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2013年8月31日 (土)

リーダー三流の日本を再確認

 「吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」という副題が付いたノンフィクション『死の淵を見た男』を読んだ。2012年12月発刊なので、もう9ヵ月も経っているが、久しぶりにすぐれたノンフィクションにお目にかかったような気がする。

 2年半前、東京電力福島第一原子力発電所の1~4号機が大地震・津波で全電源を失い、冷却不能に陥った。そのとき、吉田昌郎所長や原子炉の操作・運転などの業務にあたる現場の人々が、格納容器爆発など最悪の事態を回避するために死を覚悟して注水などの作業をした。そこに焦点を当て、日本という国家が死の淵に立たされたが、彼らの懸命の努力により、ラッキーにもかろうじて踏み止まり、国が救われたという経緯を描写したのが同書である。

 彼ら現場がいくら頑張っても、最悪の事態を避けられなかったという可能性もあった。その場合には、日本国は東北・関東などが放射能飛散で人間が近寄れなくなっただろう。日本が壊滅するに等しい。それほどに過酷な原発事故だった。このことはあまり国民に知られていないが、脳裏に刻み込むべき重大な事実である。

 原発現場の人たちの活動を支えた外部の人たちのこと、例えば、自衛隊などの懸命な救援も本書はきちんと描いている。また、菅総理大臣ら時の政府要人や東京電力の本社のお偉方などのリーダーシップ欠如についても触れているが、著者、門田隆将氏の眼は、日本企業を支える現場の人たちに向けられている。東電と言えば、いまや十把一絡げで悪者扱いされる傾向があるが、現場で働く人たちの中に、危機に際して「私」より「仕事」に殉じようとする人が多々いたことには感動する。

 いま、日本政府は、安倍首相が先頭に立って、日本の原発輸出を推進している。しかし、本書を読むと、東電や系列会社の従業員が放射能汚染を覚悟して、原子炉の暴走を食い止めようと命がけで作業したから、かろうじて国が救われたのであり、政治家や企業トップはそのことがわかっているのかと疑う。それに、いまだに、放射能に汚染された冷却水の処理が始末におえず、肝心の廃炉作業もどうしてよいかわからない状態である。このように、自国においてさえ、原発を満足に制御できていないのである。このことを安倍首相ら、この国の政官業のリーダーたちは忘れているのではないか。

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2013年8月30日 (金)

「債務管理リポート2013」に見る日本国の危機

 ことしも財務省が国・地方の債務実態を表す「債務管理リポート」を発表した。酷暑のさなかに読むとカッとなるような日本国の債務膨張の実態が示されている。おりから予算要求などが行われており、財政破綻のおそれなど、どこ吹く風といわんばかりに、霞が関の各省も、与党の自民党も、本年度予算をはるかに上回る2014年度予算要求を当たり前のようにつくっている。一体どうなっているのか。これこそ日本国の危機ではないか。

 債務管理リポートの第Ⅲ編資料編から危機の実態を示すデータを若干、紹介しよう。国際比較でみた対GDP債務残高は、日本が先進国の中で一貫して右上がり傾向で、2013年度末見込みは224%である。GDPの2.24倍の”借金”を抱えていると解したらよい。日本に次いで多いイタリアが130%である。

 一般政府の金融資産・負債残高表(2012年12月末、速報)は、資産が493.7兆円に対し、負債は1112.3兆円。中央政府では、資産216.3兆円に対し、負債は926.3兆円と債務が圧倒的に多い。また、国(一般会計・特別会計)の貸借対照表(2011年度末)を見ると、資産628.9兆円に対し、負債は1088.2兆円となっている。

 普通国債の残高の平均残存期間は年々延びている。2003年度が5年ちょうど、それが2012年度には7年3ヵ月である。普通国債残高の残存期間別構成をみると、2012年度末で、20年超が6.7%、10年超~20年以下が15.6%となっている。2008年度末には20年超が2.7%にすぎなかった。10年超20年以下も14.8%だった。財務省が財政破綻を先延ばししようとしている表れだ。

 いまの予算の後年度への影響を試算したデータが載っている。そのうちの試算「A-1」(歳出自然体・経済成長3%)をもとに、金利が2%上がった場合の国債費増は、2014年度で2.0兆円、2015年度4.9兆円、2016年度8.2兆円に達する。国債費総額は、2014年度25.9兆円、2015年度31.1兆円、2016年度36.9兆円へと増大する。税収全体で50~60兆円程度しかないのだから、税収の半分以上が国債費に回るという事態は財政破綻に直結する。

 まず、債務管理リポートを霞が関の上級官僚や自民党の国会議員に読ませ、正しい現状認識を持ってもらうことこそ肝要である。

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2013年8月27日 (火)

