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2012年8月 3日 (金)

人間らしい労働と暮らしを求めて

 『しあわせに働ける社会へ』(竹信三恵子著、岩波ジュニア新書)は就職難に悩む若者たちに向けて書かれた本だが、現代日本の社会を労働という切り口でわかりやすく説明している良書である。働くすべての人たちに読んでもらいたいと思う。

 ここでは「第5章 しあわせに働ける仕組みづくり」で指摘されている問題点のうちから、法的な観点について紹介する。それは働く人たちを守る基本的なルールが欠如しているか、あっても守られないということである。

 ――その1つは1日8時間労働が形骸化していることだ。毎日、元気で働けるためには、ないしは家庭生活を健全に営めるには、残業は本来あってはならない。だが、日本の労働基準法は8時間労働について、いまだに多くの例外を認めている。36協定(労働基準法第36条で労使が合意すれば労働時間を延ばせる)がその典型だ。時間外労働に対する割増賃金率も欧米より低い。

 EUでは、労働を終えてから次の労働までに11時間空けなければならない。しかし、そうした規制は日本の労働法規にはない。

 EUには同一価値労働同一賃金という共通ルールがある。日本にはこうしたルールはない。派遣であろうと、パートであろうと、実質、同じ労働なら社員と同レベルの賃金が払われるとしたら、正規雇用だとか、非正規雇用だとか、大騒ぎしなくなるだろう。

 日本の労働組合は、多くが企業内組合で、「勤め先の会社の業績アップとその配分には関心を示しても、会社を超えた土台づくりには関心が薄い」。

 失業者が働き手として復帰できるための安全ネットも日本は不十分である。雇用保険、職業訓練、返済不要の公的奨学金といった仕組みである。――

 以上のような指摘は、格別に目新しいものではない。だが、人間らしい労働と暮らしを手に入れるには大事なポイントである。それを働く人々が自覚し、その実現を求めて行動することが私たちの大きな課題である。

 ところで、厚生労働省が雇用政策研究会の報告書~「つくる」「そだてる」「つなぐ」「まもる」雇用政策の推進~を1日に発表した。産業構造の転換、人口減少社会の到来などの日本が直面する課題に対して、どのような雇用政策を実施すべきか、という問題設定に基づく報告書である。しかし、竹信氏の著書を読んだばかりなので、厚労省や学者などが、人間らしい労働と生活を実現するための基本的な法規などの欠如を無視して、きれいごとを言っているという感じがしてならない。いまだに、量的成長に傾斜した発想なのも納得しがたい。

 

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