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2012年12月27日 (木)

安倍新内閣への期待と懸念

 安倍新内閣は27日、副大臣および政務官の顔ぶれを決めた。自民党を中心とする連立政権が年の暮れに始動した。首相は危機突破内閣と自称しており、経済再生を軸にやるぞという意気込みが感じられる。とはいえ、来年の参議院選挙までは重要な案件は国会にかけないという安倍氏の考えは、いささか有権者をなめているように思える。今回の衆議院選挙で、自民党は大きな争点に対して明確な方針を示すことを避け、それで大勝したことに味をしめているのだろうか。

 自民党は変わったと安倍氏は選挙期間中、叫び続けてきた。しかし、どう変わったのか、はっきりしない。派閥は弱体化したとはいえ、いまなお残っている。政府の方針に与党が異を唱えることができるのもかつてのままだ。また、党としての新人育成体制はないに等しく、各分野の専門家を育てることにもなる影の内閣も存在しなかった。したがって、大臣などに就く人たちのほとんどが官僚のてのひらで踊るだけ。変革の時代を政治家がリードしなかったら、この日本はどうなるのか、とても不安である。

 自民党の圧勝以降、株高・円安の傾向が続いている。長期デフレ、雇用問題など深刻な問題が多かったから、安倍首相の経済政策が国民にいささかなりとも明るい気持ちを抱かせた反映だろう。しかし、GDPの約2倍にも達する国の債務を無視して、赤字国債をいま以上に発行していったら、財政破綻の危険が高まる。防災などを理由に公共事業を増やしていったら、どうなるか。

 財務大臣は財政の健全化を主張する唯一の閣僚ポストだが、その座にある麻生副総理・財務相が赤字国債発行のタガをはずしてかまわないという趣旨の発言をした(翌日、安倍首相の指摘で発言を取り消した)。こんな内閣では先が思いやられる。増税に加え、限られた財政支出のワクの中で歳出効率化を推進し、規制撤廃・改革を徹底することが新政権の責務である。国民にいやがられるそうしたことをあえて言って実行していかなければ、この日本の経済社会は持たない。安倍政権にその認識と覚悟があるようにはみえない。

 TPPにせよ、尖閣問題にせよ、あるいは沖縄の基地移転、震災復興、原発・エネルギー問題にせよ、民主党政権がほとんど、ないし、ろくに解決の糸口すら見出せなかった宿題が残されている。自民党新政権はそれらについて選挙中、具体的な政策を示さなかった。しかし、早急に国全体として整合的な政策を打ち出さねば、自民党はまた国民に見放されるだろう。政権奪還の喜びに酔い痴れているときではない。

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2012年12月22日 (土)

後期高齢者の平均年間医療費は年齢(○○歳)万円ぐらい

 日本の社会では、年をとるにつれて医療費が増える。60歳以上だと、年齢が上がるのに伴って顕著に増加する。80歳以上では、平均すると、1人当たりの医療費はおおざっぱに言って年齢数に「万円」をつけたぐらいかかる。長寿命の高齢者が多いことはめでたいが、彼・彼女らのつかう医療費は、大半が現役世代の負担に支えられている。21日に厚生労働省が発表した資料からそうした実態が読み取れる。

 平成22年度の「年齢階級別1人当たり医療費、自己負担額及び保険料の比較(年額)」によると、60~64歳の1人当たり医療費は34.6万円、65~69歳が44.5万円、70~74歳60.9万円と年齢が上がるにつれて増えている。そして後期高齢者に当たる75~79歳では76.1万円、80~84歳89.1万円、85~89歳98.7万円。90~94歳だと106.7万円と大台を超している。95~99歳は115.2万円である。

 これに対し、保険料および自己負担は70~74歳が17.6万円、75~79歳が13.5万円、80~84歳14.3万円、85~89歳13.5万円などで、高齢者の支出はかかった医療費の何分の1かにすぎない。

 一方、35~39歳では11.3万円、40~44歳13.0万円など、現役世代の1人当たり医療費は少ない。彼らの保険料および自己負担は40~44歳が28.6万円など、相当な持ち出しになっている。したがって、高齢者が増え、かつ長生きすることは、若い世代が背負う重荷増につながる。若い人もいずれ年をとるが、少子化のもと、所得増が期待できなければ、保険料引き上げなどを迫られるだろう。

 平成22年度の国民医療費は37兆4202億円だった。前年度比3.9%増である。そのうち、後期高齢者医療費が12兆7213億円に達する。国民医療費の34.3%を占める。GDPの伸びよりはるかに高いペースで国民医療費が増加するのは、現役世代にとって耐えられない。医療を効率化して国民医療費を圧縮することは急務である。それは介護についても言えることだ。

