学者の責務として、政治に対して結束して警告を発すべきである。彼らが評論家であっては困る。

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2012年6月 9日 (土)

オリンパスは和解金を菊川氏らに請求すべきでは

 オリンパスは8日、前3月期決算と2017年3月期までの中期経営計画とを発表した。その際、笹宏行社長は、不当な解任に対する損害賠償を求めて提訴していたマイケル・ウッドフォード元社長との間で和解に達し、1000万ポンドを支払うと発表した。しかし、この和解金はウッドフォード氏解任を主導した菊川氏ら当時の経営幹部が負担してしかるべきものである。オリンパスは菊川氏らに1000万ポンドの損害賠償請求をすべきではないか。

 菊川剛氏のあとを継いで社長になったウッドフォード氏は、会長になっていた菊川氏らに損失隠し問題の解明を求めたため、当時の取締役会で一方的に解任された。その後、損失隠しが公けになり、刑事事件に発展したため、オリンパスは経営陣の刷新をよぎなくされた。しかし、オリンパスの幹部および主取引銀行など大株主の意向で、ウッドフォード氏の復帰は認められなかった。

 そのため、ウッドフォード氏は損害賠償を求める裁判を起こした。和解に至る事情は明らかにされていないが、オリンパス側が12億円余に達する和解金を支払うことにしたのは、明らかに解任が不当だったことを示す。

 しかし、笹社長は和解について発表したものの、和解金を会社としてのオリンパスが負担することを当たり前のように思っているようだ。それはとんでもない誤りである。株主の資産をそれだけ失うのだから、間違った決定をくだした当時の取締役陣に支払うよう要求するのが常識だろう。でたらめな経営をして会社に損害を与えた取締役たちにきちんと賠償させるのが経営規律というものだ。

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2012年6月 6日 (水)

高齢者の医療保険自己負担率引き上げ

 少子化の流れを食い止めるためには何をすべきか。6月6日の日本経済新聞夕刊は、ローソンの新浪剛史社長へのインタビュー記事を載せている。その中で「医療保険の高齢者負担率を上げるなどし、社会保障の財政支出を子育て支援にもっと割けばいい」と主張している。

 高齢化の進行で国全体の医療費や介護費用は年々増大している。一般論として社会保障の充実そのものは望ましいが、経済の低迷および少子化傾向のもとで、どうやって、どれだけの財源を確保できるのか。それと裏腹の関係で、限られた財源をどこにどう配分するか。そうした問題を国民がまじめに考え、自らの意見を国政に反映させていく必要がある。

 そういう意味で、新浪社長の問題提起は傾聴に値する。「極論すれば、(財政)コストは高齢者にかけるより子どもにかけるほうが将来のリターンは大きい」とまで言い切っている。

 いまの社会保障政策は日本の高度経済成長時に本格化に始まった。そして、1990年代以降の経済低迷で経済基盤がすっかり変わったにもかかわらず、惰性で歳出規模を膨らませてきた。その結果がGDPの2倍にも達する国の債務(借金)である。このままでは遠くない将来に財政破綻に追い込まれるだろう。

 したがって、社会保障政策と財政政策とを抜本的に見直す必要がある。その中で、高齢者は貧しいなどといった固定観念をぬぐい去り、社会保障政策の内容をゼロベースで再点検しなければいけない。年寄りが病気になりやすいのは事実だが、過剰診療に歯止めをかけるには、高齢者医療の自己負担率1割を、せめて2割に引き上げるぐらいのことはしたらいい。

 新浪社長は、インタビューの中で、子どもを社会全体で育てるようにすべきだとし、「(企業などにとって)長期的に見れば女性を雇わないのは経営的にマイナス」、「女性を雇うことをコストと考えてはいけない」とも述べている。いまだに男性中心の発想が強く残っている日本社会はその言に耳を傾けてほしいと思う。

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2012年6月 2日 (土)

野村ホールディングスの株主提案

 野村証券のあるOBは現役時代に財形貯蓄かなんかで3銘柄を対象に株式投資をしていたそうだ。その頃はいずれも優良株だった東京電力、オリンパス光学(オリンパス)、そして自分が働いていた野村証券(野村ホールディングス)の3銘柄である。いま、3銘柄とも株価は大幅に下がって大損をした状態が続いている。

 その野村ホールディングスが6月27日に株主総会を開く。日本経済新聞や朝日新聞の報道によると、ことし3月期、渡部賢一取締役代表執行役グループCEOら執行役6人の報酬総額は9億6500万円だと招集通知の中で開示した。「過去の業績に対し支払われる繰り延べ報酬(計5億8700万円)が加わったことなど」(日経)によるもので、1人あたりの平均報酬は1億6083万円で、昨年3月期より79%増えたそうだ。

