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2012年9月30日 (日)

財政、社会保障制度等の改革に対する経済同友会の主張

 経済同友会の会報「経済同友」9月号は「歳出削減・歳入増・成長戦略の三位一体の改革」を特集している。7月に開催された夏季セミナーの第2セッションをまとめたものだが、ここでは財政、税制、および社会保障制度の現状と改革の方向とを取り上げている。その中から、うなずける発言をいくつか紹介する。

・国民負担率は潜在的な負担を含めるとすでに51%になっている。負担率が50%を超えると経済活動は弱まるといわれている。消費増税と同時に、社会保障給付を抑制・削減しなければならない。〔岡本圀衛日本生命会長〕

・いまの地方交付税交付金制度では、地方自治体が歳出削減・歳入増加を実現すると、交付金を減額されてしまうという。この「負のインセンティブ」を見直すことが急務である。〔同上〕

・今後、迅速に決断すべきことは、税方式による基礎年金制度の創設、現役からの仕送りによらない後期高齢者医療制度の改革、マイナンバーと社会保障制度の連携による給付効率化、社会保障給付費の管理抑制の実施について結論を出すことである。〔高須武男バンダイナムコホールディングス会長〕

・65歳以上が個人金融資産を約900兆円保有している。生前贈与税を凍結するかゼロにすれば、その10%の90兆円が動くだろう。その半分の45兆円を5年間で子・孫が消費などに充てると年間9兆円になる。GDPが約2%上昇する。〔田幡直樹エム・アイ・コンサルティンググループ会長〕

・地方交付税交付金制度の見直しを強く政府に言いたい。極めて不透明で運用が政治的だ。国と県と市町村のお金の流れが既得権益化しており、いまどき不要なものにもかなりのお金が使われている。このため、地方政府のスリム化・合理化が進んでいない。〔和才博美NTTコミュニケーションズ相談役〕

・社会保障制度改革国民会議はメンバー次第で、結果的にわれわれの意見がなにも反映されない、あるいは同会議で決めても、民主党、自民党がひっくり返すのではないか。同会議の権限をしっかり定義し、国民の意見を反映する仕組みづくりが必要だ。〔藤森義明LIXILグループ取締役代表執行役社長兼CEO〕

・法人税減税は、企業が助かるからではなく、国民が将来設計できる環境が整えられるから必要なのである。〔岡本圀衛〕

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2012年9月27日 (木)

毎年増える国民医療費

 厚生労働省が27日に2010年度の国民医療費を発表した。37.4兆円で、前年度より3.9%、金額で1.4兆円増えた。日本の人口1人当たりでは29.2万円、3.5%増だった。国民所得に占める割合は10.7%である。国民医療費が増えた主な理由は、高齢化、診療報酬引き上げ、医療技術の高度化だという。

 このデータは、傷病の療養費で、かつ保険診療の対象になっているもの、および後期高齢者医療や公費負担による給付である。自由診療は含まれないし、正常な分娩なども対象外だ。したがって、広義の医療費となると、上記の金額より多い。

 内訳をみると、興味深いデータがある。70歳以上の後期高齢者医療給付分だけで11.7兆円、前年比6.0%増。国民医療費全体の31.2%を占めている。

 65歳以上の医療費は全体の55.4%を占めている。1人当たり70.3万円に達する。65歳未満の1人当たりは16.9万円なので、高齢化がいかに医療費を膨らませているかがよくわかる。

 ところで、65歳以上を男女別にみると、1人当たり医療費が、男性は74.9万円、女性が66.9万円とかなり違う。70歳以上の男女別では、男性85.4万円、女性75.4万円と10万円も違いがある。平均的に、女性のほうが長生きするから、死ぬまでの1人当たりの医療費は男性と女性とで大きな違いはないことになる。おもしろいデータである。

 ところで、国民医療費に投じられる公費は14.3兆円だった。国庫の負担が9.7兆円、地方自治体負担が4.6兆円となっている。残りは医療保険や自己負担などである。いずれも国民医療費の増大に伴って負担額が増え、苦しくなっている。消費税の増税(2014年以降)に寄りかからず、医療費を抑制する具体策を早く導入する必要がある。

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2012年9月24日 (月)

領土問題で改めて思うこと

 尖閣諸島をめぐる中国の対日姿勢は厳しさを増している。韓国も竹島への支配を一層強固なものにしようとしている。両国政府とも、国民をより一層、反日に駆り立てるような動きをみせている。中国との関係も韓国との関係も、戦後最悪になりそうだ。

