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2012年7月29日 (日)

山口県知事にまたも中央官僚OB

 29日に行なわれた山口県知事選は元国土交通省審議官の山本繁太郎氏が当選した。脱原発を唱えてきた飯田哲成氏(NPO 環境エネルギー政策研究所長)ら他の候補をやぶっての知事就任である。

 今回の知事選は二井関成知事が4期を務め、引退するのに伴うもの。二井氏は元自治省官僚という経歴であり、今回、当選した山本氏もまた中央官僚出身である。ちなみに、二井氏の前の平井龍知事も自治省OBであった。

 山口県は保守王国といわれてきた。今回、飯田氏らの追い上げがあったものの、結果が示すように中央官庁OBを知事にいただく“伝統”は変わらなかった。県民は、県政に対し、国からできるだけカネを引っ張ってきて地域の経済や暮らしを豊かにするという行政の継続を求めたと解釈できよう。

 都道府県の知事、あるいは政令指定都市の市長には、総務省(旧自治省など)、国土交通省、経済産業省、財務省などの出身者がたくさん就いている。全国的に何年も前から地方分権とか地域主権などが叫ばれるようになったが、住民たちはそれらの言葉が現実離れした中身のないものだと内心思っているのではないか。

 彼らは、国からいかに多くのカネをとってくるかが地域自治体および首長の役割だと本音では思っているのだろう。それが霞が関キャリア官僚OBの当選の背景である。

 大阪市の橋下知事の言動だけは脚光を浴びているが、全国的に地方分権とか地域主権といった言葉はここ1、2年、相当に色あせたようにみえる。民主党政権のもと、3.11の復興予算もあって、地方交付税交付金等、国から都道府県などに流れるカネの総額は増えている。国の財政の急速な悪化とは対照的に、地方自治体の財政は潤沢なのである。それが地方分権、地域主権を求める声が聞こえなくなった理由だと思われる。

 飯田氏は原発計画の白紙撤回や岩国基地の問題を争点にしたようだが、中央集権の政治体制に寄り添う形の県政をこれからも求める県民の本音に太刀打ちできなかった。そこから、どのような教訓を読み取ることができるだろうか。

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2012年7月21日 (土)

日本の労働運動の源流を「友愛労働歴史館」に見る

 わが国の労働運動の源流とされる「友愛会」が創立されたのは1912年(大正元年)8月1日。その100周年を記念した「友愛労働歴史館」が東京・港区に誕生する。オープンを前に展示を見せてもらった。

 1960年代の末ごろ、日本電気(いまのNEC)の本社にちょくちょく取材に行った。歴史館はその近くにある。確か、そのあたりにあった池貝鉄工の本社にも取材で行ったことを思い出す。芝のあたりは工場が点在していた。その一角で、日本の労働運動の源流とされる「友愛会」がスタートしたことを最近になって知った。

 鈴木文治がみじめな状態の労働者の地位向上をめざしてわずか15名の同志と友愛会を創設したのは、明治天皇が崩御してすぐのこと。場所は、ユニテリアン教会の惟心館だったという。治安警察法があり、労働者の団結は認められなかった時代である。だが、いつか労働組合に発展することを願い、修養、共済あるいは争議調停のようなところから始めていった。

 友愛会の流れを継ぐ総同盟は、日本の軍国主義化で1940年には息の根を止められたが、創設や初期の運営に、渋沢栄一、新渡戸稲造、吉野作造らが関わっていたとは知らなかった。

 また、米国のユニテリアン教会から派遣されたクレイ・マッコーレイ牧師が友愛会の設立を支援していたというのも興味深い。この教会は我々の知っているキリスト教とはかなり異なっているようで、惟心館には釈迦、孔子、ソクラテスの像があったという。ユニテリアンのミッションは人間の尊厳、進歩と発達であり、信者を増やすための布教活動をしない。侵略的な宗教とは異なるので、福沢諭吉や渋沢が日本に招聘したようだ。

 クリスチャンの鈴木文治は朝日新聞記者を辞めたあと、ユニテリアン教会関連の仕事に就いていた。その関係で、労働者の相談相手などをしながら、労働運動の必要性を見据え、惟心館を拠点に友愛会の活動を始めた。当時は、いまのような労働組合はなく、労働者個々人が友愛会の会員になるという漸進的な活動だった。それでも官憲ににらまれる危険性があった。企業と労働者との関係はまったく現代とは違っていた。

