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2012年8月18日 (土)

震災復興の名を借りた巨額の財政支出へ警告

 辛口の経済評論で知られる原田泰氏の『震災復興 欺瞞の構図』(2012年3月刊)を読んだ。同書の「終わりに」は原田氏の言いたいことを一言で表している。「東日本大震災で被災した人々を直接助ければ4兆円の復興費ですむ。個人財産を政府の費用ですべて復旧したとしても6兆円ですむ。19兆円から23兆円と言われる復興費も要らないし、そのための10.5兆円の増税も必要ない」。

 同書は4兆円ないし6兆円の復興費で十分なことをデータをもって論証している。そして「にもかかわらず、なぜ震災復興に巨額の効果のないお金が使われるのか」を詳しく分析している。

 序論では、「政府が震災による毀損額を過大に見積もるのは、復興とは別の魂胆があるからだ。事業官庁としては、これを機に多くの予算を獲得したい、財務省としては、これを利用して増税をしたいのだ」、「政府や自治体は、震災復興に関係のない、効果の明らかでないことに税金を使おうとしている」と指摘している。

 別の個所では、「震災復興策は、票田を維持するための利益誘導政策として、経済効果の低い、予算の消化を自己目的とした事業になるだろう」とも言っている。

 なぜか。「終わりに」では、「それは政治が、人々を政治に依存させようとしているからである」という。人々が自立して政治に依存しないようになっては、政治(に携わる人たち)のうまみがない。「エコタウンのような割高なエネルギーを用いる町を作れば、人々はいつまでも補助金を求める。それは政治の力を肥大化させる。高台移転のような巨大な公共事業を行えば、その工事には何年もかかる。人々は何年も政治に依存することになる」。

 そして「人々を政治に依存させれば、政府支出は増大し、いくら増税しても、財政再建などできるはずはない。人々が自立すれば、政府支出は減少し、増税をしなくても税収が上がる」と言う。震災で、政治が復興を図るのは当然だが、それはあくまで人々の自立を助ける支援でなければならないというのが著者の主張である。もっともである。

 原田氏のこうした重要な指摘は国会などでまともに取り上げられてしかるべきだが、全く無視されている。与野党(の議員)とも国政をまじめに考えていないのだ。

 ところで、野田政権は17日、2013年度一般会計予算案の概算要求基準を閣議決定した。財政再建が至上の命題であるにもかかわらず、概ね今年度予算と同じ歳出規模で、国債新規発行額も横ばいである。医療・介護などの効率化など、歳出面の切り込みはきわめて不十分と言わざるをえない。

 消費増税の法案は国会を通過したが、これでは財政悪化が止まらない。

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