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2012年11月 4日 (日)

財務報告と非財務報告との統合報告書をめざす動き

 パナソニックやシャープなどが何千億円もの赤字決算を行なうという。人員整理でおおぜいの社員が退職や出向の片道切符をよぎなくされるのはいたましい限りだ。それはそれとして、株主や投資家はこうした巨額の損失計上を予想できただろうか。会社が発表する財務諸表やその他の開示情報に、そうした予想ができるような内容が盛り込まれていただろうか。

 3日(土)に中央大学大学院国際研究科が開いたセミナーは「ディスクロージャーの新展開―統合報告―」というテーマだった。財務情報に非財務情報(ガバナンス、環境などの情報)を統合する統合財務報告制度の形成と課題、および日本企業にとっての統合報告(Integrated Reporting)の意義をめぐって報告が行われた。

 そのうち、安井肇氏(あらた基礎研究所長)の講演で興味をかきたてられたのは、IIRC(国際統合報告評議会)のある報告だ。企業の財務報告書は世界の主要企業(S&P500)の企業価値(トレンドとしての株価)の83%を説明できたが、2009年にはわずか19%しか説明できなくなってしまった。いまや、企業価値を説明するには非財務情報による補充が必要になっているという。

 アニュアル・レポート(年次報告書)など現在の財務諸表は、加速化するイノベーション、外部環境変化への経営者の対処方針が詳らかでない。それに加え、経営戦略実現のプロセス、リスク認識およびそれらへのスタンスが不分明だと安井氏は指摘する。また、環境報告書など環境情報は企業のPRになったりし、他社との比較が乏しい。さらに1990年代以降、アニュアル・レポートが分厚くなり、読むのも、作るのも大変になっている。

 このため、企業はリスクマネーを投資家から供給してもらうための、また投資家・株主が適切に企業価値を評価できるための、そして、内外の従業員が企業価値創造過程に積極的に参加するための、仕掛けが必要である。それが統合報告だということのようだ。もちろん、統合報告にはIntegrated Management(統合経営)が欠かせない。

 従来の財務情報は法律などで規制され、義務化されているので、企業はもっぱらそれを作成することにとらわれ、その利用のされ具合や、時代の変化に伴う制度の見直しにはほとんど関心がなかった。しかし、統合報告の発想は、作り手の側ではなく、利用する投資家・株主などからの視点でディスクロージャーのありかたを時空の変化に即して改めようとするものである。IIRCは来年後半にフレームワークに関する第1次草案を提示するスケジュールだという。注目していきたい。

 

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