 そんな時代に、友愛会が創立時の綱領で、労働組合の相互扶助・共済活動の重要性および労働者一人ひとりの人間性向上・スキルアップを謳ったのはすごいことである。いまの時代にも通じるメッセージと言えるかもしれない。

 友愛労働歴史館は、友愛会の流れをくむ同盟(1987年解散し、連合に)までの歴史的資料に詳しい。この歴史館をざっと見たうえでの感想だが、過去100年の労働運動のすぐれた通史が読みたい。それも広い視野に立ってのものを。先人の血のにじむ苦闘から、いまの労働運動が学ぶものが非常に多いように思えるからだ。

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2012年7月18日 (水)

石井菜穂子GEF(地球環境ファシリティ)次期CEOの会見から

 8月1日に国際機関のGEF(地球環境ファシリティ)CEO兼評議会議長に就任する石井菜穂子財務省副財務官が7月17日、東京で記者会見した。GEFは途上国や新興国における生物多様性、気候変動などの環境改善プロジェクトに公的資金を供与する機関。石井氏は開発、環境、財務(金融)の三位一体で持続可能性(サステナビリティ)に取り組むとの抱負を語った。

 石井氏の話で興味深かったのは、6月にブラジルで開催された「リオ+20」について、「2つのプラネットが存在していた」という点。1つは、大会議場に各国の政府代表が集まって議論していた世界。もう1つは大会議場の外において、世界各地から、さまざまな分野のNGOや企業、自治体、あるいは政治家などがあちこちに集まって議論した世界だという。何万人も参加していたそうだ。

 政府間の交渉は、温室効果ガスの削減問題で、先進国とそれ以外の国との対立が繰り返されてほとんど進展がみられない。だが、2つのプラネットのもう1つのほうは、このままでは企業のサプライチェーンにほころびが出てくるとか、自治体がごみ処理の問題で困っているといった現実を踏まえて、新しいアイデアが続出し、5千億ドルを超えるコミットメントがなされたという。

 石井氏はGEFの業務として、こうした革新的なアイデアなどをサポートしたいとの意向を示した。とともに、日本の非政府組織の人々がもう1つのプラネットに積極的に参加し、関与していくことが望ましいと語った。

 GEFは目立たない国際機関だが、石井氏は組織の活性化を図り、ほかの国際機関などとのパートナーシップなどによって地球環境の持続可能性確保に邁進する覚悟という。国際機関で活躍する日本人女性として稀有な存在である。大いに期待したい、そう思った。

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2012年7月13日 (金)

外国人社員等から見た日本企業の本社

 グローバル化に対応した「あるべき本社の姿」というテーマで、日本企業の本社で働く中国人、米国人、ロシア人等が出席した座談会の記事を「月刊 グローバル経営」7・8月号で読んだ。比較的若い彼らが日本企業の経営をどう見ているか、読むと結構参考になるのでないか。

 「長時間労働をするよりも、結果を出すことを重視すべきだ」

 「終身雇用は良し悪しだ。終身雇用社員にとっては安定感は増すかもしれないが、危機感・切迫感が希薄になる分、全体的に生産性・効率性の減退を招く部分もあり、改善の余地は大きい。社員各自の職務分掌や人事上の評価基準の明確化も必要」

 「どちらが良いとは言い切れないが、特に大きな結果を出した個人を高く評価し、その結果に見合った報酬を与えることができなければ、グローバルに活躍する人材の確保が難しくなる」

 「日本の場合は本人の実力以上に人間関係が重視されるように感じている。また、意思決定の際には周囲との軋轢を避け、自分で結論を出していても、上司の意見との違いを慮ることで決定に時間を要し、問題が先送りされるなどの可能性もある。これは競争力や組織としての成長を阻害する要因になるかもしれない」

 「日本では、職場が家族や親戚の関係に近くなっており、対立を避け曖昧さに寛容になっている」

 「日本型決断方式は、組織にとって偏った決断になってしまう可能性は低く、リスクが軽減される。しかし、合意形成までに時間がかかるため、変化がめまぐるしくスピードが要求される現在のグローバルなビジネス環境においては競争に勝ちにくい」

 「上司が部下の仕事内容を十分把握することは必要だが、一方で、部下に権限を委譲し、現場で迅速な判断ができるようにすることも大事だ」

 「企業としても、同質人材の集団から異質人材の集団への変化が求められている」

 「日本独特の「あ・うんの呼吸」は、日本を知らない外国人にはほとんど通用しない。「あ・うんは無い」という前提で進めれば、海外でももっとうまくいくと思う」

 「経営方針などの重要な経営情報を海外に向けても積極的に発信し、現地社員とシェアすることも大事」

 「本社に外国人社員を増やすことで、日本本社の事情や経営の考え方を理解した外国人社員が増える。そうした外国人社員と彼ら自身の出身国にある支社・法人の現地社員との接点を増やし、本社の考え方や経営方針などの情報を彼ら自身の声で伝えることで情報の信頼性が高まり、現地の士気も高まると思う」