 中国は尖閣諸島について、2年ほど前から国の中核利益(コア・インタレスト)に含まれるという考えを打ち出していた。最初は軍部がそう言い出し、文官はそうではないと言っていたが、その後、次第にコア・インタレスト論が強まり、いまや、軍部も政府もコア・インタレスト論一色になっている。その流れからみると、中国は、日本政府が紛争を回避するために個人地主から尖閣の土地を買うという説明には全く耳を貸さず、尖閣から日本を追い出し、中国の領土にしてしまう格好の機会だと思っているようにみえる。

 もしも尖閣が日米安全保障条約の対象でなかったら、中国は大量の漁船を送り込み、何人かの漁民を島に上陸させるのではないか。そして漁民の保護を名目に公船を次々に島に派遣し、たちまち島内に構築物をつくってしまおうとするのではないか、と指摘する向きもある。南沙諸島を中国が強引に実効支配した手口がそうだったといわれる。チベットなどをめぐる中国の侵略的な行動は、欧米がかつてやっていた帝国主義的な領土・資源の支配・拡張の道と同様にみえる。

 これまで、日中関係は危うい局面に陥ることがあっても、政経分離とか政府間対立と民間交流は別だという理由で、極端な対立を避ける抑制が働いていた。だが、今回は、文化交流だろうと、地域交流だろうと、中国のほうから、どんどんストップしている。また、日本系の企業・事業活動に対する破壊・略奪活動を黙認したり、従業員が反日で社内デモをするとか、会社を敵対視するような活動をする事態まで起きている。もちろん、それらは全体からみればごく一部にすぎないが、中国の共産党や政府が反日行動を扇動し、あからさまに日本攻撃を展開しているさまは異様である。

 党大会が間近であり、党内の権力抗争が激しいから、日本に厳しく出ざるをえないとか、いろいろ解釈はある。また、国内の貧富の格差や支配層の極端な腐敗などで、貧困層の怒りが鬱積しており、それが党や政府に向けられないように、日本を攻撃対象にしているという解釈もある。いずれも真実をうがっているように思う。それに加え、中国は経済力で日本に追い付き、追い越したという自信から、日本に遠慮する必要はない、と思っているふしもある。

 しかし、次期主席と目される指導者が「日本軍国主義」などと言っているように、隣国の日本さえもまともに認識できないというのは、世界の今後にとって大きな懸念材料である。

 それはさておき、中国が日本と友好関係を持続的に保てない理由として、中国の反日教育が指摘される。だが、中国はなぜ、いまにいたるも反日教育、反日映画・テレビドラマなどをせっせと続けているのだろうか。それは韓国の反日教育についても言える。中、韓とも、支配層が国民に責められそうなときに、批判の矢を日本へとそらすという面もあるが、アジアの中で先に豊かになった日本へのねたみもあるような気がする。もし、植民地支配を受けなければ、日本よりも豊かになっていたはずだという憤懣が感じられないではない。

 ひるがえって、日本では大陸を侵略した反省を教育に採り入れているだろうか。ドイツはナチスに責任を負わせる形にせよ、小学校などで侵略戦争への反省を教え込んでいる。昼食を食べているときに、侵略の歴史を映像で見せていたという話も聞く。日本は明治維新までぐらいは学校で教えるが、大陸侵略などの歴史をほとんど教えていない。日本はアジア侵略の背景をきちんと押さえた明治以降の歴史をまともに教える教育が必要だろう。経済援助、つまりカネですませ、戦争責任に対してまともに向き合ってこなかったことをいまこそ反省すべきではないかと思う。中、韓と日本は歴史教育においてどちらも極端であり、今後のためには、その是正が必要不可欠である。

 いまの中国の指導層にしても、韓国の指導層にしても、あるいは日本の指導層も、国民の平和・安全や豊かな生活、あるいは近隣諸国との友好関係を国民に提供する態勢を築きえていない。だから、もっと指導層が賢くなり、お互いに補い合い、助け合うことが求められている。

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2012年9月20日 (木)

100%減資はうらみを残す

 日本航空が東証に株式を再上場した。2010年に会社更生法の適用を申請、企業再生支援機構の支援によって立ち直ることができた。これは、大規模な人員整理や経費カットといった経営再建の努力もあるが、他方で、100%減資や銀行融資のおよそ5200億円にのぼる棒引きという株主・金融機関の資本および負債の面での助けがあってのことである。