医療費増の裏に”患者紹介ビジネス”とは

 朝日新聞が医療保険制度を悪用する”患者紹介ビジネス”を大きく報じている。訪問診療の診療報酬が外来の15倍と高い点に目をつけ、患者をまとめて医師に紹介した場合、診療報酬の2割とかを医師から受け取るというもの。「医は算術」などと昔から言われてきたが、開業医などの欲につけこんで、患者紹介ビジネスを生み出した連中の悪知恵には感心(?)する。

 いまの日本の医療保険制度にはさまざまな問題点がある。まず過剰診療・過剰投薬である。国が運営する医療保険は、ヤブ医者であろうと、名医であろうと、基本的に同一料金であり、検査づけなどで診療報酬を増やそうとする傾向がある。また、高齢者は費用自己負担が1割とか、生活保護を受けている家庭は無料だとかのため、安易に医者に行くことになりやすい。厚生労働省は、医師がカネもうけに走ることはないという性善説に立っているので、医療保険制度の悪用を防ぐ仕組みづくりに必死に取り組もうとはしない。カルテの電子化がいまもって徹底しないのは、それを示すいい例である。

 グローバル化で、日本国内の企業競争は激しく、雇用情勢も厳しい。このため、振り込め詐欺などのように、悪質な犯罪が増えている。政府が震災復興などに投じている国費も、悪質な事業者の食いものになったりしている。巨額の医療保険を悪用する行為が増えるのも、厳しい経済・雇用事情を反映したものと言える。したがって、社会保障給付がGDPの4分の1にまで膨らみ、このままでは財政破綻が近いという現実を直視して、抜本的な社会保障制度改革を推進する必要がある。医療保険制度の改革もその重要な柱である。

 日本の医療保険は誰でも医療を受けられる制度で、世界に誇れるものといわれる。しかし、医療保険に投ずる国の歳出は増え続け、財政赤字増大の大きな要因となっている。このため、現在の医療保険制度を根本から洗い直して、医療関係の歳出を縮減することも重要な課題となっている。21日に安倍内閣が閣議決定した社会保障プログラム法案は、医療に関しても給付抑制の中身が乏しい。法案がまとまったのは、社会保障制度改革の初めの一歩とみなすことができなくはないが、内容から見ると、財政破綻の危機はさらに深まる。

 

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2013年8月24日 (土)

中国の地方政府による農地収用の背景

 中国の農村に詳しい阿古智子東大大学院准教授が、地方政府の農地収用と財政運営について詳しく述べている記録を読んだ。日本記者クラブで7月11日に行なわれた会見である。興味深いので、紹介する。

 1994年の分税制施行により、企業や個人が政府に収用された土地の使用権を得るには、土地使用権譲渡益や各種の税金を地方政府に納めねばならないことになった。もともと、農村部の土地は村などの集団が所有し、農民は土地経営請負権を持つ。しかし、公共の目的があれば、政府は収用によって集団所有から国有に変更する手続きをとり、非農業用地として開発できる。そういうことになった。

 この分税制施行によって、地方政府は農地を非農地に転用し始め、民間への土地使用権譲渡益など、土地・不動産関連の収入を増やした。この土地・不動産関連収入はいまや地方財源の4割を超えるほどになっているという。

 このように農地の非農地化を推進する地方政府はシャドーバンキングを通じて借金し、自らも高層ビルなどのハコ物をどんどんつくってきた。また、農民の中には、自ら、直接、企業と組んだりして非農地化を行ない、高層ビルなどを建設。レンタル料みたいなものを受け取るというケースもある。

 ところで、都市部の土地収用制度では、土地使用権譲渡金をその地の政府に納めることになっていない。したがって、農村部の地方政府で起きているようなことはないという。

 地方政府の土地収用に伴う補償金は少ない。土地を召し上げられた農民は都市部のスラム街に住むとか、売春をするとか、追い込まれていくという。

 中国の戸籍制度は農村と都市とで分かれており、都市部にいる農民工などは全体で2億人以上に達する。

 湖北省の農村の平均的収入を得ている農民だと、上海に移住すれば、ほぼ全員が生活保護の対象になるという。それほどに都市住民と農村のそれとは格差が大きい。容易ならぬ開きである。都市戸籍と農村戸籍とがいつまでも続く背景には、こうした事情があるようだ。

 

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2013年8月20日 (火)

ほんと高齢者にはこたえる猛暑です

 東京都内で暮らしているが、朝、夕もまだ30度を上回る暑い日々である。真夜中もそうだ。もちろん、最も暑い日に比べれば、秋の気配をわずかながらも感じるように、少し気温は下がってきている。こんなに温度計を見るようになったのは、昨年あたりからのような気がする。