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2012年12月21日 (金)

大地震などが想定されるのにオリンピック招致とは

 政府の地震調査委員会が21日、全国地震動予測地図の最新版を発表した。3.11の巨大地震が起きたあと、余震が相次ぎ、いまだにちょくちょく中程度の地震がある。日本列島の地下の構造が変わったため、最新版によると、これから関東地方で起きる地震の発生確率が軒並み上がっている。また、地震のあと、富士山の大規模な噴火が起きたら、東京あたりでも降灰によって何日間も交通ストップ、停電などになるかもしれない。

 ということは、首都圏で仕事をしたり生活したりしている人は首都直下型地震などの大規模な地震などの災害に直面するリスクをいまから覚悟しなければならない。ビルや住宅の倒壊、火事の発生・延焼などが起き、家は無事でも、上下水、電気、ガス、食料などの確保難に直面する可能性が相当に高い。

 地震国、日本の国民は地震や噴火などの天災は慣れっこになっているとはいえ、実際に起きたときの被害の規模は予想をはるかに超えるものと見込まれる。

 欧米先進国はじめ世界の多くの国では、地震のような、大地が揺らぐのを経験する機会が非常に少ない。そのため、もしも外国人が日本に来て強い地震に遭ったらただただ恐怖だろう。

 テレビのニュース報道によると、猪瀬東京都新知事が石原前知事のあとを受けてオリンピック招致に本腰を入れるという。オリンピックを開催できれば、それなりに大きい経済効果があるだろう。長期のデフレを考えれば、夢よもう一度というのもわからないではない。

 しかし、今後、巨大地震が首都圏を襲う可能性が高まったため、日本でのオリンピック開催には外国のオリンピック関係者や選手の心理的抵抗が強くなるものと思われる。

 したがって、おカネをやたらオリンピックの誘致活動に注ぎ込むことはよして、その分のおカネは災害に強い都市づくりに充てるのがいい。猪瀬知事さん、都行政において任期中に何を重視し、優先するか、冷静に、最適な判断をしてほしい。

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2012年12月19日 (水)

安倍新政権への懸念と、城島財務相の注文

 総選挙の結果についてのメディアや専門家の指摘はさておいて、個人的な感想を記すと――

 自民党の獲得議席数は多過ぎ。小選挙区制では、こうした結果になりやすい。絶対的に良い選挙制度というものはないのだから、小選挙区制を前提に、自民党は次の総選挙でも勝ち続けるために善政を行なうことを心がけてほしい。民主党は党綱領などをきちんと詰め、自民党に代われる主要政党に発展していってほしい。

 ところで、安倍自民党総裁(次期総理大臣に就こう)は力み過ぎの感じがする。潰瘍性大腸炎に特効薬ができたため、安倍さんは再び総理大臣に就くことができるが、この特効薬には副作用があるといううわさを聞いた。いわゆるハイ(躁)になるという。そういう色メガネで見ると、さもありなんとも思う。

 安倍さんがまず、デフレ脱却など経済対策に重点を置くというのはいい。しかし、デフレ脱却と経済成長のために、日銀の政策を変えさせることと、巨額の補正予算を早急に組むということについては、学者・エコノミストの間に対立した見解がある。強い成長志向および公共事業重視というのは、かつての自民党そのままである。自民党は変わったと安倍さんは言うが、どこが変わったのだろうか。何が変わったのだろうかと思う。麻生副総理兼財務相なんて冗談でしょう、お友達内閣をつくるつもりかと言いたい。

 城島財務相は落選が決まったあとの18日の記者会見で、次のように言っている。次期政権に対して、「財政規律というものをぎりぎり意識し、守りながらの金融政策、経済対策を求めたい」、「ゆめゆめそこをないがしろにしたような景気対策であってほしくない」、「規制緩和や、財政に頼らない景気対策というのもかなり真剣に検討してきているので、そういったことも合わせ技の中で下振れを回避することもやってほしい」と。

 民主党政権のもとでも財政健全化どころか財政悪化が進行した。それ以上に、自民党は財政破綻など念頭にもなさそうな大盤振る舞いを行なうようだ。それに対して日銀はどう動くだろうか。1%の物価上昇というターゲットを安倍新政権の要求に応じて2%に引き上げるのだろうか。新しい政権に注文をつけられたからといって、日銀が簡単に宗旨変えするようなら、日銀の首脳陣は物価の番人にもあたらない。単なるサラリーマン根性の持ち主にすぎないだろう。