 9月19日の朝日新聞朝刊「声」の欄に、「日航株再上場は納得できない」という読者の声が載っていた。株主優待券を楽しみにわずかの株を買った個人株主で、「個人株主を踏みにじり」、「これまでの会社の努力は認めるが、何の償いもなしに再上場は許せない」、「公的資金も受け、恩恵の受け過ぎ」、「利益を出せば上場OKということか」、「第三者割当増資で、なじみの企業や日航役員が引き受けたのは不公平」などと言って、「株の不買運動を起こしたい気持ち」と締めくくっている。その気持ちはわかるような気がする。

 会社法の建て前からすれば、破たんしたら、真っ先に株主が責任を負うことになるので、株式は価値ゼロとなって当然である。ひとむかし前、株券が発行されていたころだと、会社が破たんして100%減資したら、株券はただの紙ごみとなり、障子紙として襖などに張るしか価値がないといわれたりし、それを、株主は納得して受け入れてきた。

 しかし、企業の多くは、個人株主について、値上がり期待で投資しているだけで、大株主とは違うとひややかな目で見てきたし、配当も額面配当の発想が尾を引いて低率配当を続けてきた。株主を会社のオーナーなどとは誰も思っていない。近年こそ、株主配当を増やすなど、株主への還元を重視するようになっているが、それ以前は、上場会社は大株主を大事にするが、持ち株がわずかな個人株主のことはほとんど無視していた。

 会社が成長し、1株当たり利益が増えるなら、それも納得できることだが、過去20年余り、個人株主を無視ないし軽視するきらいがあった企業は少なくない。経営に対する発言権も何もない個人株主を大事にしない企業風土、および証券市場が、「声」のような憤懣を招いているのだ、と思う。それは長期に低迷する日本の資本市場と無関係ではない。

 かつて興人などの経営再建に管財人として活躍した早川種三氏がこんなことを言っていたことがある。100%減資にしないで、99%減資にでもしたら、株主はその会社の株主であり続ける。そして、会社が再建されれば、その1%分の株式が値上がりして、株主の損を多少なりとも取り返すことができる、と。

 100%減資は理屈の世界である。しかし、情の世界を考慮することもあっていい、と夢想する。

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2012年9月15日 (土)

日本記者クラブ会報「特派員が語る日中40年」から学ぶこと

 尖閣諸島問題で、日中国交正常化40周年を記念する行事は中止され、40周年を祝うような状況では全くなくなった。この深刻な日中の緊張関係をどうときほぐしたらいいのか、目下見当もつかない。

 それに対する直接の答ではないが、日本記者クラブの会報(9月10日号)を読んでいたら、参考になる特集があった。中国に特派員として滞在したことがあるジャーナリスト4人の座談会(7月4日実施)「特派員が語る日中40年」がそれだ。田畑光永、金子秀敏、加藤青延、古谷浩一の各氏の話は興味が尽きない。

・2005年の反日デモは、最初は、当局がしかけた抗議活動ではないかという印象を受けた。プラカードはほとんど印刷されたようなきれいなもので、スローガンもよく似ていた。デモのあと学生たちが学校に帰れるようにバスがたくさん用意されていた。(加藤)

・このデモで、子供を肩車しているお父さんとかが参加していた。学生たちと歩きながらいろいろ話した。一方で、暴徒化する人々や、ペットボトルを日本大使館に投げつける人々がいた。(古谷)

・中国人は我々に「積極的なよい報道をしろ」と言う。新聞はコントロール可能だと考えている。(金子)

・日本人はわりと建前とか肩書きで人を信用するが、中国人は自分が知っている度合というか、はっきり確信を持たない限りは人を信用しない。(田畑)

・一昔前まで、中国は名刺の肩書はほとんど役に立たない世界だった。ただ、ひとたび関係が強まると、何でもありの世界。どうしてこんなことができるのかというようなことまで何でもしてくれる。少し前は、賄賂では動かないことも多かった。それ以上に人間関係が重要だった。(加藤)

・国交正常化の頃、日本人の中国観の中に、過去の戦争に対する贖罪意識がかなり大きなウエートを占めていた。今は違う。普通の国同士の関係になったという気持ちが強い。むしろ最近では、日本を脅かす相手というマイナスイメージを持つ人が多いのではないか。中国を極めて実利的に付き合う相手としてとらえるようになった。贖罪感はなくなって、是々非々の世界だ。日本と中国の力関係が変わることで、ばかにされるんじゃないかという不安感や恐怖感が日本人の心の中に広がりつつある。(加藤)