 この株主総会招集通知の内容でおもしろいのが株主提案(第2号議案から第19号議案まで18本もある)だ。1人の株主が100件もの提案をしたのに対し、会社側が総会に付議する要件を備えたもののみを議案として並べたものである。

 いくつか紹介すると、社名が長すぎるので意識改革のため「野菜ホールディングス」に変更せよ(第2号議案)、役員報酬の総額に「期末株価×勤務時間×対象人数」の上限を設けよ(第4号議案)、収益対人件費率(人件費÷収益のことか? 引用者)を2割以下にし、株主総会における万歳三唱を取りやめる旨定款に明記せよ(第5号議案)など、破天荒だったり、首をかしげたりする内容の注文が多い。

 しかし、それらの底流にある株主の不満には、もっともなものもある。お手盛りの高報酬がずさんな経営の原因である(第4号議案の理由)、年2回の大型公募増資によって1株価値の希薄化を招きながらも取締役は誰1人明確な責任をとっていない(第6号議案の理由)、今後、増資はライツ・イッシュー(株主割り当て)のみとし、株主総会で決議して行なう旨を定款に明記せよ(第9号議案)などを読むと、株主提案の背後に、多くの個人株主の不満を感じる。

 会社の取締役会はすべての株主提案に反対している。しかし、反対と言うだけで、その根拠が書かれていない項目が多いのには疑問を抱く。株価の長期低落で、個人株主のやり場のない怒りや不満がこの株主提案にぶちまけられているような感じがするが、それに対して、資本市場の重要な担い手である野村ホールディングスの経営陣が木で鼻をくくるような対応をしているだけでいいのだろうか。

 世界的な金融危機に直面して、内外の金融、証券会社は厳しい局面に立たされている。野村ホールディングスもしかり。だが、グローバル化に真っ向からチャレンジするには、いまの野村の経営陣はこじんまりとしていすぎる。もっと多彩な人材を擁し、企業活力を高める経営に転じる必要がある。野村に限らず、日本の主要企業は株主提案の背後にある多くの株主たちの思いをしっかりと受け止めてほしい。

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中国では労働者の経営参加の制度ができた

 中国では、中国共産党の傘下にある全国総工会およびその支部組織が労働組合的なものとして存在する。しかし、近年、企業において、従業員の代表としての取締役や監査役を選出し、経営方針などの決定に際して労働者の意見を反映させるという新たな制度が法制化されているという。経営参加という点で、中国は日本の労働組合よりも制度上、先に進んだと言えなくもない。

 経営民主ネットワークがこのほど開催したセミナーで、麗澤大学の梶田幸雄教授がこの新しい動きを解説した。

 同教授が、「労働者の経営参与制度」として紹介したのは、企業が経営戦略・方針・方法の決定に際して、労働者の代表である従業員取締役および従業員監査役に議決権を与える仕組み。

 中国では、会社法により、株式を発行する会社の取締役会の構成員に従業員代表を入れなければならない。この代表は従業員代表大会その他で民主的に選出する。一方、有限責任会社では、2社以上の国有企業またはその他の国有投資主体が投資して設立した有限会社の場合、取締役会に会社の従業員代表を入れなければならない。その他の有限責任会社では、従業員代表を取締役会に入れることができる。いずれも、従業員代表は民主的選挙で選ぶ。

 また、会社法には、従業員監査役についても規定がある。株式会社は監査役会を設け、監査役は3名以上でなければならない。また、有限責任会社も監査役会(3名以上)を必ず設けなければならない。ただし、株主数が比較的少ないか、企業規模が比較的小さい有限責任会社は1~2名の監査役を置けば、監査役会を設置しなくてもよい。そして、いずれも、従業員代表の監査役の比率は3分の1を下回ってはならない。

 従業員取締役、従業員監査役の仕組みは中国の会社法制がドイツの法制を基本にしてつくられていることを反映している。国有企業では、2009年3月30日に発布された法律で従業員取締役の特別職責について詳しく取り決めている。従業員代表の取締役への評価や、従業員大会に報告したり、従業員の要求や意見をとりいれるフィードバックなどについても法律に細かく定められている。

 現実には、会社法、民営企業法、外資企業法など所有形態別に法律があり、また、法律通りにガバナンスがきちんと行なわれている企業は少ない。だが、梶田教授のレクチャーを聞いていると、中国共産党の基盤が弱くなって、労働組合に権限が移ることにより、従業員取締役、従業員監査役が次第に定着してゆく可能性があると思うようになった。

 同教授は「日本でも従業員監査役制度を採用していいのでは」と語っていたが、日本が準備している会社法改正案には、そうした踏み込んだ論点は残念ながら全くない。日本の労働組合も同様だ。中国の全国総工会が従業員取締役、従業員監査役の導入に積極的であるのと比べると、日本の労働運動は問題意識がなさすぎるのかも。

 

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