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2012年11月28日 (水)

良薬は口に苦し:新政党の誕生と再編

 12月の衆議院選挙に向けて、新政党の出現や離合集散が盛んだ。別の政党に移る政治家も目立つ。こんなに政党の誕生や統合といった現象が相次ぐのはなぜなのか。

 3年余り前に民主党が政権を握ったのは、自民党中心の政治が腐敗堕落し、国民のニーズからかい離したからだった。二大政党間の政権交代こそが、日本の政治体制として望ましいという期待もあった。

 しかし、民主党はマニフェストに挙げた国民との約束をろくに果たすこともできなかった。カネをばらまくことで財政悪化に拍車をかけた。他方、野に下った自民党は自らが政権を握っていたときの既得権益擁護の発想から抜け出すことができないまま、今日にいたっている。自民党は昔のままで、自己革新ができていないのである。したがって、自民党と民主党の両党以外に投票したい政党が出現することを多くの有権者は待ち望んでいることだろう。

 橋下大阪市長率いる維新の会は、そうした時代の潮流に根差したものと言えよう。既存政党に飽き足りない有権者にとって、投票の選択肢が増えたのは歓迎だ。最近、名乗りをあげた未来の党などは、脱原発など有権者の問題意識の多様性を反映したものである。ただし、シングルイッシューでは、その他の課題について意見がまちまちということも起こる。

 日本のこれからを左右するものとして突きつけられている課題は、脱デフレ、社会保障制度の整備および効率化、財政破たんを避けるための増税など財政再建、国内企業の国際競争力強化、TPPなど多国間交易ルールの整備、脱原子力発電、教育改革、農業改革、外交・安全保障、周囲の国々との協調・友好などいろいろある。それに関連して規制の撤廃・緩和や、歳出のムダ削減などが必要である。

 こうした多様な政策課題をきちんと受け止め、整合性のある各論を主張してくれる政党こそが国民の待ち望んでいるところである。甘い言葉で国民をだますのはやめて、良薬は口に苦いことをきちんと言うべきだ。有権者のほうも主体的に政党、政治家の真贋を見極め、行動する時だろう。

 いまは脱原発、反TPP、反消費税増税などシングルイッシューをめぐって「この指とまれ」が多い。しかし、そうした特定の争点しか主張しない政党、政治家には投票すべきでない。

 

 

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2012年11月23日 (金)

日本を「守るために変わる」ことが必要

 財務省の高田英樹氏が民主党政権の国家戦略室に出向した2年間を総括した「国家戦略室の挑戦~政権交代の成果と課題~」を読んだ。90ページ近いもので、私見とはいえ、民主党政権の国家戦略室の誕生、その意義、具体的な取り組みなどをかなりくわしく紹介していて参考になる。

 それだけではない。2003年から3年間、民主主義の先輩国である英国の財務省に出向した際の”異文化”体験をもとに、国家戦略室の成果や問題点を、彼独自の視点で分析しているほか、日本の政治や官僚機構などが是正すべき課題を具体的に指摘している。

 ……と、固苦しく書くと、おもしろくなさそうに思われるかもしれないが、実際に読んでみると、読みやすいうえに、目からうろこが落ちる類いの事実にぶつかる。

 いま、総選挙が行われるのはよいとして、政党の公約がいい加減なので、どこの政党に、誰に、投票したらいいか、悩んでいる選挙民が多いと思う。高田氏の指摘は、読んでもらえばわかるが、日本の選挙制度や、政党および官僚機構などを含めた統治機構のありかたなどにモノ申しており、それらが是正されれば、日本の民主政治は相当よくなると思う。

 英国財務省で受けた異文化体験を、高田氏は「多様性(diversity)」と総括する。「それぞれの職員を個人として尊重する」ということである。性別、人種間の機会均等、多様な文化、バックグラウンドの尊重、弾力的な勤務体系の容認、異なる意見への配慮といったことだ。官僚の退庁は1年を通じてほとんどが夕刻で、5時に帰り始めるという。

 採用はポストが空いた場合、その都度行われる。内部からも外部からも採用し、外国人も役職に就くことがある。オックスフォード大などの大学新卒の採用は少数で、よそで働いた者が多い。採用者の年齢も開きがある。財務省の仕事と直接関係のない出身学部が多く、上のポストに就くには、一旦、退いて、ほかの仕事を経験することを求められる。

 こうした人事のやりかたは、知識、経験、人間関係の蓄積が難しいなどのマイナスもあるが、組織の柔軟性、思考の固定化・保守化を防げる。そして、組織への執着心や縄張り意識を減らせるという。日本の官僚機構を思い浮かべれば、違いがよくわかる。