・軍備増強に走る中国に対して、日本はより大人の立場から、平和の重要性を訴え、いさめていくべきではないか。中国と対立を深めることは日本に何の利益ももたらさない。対立をエスカレートして日中経済関係に亀裂が生じれば、日本経済は一気に輝きを失い、世界中から「日本売り」が始まる可能性すらありうる。(加藤)

・中国は、農地を収奪された農民の暴動という形で社会の不安定が高まるのではないか。(金子)

・中国は拡大しやすい社会資本投資にどんどんお金を集中する形で成長してきたが、世界中が不況で、でき上がった生産能力を持っていく場がなくなっている。(田畑)

・古代の巨大なワニなどが身体が大きくなりすぎて絶滅したのと同じようなパターンに中国がはまる可能性があるという気がする。地方の末端は中央の唱えるお題目を無視して権力の乱用や汚職腐敗がはびこっている。しかも既得権益層が固定化し、私利私欲の中の独占が起きている。統治構造のゆがみで末端からどんどん腐り始めて壊死している。(加藤)

・日中関係は戦略的互恵関係以外に道はないと思うが、1つ困るのは、中国がいまや日本を必要としなくなった可能性があることだ。(金子)

・日本の若い記者でも、尖閣列島を我が国固有の領土だなどと書いたりしているが、たった百何年前に日本の領土に編入したものが何で固有の領土なのだ。あの島は何万年も前からあそこにあるのに。メディアはもうちょっと異論や少数意見こそニュースだと思って議論のネタになるような話を日中関係でもやってほしい。(田畑)

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2012年9月13日 (木)

財政危機なんてどこ吹く風といった政府予算要求

 12日に発表された政府の2013年度一般会計予算の概算要求は98兆8億円。新年度から特別会計(東日本大震災復興特別会計)に移った大震災復興予算を足すと101兆5425億円になるという。税収が40兆円台と見込まれるのに、概算要求だとはいえ、予算規模が税収の2倍強にもなるというのは、常軌を逸しているように思える。

 民主党政権になってから一段と財政危機が深刻になっている。野田政権は消費増税と並行して歳出のムダを厳しく削るべきだが、13年度予算の作成過程においては、そうした財政再建の具体的な動きは全然と言ってもいいほどない。財務大臣はじめ政治家は財務省の言いなりになっているようだが、官僚中の官僚である財務官僚も天下国家を支えるエリート意識を失ったままとみえる。

 先日、テレビのNHKスペシャル「追跡! 復興予算19兆円」(9日)人は、中央官庁が東北の被災地復興とは何の関係もない事業に復興予算と銘打っている実態を暴き出した。NHKが調べただけでも2兆円を超える予算が東北の復興とは直接関係がないという。そして、そうした歳出について問われた中央官庁の課長らはそろってもっともらしい言い逃れをしていた。これこそ厚顔無恥と言うのだろう。

 原田泰氏が震災復興の名を借りて巨額の財政支出をしていると批判していることを8月18日のこのブログで紹介した。同氏によれば、被災者を直接助けるなら4兆円ですむ、個人財産を政府の費用負担で復旧するとしても6兆円ですむという。19兆円から23兆円と言われる復興費なるものは、震災復興以外の目的に充てられるものがたくさん含まれていると指摘している。NHKの番組はそれを裏付ける内容だった。

 朝日新聞の9月13日付け朝刊一面は「復興予算、転用の恐れ―概算要求101兆5425億円」という見出し。下には「再生エネ枠で道路」という見出しもあった。しかし、すでに2011年度補正予算や2012年度予算において、復興予算の名目のもとに、ほかの歳出を潜り込ませたことは確かだ。それを予算要求する役所も、また予算を査定する財務省も知って通したのだろう。そこまで腐敗しているのである。

 このように、事態が相当深刻なのに、民主党、自民党の総裁選で、果たして争点になるのやら。日本の政治のゆくえが心配でならない。

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2012年9月 8日 (土)

イトーヨーカ堂正社員半減の因果はめぐる

 イトーヨーカ堂がグループ内他社への転籍や採用抑制によって、2015年度をメドに正社員(現在8600名)を半分に減らす。その一方でパートを6800人増やすという。パートの比率を現在の77%から90%に引き上げ、15年度の人件費総額を100億円減らす(8日付け日本経済新聞朝刊)という。

 これは親会社、セブン&アイ・ホールディングスの方針に基づく。今まで以上にパート主体の経営になるため、パートの給与制度を改め、優れたパートにはいまの給与の2~3倍を支払うとか、店長などに登用する仕組みも設けるという。