 日本企業のグローバル化で、以上の指摘をすでにクリアしている企業もあれば、そこまで行っていない企業もあるだろう。また、指摘された内容によっては、日本型企業経営の長所だとみなし、改める必要がないという見解もあると思う。これらを含めて、今後の日本経済を考えるうえで参考になる。

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2012年7月10日 (火)

国の「債務管理リポート2012」に表われた危機

 平成23年度末の国の債務は、国債、借入金および政府保証債務現在高合計で1004兆円と大台に乗せた。財務省が発表した「債務管理リポート2012」は、日本の国家財政が一段と深刻化したことを示している。国民1人当たり800万円近い借金をしている勘定になる。

 国の資産・負債の差額も417兆円のマイナスになっている。前年に比べ45兆円もマイナスが増えている。

 債務残高の対GDP比を国際比較すると、日本は断トツの219%で、先進国で次にひどいのはイタリアの128%である。純債務残高の対GDP比でも、日本は135%と、2位のイタリアの101%を大きく上回る。

 普通国債残高の加重平均利率は1.24%と過去、最も低い。平均利子率が低いので、国債費負担が相対的に軽い。それゆえ安易に国債発行を増やしてきたとも言える。

 日本国債の保有者の内訳(平成23年末)を見ると、家計はわずか3.8%しか直接に保有していないが、市中金融機関は67.6%と全体の3分の2を保有している。そのうち、銀行等(ゆうちょ銀行を含む)が36.3%、生損保等(かんぽ生命を含む)が22.4%などとなっている。

 また、日本銀行が9.0%保有しているほか、公的年金が9.2%、年金基金が3.8%持っている。一方、海外投資家による保有は6.7%にすぎない。

 国債の相場が大幅に下落すると、金融機関や年金が大きな損失を抱えることになる。その結果、金融機関が相次いで破綻するおそれがある。取り付けをおそれて、国が直接、救済資金を投入しようとしても、国債相場が崩落していてはどうにもできまい。代わりに、日銀が救済融資に乗り出すことになるだろう。その先はインフレである。年金制度もインフレでがたがたになる。日本経済の混乱と衰退は避けられない。

 民主党政権になってからの国債残高の増え方は著しい。ここらで社会保障制度をはじめとする財政支出の見直しによる効率化と削減に真剣に取り組むことが重要な課題である。増税しても、それが放漫財政に流れていっては財政再建につながらない。

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2012年7月 6日 (金)

官僚は個人としてはいい人が多いが‥

 中央官庁の官僚は個人的に付き合うと、いい人が多い。能力もすぐれている。ところが、組織として動くときの官僚は全く別人格となる。長い間、そう思ってきた。退職した高級官僚からも、「現役はおかしい」という批判をちょくちょく聞く。

 『自衛する老後――介護崩壊を防げるか』(河内孝著)を読んだら、あとがきの部分でこんなことが書かれてある。「介護保険のコンセプト自体は、極めてシンプルだ。ところが、これが7兆円だ8兆円だという、途方もないお金を呑み込む恐竜に化けると、善意と連帯は、利権と権限、思惑の濁流に押し流されてしまう。この複雑怪奇な体系に‥‥」、「いつも思うのだが、個人としての官僚は、ほとんど高潔で見識もある。公平に見て、民間人より正義感も強い。その同じ人が組織の仮面をかぶると、なぜ、あそこまで変身してしまうのか?」

 官僚は自分たちの権益に関わる話になると、絶対に譲ろうとしない。今日のように財政危機が深刻化し、消費税増税が政治の争点になっているようなときでも、自らの権益を死守する。そうした事例がまた現われた。国家公務員の共済年金の「職域加算」の見直しに関して出された政府の有識者会議の報告書がそれだ。

 民間企業に勤める人たちの厚生年金と公務員の共済年金とを2015年に一元化することになっている。その際、公務員だけが得ている上乗せ給付「職域加算」を廃止するのが筋だが、形を変えて残そうというのが有識者会議の結論だ。廃止される職域加算に見合う新しい上乗せ年金を新設するというのである。