 高田氏は、日本の官庁が英国のように民間人材を登用すれば、官庁の組織も多様性、柔軟性を持つことができ、その結果、変化に対応し、組織の真の価値を守ることができると言う。「守るために変わる」ことが求められるというわけだ。

 

 

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2012年11月19日 (月)

北方領土問題を日ロの戦略的互恵関係で捉える視点

 日本とロシアの間には北方領土の問題がある。第2次世界大戦が終わってから67年も経つのに、いまだに解決のメドがたっていない。そして、日本と中国との間に尖閣諸島の、日本と韓国との間には竹島のそれぞれ領土をめぐる緊迫した対立が今年起きた。日本が直面しているこうした東アジアにおける領土問題について、石郷岡建日本大学教授が北方領土問題を中心に19日、日本記者クラブで解説した。

 その中で、なるほどと思ったところを紹介する。

・ロシアのプーチン大統領はメドヴェージェフ首相と異なり、日本との領土問題の解決を望んでいる。それも、日ロ双方が受け入れ可能な妥協による解決を求めている。

・米国の一極支配の時代は終わったと認識するプーチンは日ロの戦略的互恵関係を求めているようだ。ロシア一国で、巨大化する中国と対等な関係を持つのは無理なので、日本とパートナーを組んで中国と対抗するしかないと考えている可能性が強い。

・中国の脅威に対する日ロの考え方はほぼ同じで、戦略的には一致する可能性が強い。ロシアは機が熟し、日本が動くのをじっと待っている。

・メドヴェージェフは日本に対して強硬。日本は、健康に不安があるともいわれるプーチンが元気な間に北方領土返還交渉をまとめるのがいい。日本側も大胆な政治決断でまとめることが必要である。

 いま、日本は国会解散・選挙で内向きになり、外交政策・活動が空白状態である。しかし、主要国の指導者たちがそれぞれ国の将来をどのように構想し、そのためにどのような政治・経済・外交・軍事政策を進めようとしているかを把握し、日本の進路を定めるのが我が国の指導者の役割である。日本の指導者には、国益を守るために、世界を常に視野に入れた見識、洞察および決断力が欠かせない。

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2012年11月16日 (金)

国の平成23年度一般会計決算報告

 衆議院解散を決めた16日の閣議。そこに報告された平成23年度の一般会計歳入・歳出決算を見てみたい。

 歳入から見ていこう。総額は109兆9795億円。内訳は、まず租税は41兆7857億円である。これに対し、公債金は54兆480億円で、そのうち、特例公債金、つまり赤字国債発行によるものが34兆4300億円だった。税収よりも3割も多い国債を発行するという異常な財政構造になっている。

 ちなみに、税収の3大柱はどうなっているかというと、所得税収は13兆4762億円、消費税収10兆1946億円、法人税収9兆3514億円である。消費税が2倍に上がっても、国債発行額が2割程度減るだけである。

 次に歳出を見る。総額は100兆7154億円に達する。このうち、社会保障関係費が29兆7777億円で、国債費19兆6277億円、地方交付税交付金19兆867億円と続く。これら3つだけで68兆円余に及ぶ。これに対し、文教及び科学振興費は6兆359億円、公共事業関係費は5兆9148億円、防衛関係費4兆8181億円である。

 社会保障関係費は年金・医療・介護保険の給付だけで21兆298億円。生活保護費などの社会福祉費が4兆6719億円に達する。これらは毎年1兆円以上増えていくから、その財源の確保が大変だ。

 歳入および歳出の全体像を見ると、税収などのまともな歳入の2倍以上の歳出を行ない、歳入不足を新規の国債発行でまかなっている姿が明らかだ。

 超低金利の状態が続いているため、幸い、国債への利子支払いは少なくすんでいるが、景気が回復すれば、おそらく金利は上がる。その結果、国債費は大きく膨らむ。国の財政は一気に破たんに向かうだろう。

 以上は平成23年度の話である。24年度は事態はさらに深刻化する過程にある。政治の混迷の背後に、財政問題を含め、日本経済の厳しい実態があることは明らかである。

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2012年11月15日 (木)

中国共産党の新指導部発足

 習近平国家副主席が中国共産党の総書記および軍事委員会主席に就任し、新たな指導部の顔ぶれも決まった。日本は衆議院解散・総選挙で政治家の目がすっかり内向きになっているが、我々国民は、隣の国の政治、経済、社会の体制がどうなるかは日本の生存に大きく関わるから、大きな関心を持って見ざるをえない。