 国内では消費が伸びず、他方、流通業界の競争激化、低価格化で消費財メーカーも流通業者も総じて収益が低下傾向にある。したがって、ヨーカ堂が収益改善のため人件費総額の削減に乗り出すのは経営判断として当然である。

 しかし、高い給与水準の社員を減らし、時間当たりの賃金水準が低いパートを増やすというのは、マクロ的にみると、働く人たちの給与水準を切り下げることを意味しよう。その結果、国内の個人消費は低下することになるのではないか。

 そうだとすれば、個人消費の動向に影響されるイトーヨーカ堂などの小売業者は、回り回って個人消費低下の影響を受け、もっと競争激化や収益低下に追い込まれることになりかねない。天につばきするようなものである。

 米国における自動車産業の勃興期には、フォードが大量生産により乗用車の販売価格を引き下げる一方、従業員には、容易に自動車を買えるような高い給与を支払った。大量生産・販売と従業員の労働条件向上とが好循環を形成した。

 これに対し、いまの日本は労働コストを引き下げることしか眼中にない企業が多い。企業が皆そうすればするほど、労働者の所得が減る。また、国内需要の低下で、企業は値段の叩き合いに追い込まれがちだ。したがって、デフレから逃れられない。

 若者の半数近くが非正規雇用であり、いわゆる正社員も労働条件の悪化に苦しんでいるといわれる。こうしたギリギリの状況に、企業も働く人たちもあえいでいる。ヨーカ堂の社員→パートへのシフトはこうした悪循環が日本社会をむしばんでいる表れだと思う。

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2012年9月 7日 (金)

最も財政悪化が深刻な日本で財政再建が争点にならない不思議

 民主党および自民党の総裁選がニュース報道のもっぱらのテーマ。民主党は間近に迫る衆議院解散で頭がいっぱい。野田首相では選挙に勝てないと思う議員たちは、自薦他薦で首相のクビのすげかえをねらって必死だ。また、マニフェストにあげたバラマキ政策の多くを継続しようとしている。

 自民党も谷垣総裁にとって代わろうと総裁選に立候補する意向の議員たちが何人もいる。だが、自民党が下野してから、どんな反省をしたのか定かではないから、自民党が政権を握ったら、また利権政治が復活するだけということになりかねない。

 鳩山、菅両政権を経て、いまの野田政権は官僚機構に乗っかった政治になっている。自民党政治も、もともと官僚政治だったのだから、民主党、自民党のいずれが政権を担ったとしても、日本の政治は大きな違いはなさそうだ。

 だが、国内外が激動を続けているときに、政治家が前例尊重を基本とする官僚機構に依存した政策や政治行動をとっていたら、日本の前途は暗い。

 なかでも不安なのは、財政再建が政治の主要な争点になっていないことだ。米国の大統領選挙では、共和党が財政再建を争点の柱の1つに挙げている。フランスやイタリアなどでも、大統領が財政再建を掲げている。ギリシャなどの破たん国家ないし破たん寸前の国家は言うまでもなく、財政赤字の対GDP比を引き下げるようEUから求められている。

 そうした国々と単純な比較はできないにせよ、日本の財政赤字はフロー、ストックのいずれも最悪の状況にある。それなのに、本気で財政再建に政治、政治家が取り組む気配は皆無に等しい。

 2013年度予算編成の時期にあたるが、断片的に報道される1つひとつが財政破たんへの歩みを示している。厚生労働省の所管する社会保障費だけで30兆円を超えるという。税収が40兆円台前半にすぎないのに。地方交付税交付金が18兆円ぐらいだから、ほかの省庁の活動はすべて国債という借金で賄うしかないということだ。

 13年度の国債費は24.6兆円で、今年度よりも2.7兆円増えるという。仮に税収が全部で44兆円だと想定すると、国債の利子および償還を差し引いた残りの20兆円程度で一般会計すべてを賄うのが無借金経営のありかただ。そんな無茶なことを、という考えもあるが、足らず前はすべて国債発行で調達するのを当然だと考えるのも財政健全化とはほど遠い考えだ。

 現在の政争で、今年度の赤字国債発行法案が成立していないので、政府は地方交付税交付金などの支出を抑える方針という。このため、歳出の予算案が成立しているにもかかわらず、歳入関係の法案が国会を通らないのは問題だとの主張も聞かれる。しかし、赤字国債発行の意味や規模、その将来への影響などを、この際、考えるのは大事なことだ。

