« 曽野綾子氏の『働きたくない者は、食べてはならない』 | トップページ | 日銀総裁講演でよくわからなかったこと »

2013年1月22日 (火)

アベノミクス報道一辺倒のメディアに無視された財政審報告

 財務省の財政制度等審議会が1月21日にまとめ、発表した「平成25年度予算編成に向けた考え方」は「我が国の財政状況は年々危機の度合いを強めている」、「このまま公債残高の累増を放置し、日本経済にとって最大のリスクと言える財政破綻を現実のものにしてはならない」と危機感を募らせている。

 政権をとった自民党がアベノミクスで国の財政支出を膨らませる方向に進みだした。日銀も2%の物価上昇を目標に掲げ、さらなる金融緩和に踏み出す。こうした安倍内閣の財政政策を実務で担う財務省は増大する歳出を賄うため、相変わらずの大量赤字国債発行など歳入拡大のやりくりをしている。だが、同時に、同省は、それが財政破綻に直結しかねないことを十分に承知しているから、審議会の答申という形で、政治や国民に対して、財政危機の実態と、その原因および対策を訴えてきている。

 消費税の2段階引き上げが実現するとしても、「2020年度以降における公債等残高の対GDP比は200%を超えて増加し続けてしまう見込み」だという。このため、巨額の財政赤字が恒常化した財政の現状を国民はいま一度直視すべきだとしている。「負担以上のサービスを享受しつつ、大きな負担を将来世代に先送りし続けている現実から目を逸らさずに責任ある議論を行い、具体的な結論を積み重ねていくことが求められている」と。

 2012年度の一般会計予算は90.3兆円。国債の元利払いに21.9兆円充てるので、残る実質的な政策経費は68.4兆円である。そのうち、約4割が社会保障関係費、約4分の1が地方交付税交付金である。厚生労働省および総務省の所管する歳出だけで、政策経費のおよそ3分の2を占めている。きわめて硬直的な歳出構造になっている。しかも社会保障関係費だけで毎年1兆円も増えるというから、どう見てもまともな財政運営になっていない。

 社会保障関係費および地方交付税交付金について詳しく問題点を挙げているほか、他の主要な歳出分野についても、審議会報告は財政再建に向けてそれらの問題点を列記している。

 2010年6月のG20トロントサミットの共同宣言で、日本政府は、遅くとも2015年度までに国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字の対GDP比を2010年度の水準から半減する、そして、遅くても2020年度までに黒字化すると約束した。

 アベノミクスはそれを一応踏まえ、成長戦略など3本の矢で達成しようとしているのだろうが、その実現には、疑問符が付く。行き過ぎた社会保障給付の是正、言い換えれば社会保障の給付水準を受益者の負担に見合った社会保障の給付水準に抑えていくこと、医療、介護などの制度の効率化が筆頭に挙げられるが、安倍政権は70~74歳の高齢者の保険医療費自己負担を元の2割に戻すことさえできない。

 審議会報告では、消費税で社会保障の公費負担をすべて賄うには、10%に上げた消費税収では足りず、17兆円をさらなる消費税引き上げで確保する必要があると指摘している。それは7%ぐらいの上乗せに相当する。それを回避して財政健全化を進めるには、報告で挙げられている改革案を着実に実行することが重要ではなかろうか。先進国で最も財政危機が進んだ日本において、派手なアベノミクスは中長期的には、却って日本の財政危機を加速するのではないかと心配だ。 

|

« 曽野綾子氏の『働きたくない者は、食べてはならない』 | トップページ | 日銀総裁講演でよくわからなかったこと »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/56599036

この記事へのトラックバック一覧です: アベノミクス報道一辺倒のメディアに無視された財政審報告:

« 曽野綾子氏の『働きたくない者は、食べてはならない』 | トップページ | 日銀総裁講演でよくわからなかったこと »