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2013年6月11日 (火)

夕張で奮闘した村上医師の『医療にたかるな』

 2006年6月に北海道夕張市の財政が破たんした。同年9月15日のこのブログで、破綻した夕張市について書いた。「どうしてここまで借金が膨らんだのか。議会、監査委員、住民の誰もチェックしなかったのか。知っていて黙していたのか。金融機関は際限なく貸し続けるつもりだったのか。また北海道庁の役人は本当に知らなかったのか。知っていたとしたら、なぜ放置していたのか。総務省の担当者も知らなかったのか。知っていても放置していたのか。知らなかったとしたら、なぜ気付かなかったのか。」と。

 その後、夕張市の再建について断片的に新聞が報道しているのをフォローしていただけだった。したがって、村上智彦著『医療にたかるな』(新潮新書、2013年3月)を読んで納得することが多々あった。村上医師は、夕張市が財政破綻したあとの、市の医療を再生させるために獅子奮迅の働きをした。そのいきさつを本書で読み、夕張市だけに限らない地方の問題点を教わったように思う。

 うなづいた点を私なりに解釈して紹介すると――

・石炭全盛期には、夕張の労働者たちは会社丸抱えで家賃、暖房費、光熱費、水道代、映画館入場券、医療費…皆タダだった。それがたかり体質を培ってきて、石炭産業が斜陽化しても、既得権益を守りたいという人が多い。いまだに市営住宅の家賃を払っていない人が43%(3億円)もいる。治療費未払いも2億円あまりたまっている。

・夕張市の市民は破綻後の市議会選挙で、破綻の責任を負うべき前職の市議9人のうち6人を再選した。しかも、市は年9億円の税収しかないのに、同規模の自治体の予算の2~3倍にあたる120億円の予算を組んだ。市役所職員の給与も当初は3割減と報道されたが、その後、もとに戻しつつある。職員の退職金は優先的に支払われており、国からの地域医療再生臨時特例交付金までが退職金支払いなどに充てられている。

・自治体行政は自らの仕事と責任を回避することが絶対優先する。また、役所や公的医療機関の労働組合は、合理化や新しいサービスを提供しようとすることに強硬に反対する。住民の暮らしや命を守ると言って、その実、組合組織を守ることしか考えていない。破綻前、夕張市の職員数は人口当たりでみて、日本の市役所平均の4倍近くもいて、年収もバカ高かった。

〔夕張市は破綻当時、他地域から同情を集めたりしていたが、実態は、ろくに反省していなかったということのようだ。〕

・官、民のいかんを問わず、医療機関で絶対にやっていけないのは、労働組合運動に力をいれること、そして年功序列で給与をあげること。頑張った人が報われるようにしないと、医療機関としての公的役割が果たせなくなる。それに、職人集団だから成果主義がなじみやすい。

・北欧には、「負担なくして受益なし」という常識が根付いていおり、高齢化による社会保障費の増大が見込まれるとわかった時点で増税の議論が始まり、増税が実行される。

・北欧では、高齢者、障害者も自分でできることは何でもやる。上げ膳据え膳で介護スタッフに身の回りの世話をさせるようなことは許されない。

・モンスター・ペイシェントは、権利意識が強く、常識がなく、自己中心的、不安を訴えるという形で医者を理不尽に攻撃する。病院、学校、役所などはこうしたモンスターに弱く、いいように振り回される。しかし、これには毅然とした対応をすべきだ。

・夕張市の再生には、市の住民が愛着のある自分の地域のために立ち上がるしか道はない。医療に関して言えば、日本はこれからは予防医療、在宅医療、地域包括ケアによる「ささえる医療」が必要である。それにはさまざまなつながりが大きな役割を果たす。

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