 一党独裁の国は国民のチェックを受けないですむから、どうしても、内向きの陰湿な権力闘争になりやすい。日本のような民主国家は、主権者たる国民の支持があって、初めて政権の座に就ける。この違いは大きい。

 中国は共産党が支配する国である。国家主席や首相という政府の統治機能も共産党が一元的に握っている。軍隊は共産党に属するもので、国家に直属する形になっていない。共産党の独裁を護るのが本務だ。一般市民は政治体制に対して全く発言権がない。だから、共産党にあらずんば人にあらず、である。

 その結果、国の中央から地方の末端まで共産党員による不正、腐敗がはびこっている。権力者などへの極端な富の集中や、都市民と農民との所得の大きな格差も続いている。そうした矛盾はしばしば暴動、デモなどとなって表れる。

 警察など治安に投じる予算が軍事費を上回るといわれるように、民主主義とは正反対の、人民を一方的に抑圧・支配する現在の体制を維持するのには莫大なコストがかかる。

 中国は漢民族が中核の多民族国家である。○○民族自治区というようなものがいくつもあるが、現実には漢民族が主要なポストを握り、民族文化を弱めつつある。チベットにおける漢民族支配への抗議自殺は、漢民族による強引な他民族支配を端的に示している。

 こうした中国の一党独裁体制の抱える問題を習近平体制がどこまで解消して体制を維持できるか、そんな問題意識が新体制にはほとんどうかがえない。

 これまでの中国の政治体制においては、体制に批判的な意見は許さない、多党化も普通選挙も認めない、幹部の不正に目をつぶる、経済発展で国民が豊かになるようにすれば問題はない、そんな権力観が基本にあったようにみえる。習近平新体制も、それを引き継いでいる。

 問題は、圧倒的多数の被支配者たちがこれからも一党独裁を従順に受け入れていくかどうかだ。中国の過去の歴史を見てもわかるように、どんな王朝も、いつかは滅びる。民主主義国家は自ら修正する機能を備えているが、独裁国家にはそれがない。そこに大きな違いがある。

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2012年11月14日 (水)

「江戸の大名菩提寺」展

 東京の港区立郷土資料館で開催されている特別展「江戸の大名菩提寺」を見た。東京タワーや六本木ヒルズなどがある港区は、江戸時代に大名屋敷と寺院とで面積の約7割を占めていたというから、けっこう興味深い企画展である。墓の副葬品、経典、参詣資料や家系図などから、当時の大名家と寺院との関わりなどが感じとれた。

 江戸時代に、港区はお寺が32もあり、檀家の大名は93家にのぼったそうだ。全国の大名は270家ぐらいだったから、いまの港区かいわいはきわめて独特な地域だったことが知られる。

 展示は、4つの寺を中心にしている。すなわち、薩摩藩島津家の菩提寺だった泉谷山大圓寺、越後長岡藩牧野家の菩提寺だった周光山済海寺、日向飫肥藩伊東家のそれだった佛日山東禅寺、信濃松代藩真田家の迦葉山盛徳寺である。東禅寺は英国公使舘に、済海寺は仏公使舘に充てられたところで、英国公使館襲撃に関する展示もある。

 おもしろかったのは犬の墓(2つ)と猫の墓である。いずれも薩摩藩で飼われていた犬や猫を葬ったもののようで、1830年に建てられた犬の石墓(高さ約50cm×幅30cm弱)の正面には「素毛脱狗之霊」と彫られている。横に犬の名前が「白」と記されている。もう1つ、1835年建立の墓は「離染脱毛狗之霊」とある。名前は「染」である。1766年に建てられた猫の墓は少し小さくて、「賢猫之塔」とある。「塔」は複数の猫を示しているそうだ。

 また、大名家の系図も展示されているが、それを読むと、正室の子が殿様の跡継ぎになるのと側室の子が後を継ぐのとは半々ぐらいかという感じ。参勤交代があったから、そうなるのもむべなるかなと勝手に納得した。

 あと、大名家から菩提寺に支出したお金が細かく記帳されているとか、各種の記録が残っていることに感心した。

 行草書で記された歴史資料もおもしろそうだが、読む能力に欠けている。それらを自在に読めたら、とつくづく思う。

 

 

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2012年11月12日 (月)

特例法なくとも赤字国債出せるようにとはとんでもない

 政府は今年度予算で予定している赤字国債の発行が、特例法が成立しないため、歳出を一部ストップしている。野田政権は自民党に働きかけて、近日中に特例法を成立させようとしている。それと並行して、毎年、その年度の赤字国債発行を認める特例法案を国会で通さないですむような法改正をもくろんでいる。すなわち、一般会計予算案と特例公債法案とを一体で処理し、自動的に赤字国債発行が可能になるという仕掛けづくりだ。しかし、それはとんでもない考えだ。

