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2012年9月20日 (木)

100%減資はうらみを残す

 日本航空が東証に株式を再上場した。2010年に会社更生法の適用を申請、企業再生支援機構の支援によって立ち直ることができた。これは、大規模な人員整理や経費カットといった経営再建の努力もあるが、他方で、100%減資や銀行融資のおよそ5200億円にのぼる棒引きという株主・金融機関の資本および負債の面での助けがあってのことである。

 9月19日の朝日新聞朝刊「声」の欄に、「日航株再上場は納得できない」という読者の声が載っていた。株主優待券を楽しみにわずかの株を買った個人株主で、「個人株主を踏みにじり」、「これまでの会社の努力は認めるが、何の償いもなしに再上場は許せない」、「公的資金も受け、恩恵の受け過ぎ」、「利益を出せば上場OKということか」、「第三者割当増資で、なじみの企業や日航役員が引き受けたのは不公平」などと言って、「株の不買運動を起こしたい気持ち」と締めくくっている。その気持ちはわかるような気がする。

 会社法の建て前からすれば、破たんしたら、真っ先に株主が責任を負うことになるので、株式は価値ゼロとなって当然である。ひとむかし前、株券が発行されていたころだと、会社が破たんして100%減資したら、株券はただの紙ごみとなり、障子紙として襖などに張るしか価値がないといわれたりし、それを、株主は納得して受け入れてきた。

 しかし、企業の多くは、個人株主について、値上がり期待で投資しているだけで、大株主とは違うとひややかな目で見てきたし、配当も額面配当の発想が尾を引いて低率配当を続けてきた。株主を会社のオーナーなどとは誰も思っていない。近年こそ、株主配当を増やすなど、株主への還元を重視するようになっているが、それ以前は、上場会社は大株主を大事にするが、持ち株がわずかな個人株主のことはほとんど無視していた。

 会社が成長し、1株当たり利益が増えるなら、それも納得できることだが、過去20年余り、個人株主を無視ないし軽視するきらいがあった企業は少なくない。経営に対する発言権も何もない個人株主を大事にしない企業風土、および証券市場が、「声」のような憤懣を招いているのだ、と思う。それは長期に低迷する日本の資本市場と無関係ではない。

 かつて興人などの経営再建に管財人として活躍した早川種三氏がこんなことを言っていたことがある。100%減資にしないで、99%減資にでもしたら、株主はその会社の株主であり続ける。そして、会社が再建されれば、その1%分の株式が値上がりして、株主の損を多少なりとも取り返すことができる、と。

 100%減資は理屈の世界である。しかし、情の世界を考慮することもあっていい、と夢想する。

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