 歳出がやたら膨らむのを当然視して赤字国債をどんどん出すという異常な財政運営を毎年、当然のように続ければ、どんな将来が待っているか。家計と政府とは違う、と小賢しいことを言っていると、いずれ政府は家計をめちゃめちゃにする公算大である。

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2012年9月 6日 (木)

縦割り行政のせいでやっと今頃、金融商品総合取引所が実現へ

 改正金融商品取引法が6日、衆議院で可決。参議院先議なので、同法は成立した。さまざまな金融商品を扱う総合取引所がこれでやっと日本にも誕生する。

 日本では第二次世界大戦後、証券取引および証券会社は大蔵省が証券取引法に基づいて所管。商品先物取引は農産品が農林水産省、工業品は経済産業省が所管、法律は商品取引所法一本で農水、経産両省が共同で所管した。取引所もそれぞれ各省が所管した。また、遅れて金融先物が登場したため、財務省(金融庁)が金融先物取引所の設立を認め、所管するようになった。当然、取引所は各省の大物OBの天下り先となっていた。

 しかし、これらの取引はいずれも金融商品の現物取引ないし先物取引という範疇に属している。このため、投資・運用のグローバル化、情報化や金融派生商品の拡大につれて、取引所や業務の垣根を取り払い、スケールメリットを生かすほうが望ましいとして、主要国では規制・監督の一元化を図り、取引所の合併統合などがおこなわれてきた。

 遅ればせながら、日本も、21世紀に入って証券取引法、商品取引所法などを一本化し、金融商品取引法を設けたが、規制・監督の権限は各省が手放すことに抵抗。2009年の法改正でも、持ち株会社方式で証券、商品などのそれぞれの規制・監督の権限を各省が持ち続けるという中途半端な制度改革に終わっている。

 しかし、世界の潮流に乗り遅れているため、金融取引の分野における日本のウエートは下がる一方。商品先物では、東京穀物取引所が行き詰まり、商品取引業者があいついで破たんないし撤退している。株式取引においても、東証と大証との統合が予定されている。

 このように世界に立ち遅れている日本の金融分野のビジネスをテコ入れしようというのが今度の金融商品取引法の改正である。監督官庁もようやく金融庁に一本化された。中央官庁の縦割り行政の弊害などで競争力を失ってきた日本が立ち直れるか、1周か2周遅れを挽回できるか、疑わしいが、事実上、機能停止に近い国会が6日にこの法改正を実現したことは救いである。

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2012年9月 2日 (日)

中国のメディアと日本のメディアの違い

 中国政府は国内のネット世論に押されて日本との外交スケジュールを突然変更したり、ネットやデモでの「愛国無罪」の主張に配慮して、必要以上に強硬な対日姿勢をとったりする。9月1日の朝日新聞夕刊のコラム「窓 論説委員室から」(筆者は星浩)は、こうした中国の事情を理解するうえで重要な問題点を提示している。

 コラムによれば、昨年12月、野田首相の訪中1週間前に、中国側が突然、延期を申し入れてきた。「南京事件」の日にあたるので、1週間余り前から中国国内のネットでたくさんの批判が寄せられたからだという。この延期に関して、中国の外交当局者が日本の外交官に語った内容は以下のようなものだった。

 即ち、中国には日本の新聞のように様々な意見を紹介して議論を深めるメディアがない。したがって、激しいネット世論が政府や党の政策を左右することがある、と。

 以下はコラムの趣旨を受けての私の意見である。

 中国では、中国共産党・軍・政府が新聞、テレビといった既存メディアを統制下に置いている。既存メディアは党や政府の広報担当であり、それらのメディアの記者は一般大衆を教え導くという役割が当然視されている。その枠をはみだして党や政府などを批判すれば、追放されたり、逮捕、監禁される。ネット世論にしても、党や政府などの方針に反するものはせっせと削除されている。党や政府などが自由な世論を踏まえて、政策や方針を決めるという民主主義的な手続きは中国では欠落している。

 一方で、中国国民は党や政府などを直接に批判できないので、対外的な問題などで、ネット上に、不満をぶつける形であろうと、おおげさであろうと、とにかく意見を表明しようとする。そして、党などは、おおぜいの国民が不満を抱いていることがわかれば、ネット世論が極端であろうと、体制維持のため、それに譲歩するようなことになりかねない。

 中国はずっと反日教育を推進してきたから、中国国民の多くが日本を軍国主義国家だと思いこんでいる。この歪んだ歴史教育が中国の対日外交の手をしばっている。問題の根っこは深い。

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