 1990年代以降、自民党政権は、景気が悪かろうと回復しようと、国債依存の経済運営をしてきた。小泉政権のように財政健全化をめざすときもあったが、多くは安易な借金財政だった。それが民主党政権にも引き継がれ、今度、また、自民党は財政危機なんぞないような放漫財政に乗り出しそうな気配だ。一時的には株価も上がり、円安で輸出産業は一息つけるだろうが、規制の撤廃・緩和や財政の効率化、さらには既得権の打破など、本質的な改革に手を付けないと、脆弱な日本の経済・社会は衰退の一途をたどりかねない。安倍政権はそうした危険な道を歩もうとしているのではないか。 

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2012年12月16日 (日)

働く人を人として見ること

 日本の働く女性の中で、私が最も尊敬する西水美恵子さん(元世界銀行副総裁)が16日付け朝日新聞朝刊広告欄におけるインタビュー「仕事力 本気になりませんか? ❹」で、以下のような発言をしている――

 「合理的に、仕事の能力だけを提供させる組織は、人を幸せにできず、最終的には仕事の能率を下げる。」、「組織を率いるなら、社員だけ見ていては落第で、見る単位は社員とその家族なのです。」

 「会社は利益をあげる箱だと考えるのではなく、一緒に働く社員を始め、下請けさんや、問屋さん、運送屋さんなど関係のあるあらゆる会社とその社員を人として見るのです。管理職の人間がその視点を持つと、必ず部下が変わり、組織の大飛躍が始まる。」

 「誰もが幸せに仕事をできるように、組織のトップを始め全ての管理職は、社員とその家族への思いやりを、行動で見せるべきですね。」、「仕事は、あらゆる人間の幸せのためにある。その素朴な真実に本気であって欲しいと願います。」――

 ここで、当然、フクシマで働く労働者が思い浮かぶ。そんな理想的なことを言っていられないよ、という反論が聞こえてきそうだが、現代の日本社会の歪み、軋みは、西水さんが指摘する「人として見る」ことが、いかんせんできなくなっているからだろう。

 きょうの衆議院議員選挙の投票率は低いまま終わりそうだが、それも、この国をいまの政党や立候補者に任せても、国民の望む幸せが実現しそうにないという一部の人々のあきらめを映しているのかもしれない。

 ところで、先週、山田洋次監督が小津安二郎へのオマージュとして制作した映画「東京家族」を試写会で見た。私の解釈だと、「東京物語」のリメーク版である。この作品でも、老親が子供たちの暮らす東京にやってきて、身の置き所がないような感じになっていく。息子や娘の暮らしは仕事に追われ、時間に追われている。共同体的な絆、支え合いやゆとりを失った都会の競争社会が浮き彫りになる。

 選挙運動を見ても、政治には、そうした現代社会が抱える病理に対する問題意識はうかがえなかった。残念ながら。

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2012年12月15日 (土)

立候補者アンケートで、財政再建は不可能との回答がほとんど

 言論NPOが14日に発表した衆議院議員選挙立候補者アンケート「あなたは政治家として何を実現しますか」の結果は、立候補者のほとんどが現状では財政再建が不可能だと考えており、財政再建に尽力したいという立候補者はごく一部に限られることが明らかとなった。

 このアンケート結果の詳細は言論NPOのホームページに掲載されている。それによると、「先の一体改革に加え追加の計画がないと、財政再建は不可能」との回答は44.0%、「財政破たんは避けられない」42.1%で、立候補者の86.1%が財政再建の実現に否定的な見解を持っていることがわかる。

 2015年にプライマリーバランスの赤字を半減し、2020年に黒字化するという政府の目標について、「達成できる」との回答は12.8%しかない。

 財政再建で最も決め手となる政策は何かについては、「経済成長」46.9%、「その他」37.5%、「無駄の見直し」13.2%という。

 現状では財政再建が不可能という回答が圧倒的に多いにもかかわらず、現在の消費税引き上げ予定に対しては「引き上げ自体を見直すべき」57.8%、「経済状況を判断し、延期も検討するべき」21.2%、「景気後退が深刻化しない限り、引き上げるべき」19.0%と、消費税引き上げに否定的な回答が4分の3を占める。

 まことに憂慮すべきことだが、総選挙の立候補者の多くは、日本という国家が直面している財政危機を直視せず、経済成長で何とかなるのではと、”神風”が吹くのを期待しているとしか思えない。