 建設国債と違って、赤字国債は歳入不足の穴埋めのために発行するもの。その発行に歯止めがなければ、健全な財政路線からどんどんそれていき、国の財政が破たんするのは必至である。赤字国債の発行を毎年、議会で承認した金額だけにとどめるという特例法の趣旨は、財政健全化を確保するためのもので、歴史的な失敗の教訓をもとにしている。

 それなのに、野田首相も、自民党の安倍総裁ら首脳も、予算案の成立と赤字国債の発行とをセットで承認するような特例法改正に前向きである。

 しかし、これまでのところ、国会の予算案審議は大ざっぱで、国の歳出にはむだづかいが多い。それは会計検査院が次から次へと槍玉にあげている通りだ。そうした水膨れ予算に合わせて自動的に赤字国債の発行額を認めていたら、国の借金はますます膨れ上がる一方となろう。

 国会で、予算案の徹底審議と特例法案の審議とが牽制しあうような状況はむしろ望ましい姿である。それは、我が国の財政が抱えている問題点に議員たちが気付き、それを是正する方向に持っていくには欠かせない前提でもある。

 衆参のねじれなどで特例法の成立が遅いからといって、赤字国債発行をできるだけ抑制しようという特例法の機能を取り除くことは日本の将来を危うくする。

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2012年11月10日 (土)

わずか半年で普通国債残高が18兆円も増えた

 財務省の発表によれば、普通国債の9月末発行残高は半年前の3月末よりも18兆3401億円増えて688兆2076億円となった。財政投融資特別国債その他を加えた内国債全体では803兆7428億円、3月末比14兆4008億円増だった。

 国債及び借入金現在高は983兆2950億円。半年前より23兆3448億円も増えた。これに政府保証債務現在高の45兆5059億円を加えると、国の借金とも言うべき債務総額は1千兆円を超えている。

 資産を抜きに債務だけを論じるのは適切ではないが、債務ばかりがどんどん増加している現状は相当に異常である。

 赤字国債発行法案をめぐって与野党が対立から協調へと変わっている。同法案が成立しないと、国の財政も、地方自治体の財政も、動きがとれなくなりはじめたからだ。しかし、今年度の赤字国債発行予定額をまるまる認めることになっても、国の財政支出の半分近くを“借金”で賄うという日本国の危機的な財政事情は、より深刻化するだけである。

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2012年11月 7日 (水)

米大統領選で感じた日本のダメさ加減

 民主主義国家といえども、米国と日本は政治のありかたが違う。米大統領選を見て、改めて違いを感じた。

 オバマ、ロムニーの両候補者の討論はいつも激烈だった。仮に、日本の総理大臣候補同士で日本の政治のありかたをめぐって討論させたら、どうだろう。米国の2人ほどさまざまな論点でやりあうことができるだろうか。それだけの知的能力があるのだろうか。

 日本は国会議員の中から総理大臣を決める。その国会議員の知的レベルが並みだとか低ければ、選出される総理大臣も外国の元首などと太刀打ちできない。大臣たちはほとんどが官僚に支えられて格好がついているのが実態だ。

 日本では、有能の士が政治の世界のお粗末さに愛想をつかし、国会議員になろうとしたがらない。しかし、そうした状況を変えることが急務だ。議会制度、選挙制度などの改革も必要だし、お任せ民主主義に決別するという国民の覚悟も求められる。日本維新の会など、国政の革新をめざす政党の出現は、そうした社会の要請に応える動きの1つと解釈することもできよう。

 中長期的には、政治の質的向上のため、この日本を背負って立とうとする優れた若人が輩出するように、学校教育の刷新や雇用の流動性などを図らねばならない。田中真紀子文部科学相が大学認可に関してお粗末な言動をとっているが、そんなことではなく、いままでの教育行政のままでは日本の将来が暗いことをはっきりと指摘し、どう改革したらよいか、抜本改革の旗振りをしてくれたらよかった。

 米大統領選が終わり、ロムニーは堂々とした態度で、かつ、にこやかに敗北宣言をした。そして、これからは国民の利益を第1に考えようと言った。内心はくやしくてたまらなかったのではと想像するが、さわやかな幕引きだった。日本の政治家は、正々堂々と戦い、勝負がつけば、お互いをたたえ合うようなコミュニケーション能力を身に付けてほしい。