 民間には企業年金があるが、これは退職金の分割払いにすぎないし、企業年金を持たない企業はたくさんある。しかし、霞が関の官僚たちは、あくまで企業年金に見合う金額を公務員すべてが上乗せ受給できるような制度改正を主張し、有識者会議なる得体の知れない組織にお墨付きを出させたわけである。民間の企業年金は社員および企業が拠出したカネである。職域加算も新たな上乗せ年金も、税金の投入を前提としている。カネの出所が根本から違っている。そうした根本的な違いを無視して公務員がうまい汁を吸い続けようとしている。

 いまの民主党政権ほど霞が関にとって御しやすい政権はない、と高級官僚たちはほくそえんでいるという。国民の生活が第一、などと調子のいいことを言って政権を握った民主党(その中には小沢一郎一派もいた)だが、所詮は素人集団で、霞が関を抑えるどころか、いいようにあごで使われている面が多分にある。

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2012年7月 4日 (水)

約70年前に日立が定めた「経理心得」

 日本公認会計士協会が4日に開催した第46回定期総会後の懇親パーティ。安藤英義企業会計審議会会長が乾杯のあいさつの中で昭和18年(1943年)に日立製作所が定めた「経理心得」から2カ条を取り上げて紹介した。最近の企業における不正、犯罪などの多発とガバナンスのゆるみとを踏まえて警告したのだろう。

 1つは「小事トイエドモ公私ノ別ヲ明カニスベシ」。いま1つは「経理ハ蔭ノ力(ちから)ナリ徒ラニ舞台ノ上ニ踊ルヲ望ムベカラズ」。思い当たる企業人は少なくないだろう。そういえば、1980年代後半のバブル全盛期も、こうした心得を忘れて暴走するビジネスマンが沢山いた。

 この「経理心得」は10カ条から成る。内容は経理マンに向けられたものだが、社員一般にも当てはまるものが多い。いくつかをここで紹介すると――

 「公私ヲ問ハズ機密ヲ厳守スベシ」

 「正直潔白ヲ旨トシ常時身ヲ慎ミ信用第一ト心得ベシ」

 「常ニ技能ヲ磨キ執務ハ正確敏速ヲ期スベシ」

 昭和18年といえば、太平洋戦争のまっただなか。「経理心得」のつくられたいきさつは知らないが、現在にも通用する心得ばかりである。

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2012年7月 1日 (日)

メディアは小沢一郎氏らに突っ込んだ質問を

 ここ何日間、国会は民主党内の対立問題で時間を無駄にしている。消費税引き上げ法案に反対ないし棄権した小沢一郎民主党元代表率いるグループの処分をめぐって、党内調整が行なわれてきたからだ。

 この間、新聞、テレビなどのメディアは野田首相、小沢氏、輿石幹事長らの発言をそのまま紹介している。小沢氏を例にとると、「国民の生活が第一」と言い、3年前の選挙のときのマニフェストを守れと主張しているのをそのまま放映したり、記事にしたりしている。

 しかし、小沢氏が言うマニフェストが空中分解したのは、おいしい話をずらずら並べただけで、実現性がとぼしいことが明らかになったからである。ばらまき財源の16.7兆円は遂に生み出されなかった。それなのに、小沢氏は3年前と同じことをお経のように唱えているだけなのである。

 7月1日付け朝日新聞の投書欄に、「小沢氏は公約実現努力したか」と題する主婦の意見が載っている。その中で「民主党が政権をとってからこの3年間、小沢氏がこのマニフェストの実現のために必死に働いたようにはみえません。」、「本当は増税が避けて通れないと知りながら、集票のためにできもしないことを言う。そんなまやかしの主張はもううんざりです。」と書いている。この主婦にも、小沢氏のいい加減さは明々白々なのである。

 にもかかわらず、メディアの記者諸氏は小沢氏に、言うこととやることとの矛盾を突いて、それに小沢氏がどう答えたか、といったやりとりを報道していないように思える。そもそも、そういった突っ込んだ取材を記者諸氏はしていないのではないか。彼らは客観報道の建て前のもとに、小沢氏のいい加減な発言をただそのまま報道するだけでよしとしているのではないか。

 現下の内外情勢はきわめて深刻である。いちいち挙げなくても、新聞を通読すれば、外交、内政において、日本が停滞し、内部から崩壊しかかっている事象が相次いで起きていることがわかる。メディアの諸氏も、日本という国の危機を踏まえ、政治家にきびしく注文していく必要がある。社会の木鐸たれ、そう注文したい。

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