 TPPへの交渉参加については、「参加すべき」28.6%、「参加すべきでない」62.2%となっている。多くの国が交渉に参加しているのに、日本は交渉にすら参加すべきでないという立候補者が6割強もいる。自民党の立候補者でTPP交渉に参加すべきという人はわずか8.1%しかいない。交渉し、国益に反するなら協定に参加しなければいいのにだ。グローバル化を否定的にしか見ない鎖国的発想が強いように思う。

 アンケートの回答者は立候補者1504人の半数強にあたる789人だという。480の議席を争う今回の総選挙は、日本が直面する危機の実相を見つめて国民に厳しい前途を覚悟してもらうべき重要な転換点である。それなのに、政党も政治家も、有権者に「こっちの水が甘いよ」といった、過去の選挙の延長でリップサービスをしているだけだ。恐るべき退廃である。日本の衰退を痛感する。

 こんな立候補者たちに、国民はどういう判断を選挙で示すのだろうか。

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2012年12月14日 (金)

米FRBの新たな金融緩和策

 米国のFRB(連邦準備制度理事会)が実質上のゼロ金利政策に失業率の目標を加えた。失業率が6.5%程度に落ち着くまで、超低金利政策を続けるというもの。さらに、ツイスト・オペ(短期国債を売り、長期国債を買う)が今月で終了したあとは、長期国債を従来通り毎月450億ドル購入するうえ、9月から始めたMBS(住宅ローン担保証券)の毎月400億ドル購入は続けるという。合わせて毎月850億ドルもの資産購入となる。

 こうした超低金利政策は、1~2年先の物価上昇率見通しが2.5%を超えないことが条件となっている。

 財政の崖という問題があるとはいえ、中央銀行がここまでバランスシートを膨らまして問題が起きないのか、ど素人から見ると不安がある。米国経済は剣ヶ峰に立たされているという表れだろうか。

 こういう米国の金融緩和策が日本経済にどのような影響を及ぼすのか。日本銀行も追加的な緩和を検討するのではないかという観測記事がさっそく出ている。総選挙の結果次第では、米国の緩和策に追随する可能性もかなりある。

 しかし、日本の政府が国債の増発で公共事業を増やすといった形のデフレ対策に邁進し、日銀が国債を大量に抱えるというのは、財政破たんのリスクを高める。それに、日本銀行はこれまで大量の資金供給を行なってきているが、資金需要は乏しい。したがって、規制の撤廃・緩和などで経済構造を変えることが先だという見方がある。

 いずれにせよ、今回のFRBの新たな緩和策は、日本の総選挙の争点にも関係があるだけに、有権者の投票行動に多少なりとも影響するだろう。

 米国はドルが基軸通貨なので、お札の輪転機を自由に回せる国だ。日本はそういう国ではない。そういうことも考える必要がありそうだ。

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2012年12月11日 (火)

旅の思い出3つ

 最近、ちょっとした旅行に出かけた。その断片的な感想を――

・安川電機のロボット組立工場を見学した。組み立てを行なうロボット、塗装を行なうロボット…というように、ロボットはいろいろ人の手に代わって作業する。見学した組み立て工場では、ロボットが重いものを持って振り回し続ける耐久テストの工程があった。10台以上のロボットが皆、同じような運動をしているが、獣がいっせいにヒューンヒューンと鳴いているような音がしていた。機械が音を立てるのは珍しくもないが、あたかも鳴いているように聞こえるのは初めての経験だった。

 ロボットが人間の手のように自在に動いて作業できるようになったのは近年のことらしい。工場では、2台のロボットが連携して加工・組み立ての作業を行なう実演も見た。また、ロボットのカメラ部分が被工作物の位置をきちんと見極めるために接近するさまは、あたかも人間がのぞくようなしぐさとそっくりの感じがした。工場の玄関口には、太鼓をたたくロボットが展示してあり、実際に2台のロボットが巧みに1台の太鼓を向き合って打ち鳴らす実演をしてくれた。

 中国の習近平総書記が来日したときに、唯一寄った工場だといわれる。それだけ、最新の技術がこの工場にはあるということだろう。

・TOTOの本社工場で便器やウオッシュレットの陶器の部分の製造工程を見学した。陶土などを練って形をつくり、1日かけて焼き上がると、縮んで完成品になる。しかし、不良率は5~10%あるという。厳しい検査で、我々のような素人が見てもわからない、ちょっとした不良個所でもアウトの判定がくだるらしい。

 TOTO歴史資料館も見学したが、そこでもらった『TOTO 語り継いでいきたい「先人の言葉」』の中に、「1個の不良(品)でも、そのユーザーには100パーセント」という第5代社長、江副孫右衛門の言葉がある。