 米大統領選はむちゃくちゃカネが動く点に疑問があるが、国民の各層が大統領選に関心を抱き、各種の大会、会合にたくさんの市民が参加することには感心する。民主党、共和党の政策や理念には大きな開きがあり、多くの市民は、どちらに賛成するか、ないしは反対するかが自分たちの利害につながると思っているようだ。

 これに対し、日本の主要政党間には細かい対立はたくさんあるが、社会保障、外交、財政、税制などの主要な分野での明確な対立軸は見当たらない。これでは、市民が政治に期待して投票するのは難しい。政党政治の根本に立ち返らないと、この国の衰退傾向は止まらない。

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2012年11月 4日 (日)

財務報告と非財務報告との統合報告書をめざす動き

 パナソニックやシャープなどが何千億円もの赤字決算を行なうという。人員整理でおおぜいの社員が退職や出向の片道切符をよぎなくされるのはいたましい限りだ。それはそれとして、株主や投資家はこうした巨額の損失計上を予想できただろうか。会社が発表する財務諸表やその他の開示情報に、そうした予想ができるような内容が盛り込まれていただろうか。

 3日(土)に中央大学大学院国際研究科が開いたセミナーは「ディスクロージャーの新展開―統合報告―」というテーマだった。財務情報に非財務情報(ガバナンス、環境などの情報)を統合する統合財務報告制度の形成と課題、および日本企業にとっての統合報告(Integrated Reporting)の意義をめぐって報告が行われた。

 そのうち、安井肇氏(あらた基礎研究所長)の講演で興味をかきたてられたのは、IIRC(国際統合報告評議会)のある報告だ。企業の財務報告書は世界の主要企業(S&P500)の企業価値(トレンドとしての株価)の83%を説明できたが、2009年にはわずか19%しか説明できなくなってしまった。いまや、企業価値を説明するには非財務情報による補充が必要になっているという。

 アニュアル・レポート(年次報告書)など現在の財務諸表は、加速化するイノベーション、外部環境変化への経営者の対処方針が詳らかでない。それに加え、経営戦略実現のプロセス、リスク認識およびそれらへのスタンスが不分明だと安井氏は指摘する。また、環境報告書など環境情報は企業のPRになったりし、他社との比較が乏しい。さらに1990年代以降、アニュアル・レポートが分厚くなり、読むのも、作るのも大変になっている。

 このため、企業はリスクマネーを投資家から供給してもらうための、また投資家・株主が適切に企業価値を評価できるための、そして、内外の従業員が企業価値創造過程に積極的に参加するための、仕掛けが必要である。それが統合報告だということのようだ。もちろん、統合報告にはIntegrated Management(統合経営)が欠かせない。

 従来の財務情報は法律などで規制され、義務化されているので、企業はもっぱらそれを作成することにとらわれ、その利用のされ具合や、時代の変化に伴う制度の見直しにはほとんど関心がなかった。しかし、統合報告の発想は、作り手の側ではなく、利用する投資家・株主などからの視点でディスクロージャーのありかたを時空の変化に即して改めようとするものである。IIRCは来年後半にフレームワークに関する第1次草案を提示するスケジュールだという。注目していきたい。

 

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2012年11月 1日 (木)

円形ドアに映る、前後が縮んだクルマの像は見飽きない

 ときどき行く病院の入り口は円形ガラスドアである。外側のドアと内側のドアとの間は円形の空間になっている。この病院に行くときの楽しみが、このドアガラスに反射する表通りの様子だ。

 さまざまなタイプの自動車が走り、止まる。ドアガラスに映る像を見ると、一様に小さく見える。しかも、それらのどれも、前後の長さが3分の1程度に縮まって見える。子供が夢中になるミニカーを想像していただこう。それがもっと前後を圧縮したような格好で、何とも愛らしいのである。

 トラックにはいろいろなタイプがあるが、どれも長くデカいので、おっかない感じだ。でも、この円形ドアに映ると、自分の視界にすっぽり収まり、ぐっと親しみを覚える。一番すてきなのはタクシーだ。セダンで、かつ黄色などのカラーで彩られているから、とてもかわいい。手元に置いておきたいくらいである。

 バイクや自転車も通り過ぎる。車輪は縦に細長い楕円形で不思議な感じがする。また、ときたま人が通り過ぎる。やけに細い縦長なので、人間とは思えない。細長いひょろっとした人形のような印象を受ける。傘をさしている姿もどこか奇妙だ。

 表通りを行き交うクルマや人が、円形ガラスドアの反射光によって、現実離れした不思議な世界に変身する。病院に行くたびに、このマジックにお目にかかれて幸せだ。「あの人、何してるのかな」と思われているかもしれないが…。

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