 初代社長の大倉和親は第2代社長に送った書簡の中で、「良品の供給、需要家の満足が掴むべき実体です。此の実体を握り得れば利益・報酬として影が映ります。」と言っている。

 確かに、TOTOの「先人の言葉」は含蓄があり、読むに値する。ただ、時代が下るにつれて、社長の言葉も多様化している。競争が熾烈化し、それに伴い、社員への要求も厳しくなっている。でも、創業の精神は不良品率に見るように生きているのだと思った。

・安芸の宮島にある厳島神社を初めて訪れた。平の清盛、豊臣秀吉ら歴史上の大人物の足跡が残っているのに、一度も行く機会がなかったから、旅のスケジュールに入れた。神社に着いて、その中心部から大鳥居を見たとき、そのはるか向こうに奇妙な格好をした白っぽい建物があるのが目に入った。これは異なものである。どう見ても厳島神社と大鳥居との直線上に意識的に造った建物としか思えない。

 ネットで調べたら、新興宗教の建物だという。国宝の価値をあのような形で下げる行為を許してしまったことを残念に思う。歴史的建造物の景観を妨げる建造物を簡単に認めない社会に日本が進化することがとても大事なことだと思う。それが先進国であろう。

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2012年12月 7日 (金)

総選挙で避けている論点

 猪木武徳著『経済学に何ができるか』(2012年10月刊)の「第1章 税と国債」にこういうくだりがある。「国民が公共サービスを受ける権利のみを主張し、その財源となる税金を納める義務を怠れば国家は破綻する。」、「納税なくして立国はない。」

 そして、「国債の累増を批判しつつ、同時に増税反対を叫ぶのは、両立しえない「二重思考」だと認めることが必要」だとしている。

 また、「第2章 中央銀行の責任」では、「現代ではデフレ時の金融政策の成長促進効果が過大評価されてはいないだろうか。」、「金融政策が常に(市中で資金がダブついているときでも)成長に対して強い威力を発揮すると信じ込んでいる人は、成長政策が行き詰まると、王子を叱れない教師が「王子の学友」を身代わりにムチ打つように、中央銀行の不作為を責めるのである。」とも述べている。

 総選挙における立候補者・政党の発言や公約を読んだり、聞いたりしていると、上記のように同書が批判している部分にぴったり合うところがある。消費税増税反対を声高に叫ぶ候補者・政党が、同時に福祉政策・社会保障の充実をうたっていたりする。デフレ脱却のため国債をもっと多く発行し、日銀にこれまでよりも大量に国債を取得させるという政党総裁もいる。いずれも、政治家としては相当ひどい視野狭窄で、日本の将来を危うくするおそれが多分にある。

 今回の総選挙において、真正面から提起されていないが極めて重要な視点は、日本国が縮小する過程に入り、社会のさまざまなシステムをそれに適応させていかなければならないということだ。誰もが実感する通り、高齢化は年々顕著になっており、高齢者がまともに暮らすことすら容易でなくなっている。医療・介護などのニーズは増えるばかりだ。一方で、若い世代の就業や生活は厳しい状況にあり、少子化も進行している。

 経済活動も、グローバル競争で後れをとり、国内の製造業が占める地位は低下の一途をたどっている。農業など第一次産業は高齢者の引退で就業者が減り続けている。TPPうんぬん以前に従事者が少なくなり、このままでは休耕田だらけになりそうだ。

 笹子トンネルの天井板崩落で高速道路のチェックが始まったが、高度成長時代およびそれ以降にたくさんつくられた道路、橋梁、ダム、上下水道、市民会館など広義のインフラが老朽化している。このため、それらの維持補修や取り替えのニーズは増える一方である。

 脱原発のトレンドはよしとして、原発廃止に伴う諸費用のねん出も膨大なものとなろう。このように、歳出の需要は膨むものの、国家財政はそれらに応じることは不可能である。

 したがって、すでに積み上がった国・自治体の巨大な債務を考えると、増税と、歳出のムダの徹底的な排除、既得権擁護の是正が目の前の緊急な課題である。例えば、医療においては、カルテの電子化、医療機関間での検査データ共用、薬局の点数削減などが不可欠だ。高齢者の自己負担が低すぎるのも改めるべきである。農業では、農地の売買自由や株式会社の参入が求められる。

 そうした荒療治をしないと、明るい未来展望は拓けない。今度の総選挙でどのような政権ができるにせよ、残念ながら、過去の成長の幻想にとらわれたものにとどまる。

 

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