 猛暑のピーク時に風邪を引いた。その日、家ではショートパンツだったので、そのまま近所のスマホ・ケータイの店に入ったら、小一時間の間に足からガンガン身体が冷えてきた。また、夕方出かけたとき、ジャケットを持たず、長袖のシャツで大きなビルに入ったので、2時間余いるうちに身体がすっかり冷え切った。あと、皆で飲みに行ったときは、もうビールに手が出ず、日本酒の熱燗にした。その半日で風邪を引いたのである。

 それから約10日間、少しずつよくなってはいるが、いまだに完治しない。医者にもらった薬が初歩的な処方薬だったせいもあるだろう。夏風邪にかかった年寄りは回復に時間がかかることを身をもって感じた。

 短い時間、近所を散歩したり、スーパーなどで買い物をしたりした。何かの店に入れば、どこも空調が効いていてかなり温度が低いような気がした。こちらが寒がりになっているせいもあるだろう。また、近所にゲームセンターがあるが、さまざまなゲーム機が多数あり、多くはピカピカとカラフルな光を発している。音も騒がしい。たまたまのぞいたときは、ほとんど客がいなかった。それなのに、たくさんのゲーム機がピカピカと光を出している。3.11以降、夏場の電力供給がきつくなっていることを思うと、エネルギーの節減ができないものか、と考えてしまう。

 日本ではお盆休みを中心に会社もそろって休む習慣がある。猛暑の時期に、職場がいっせいに休むのを徹底させたらいいのではないか。もちろん、スーパーなど生活必需品を扱うところとか、交通機関、金融機関などは一斉に休むのは避けてほしいが、間引き運転のように、開業時間を短くする工夫をしたらいい。

 熱中症で亡くなる人たちが増えている。災害や水不足など、地球温暖化が引き起こしている気候変動の影響は今後、徐々に大きくなるだろう。暮らしや仕事などへの波及も無視できない。10年、20年、半世紀などという物差しで人類を襲う自然災害などをまじめに考えて手を打つべき時である。戦争、内乱などによって良い未来が開けるとは思われない。

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2013年8月14日 (水)

未帰還の海外戦没者遺骨は約113万柱

 最近、映画「風立ちぬ」を観た。宮崎駿の作品である。”ゼロ戦”を設計した堀越二郎の話と、堀辰雄の小説『風立ちぬ』とを混ぜ合わせて作り上げた作品である。その解説については、冷泉彰彦氏のブログがすぐれている。私が物足りないと感じたのは、戦争の悲惨な面がほとんど描かれていなかった点である。

 8月15日を前にして、厚生労働省が「戦没者慰霊事業の実施状況」を発表した。先の大戦により、海外で戦没した日本人は約240万人だった。そのうち、未帰還の遺骨は約113万柱だという。半分近くが現地に眠っている。

 その内訳を見ると、海に没したままが約30万柱、相手国の事情により帰還困難が約23万柱、その他が約60万柱とのこと。戦後68年、いまなお帰還することなく、外国のどこかで眠っている英霊がこんなにも沢山いるのである。

 国・地域別にみると、フィリピンでは51.8万人が戦没し、いまなお約37万柱が未帰還である。このほか、中国本土、中部太平洋、東部ニューギニア、ミャンマー、ロシアなど、日本が侵攻した、ないし攻められた広い地域に、多数の英霊がいまなお横たわっている。

 戦前に生まれ、あの戦争を肌で実感した世代は少なくなった。それほどの歳月が過ぎているにもかかわらず、未帰還遺骨の収集・帰還は終わらない。英霊の御霊を慰めるべく、政府は遺骨の収集・帰還に年間13億円を投じている。旧満州の中国・東北部では、日本人約24.5万人が戦没したが、未帰還遺骨は実に約20.6万柱にのぼる。現地の事情で帰還が進まないというが、現地側との合意を得るために日本政府はもっと努力する必要があるだろう。

 戦争の傷跡は、日本は無論のこと、関わった国・地域にも消えずに残っている。最近の日韓関係のこじれにもみられるように、かつての戦争や植民地支配を簡単に単なる過去の出来事に終わらせてはくれない。それほどに歴史は長く深い傷を私たちに刻み込んだのである。

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2013年8月13日 (火)

麻生発言はもうすんだ話?

 石角完爾著『ユダヤの「生き延びる智慧」に学べ~浮かれる日本への警鐘』を読んだ。日本人として生まれ、50歳を過ぎてからユダヤ教に惹かれ、ユダヤ人になった著者は、日本では国際弁護士として知られる。

 同書は、日本について「何と言っても世界において立ち回りが下手くそである」、「日本はもっとしたたかにならなくてはならない。もっとずる賢くならなければならない。狡猾さこそは、これからの日本人に求められるものである」と言っている。

 領土問題などの外交にせよ、国際的なビジネス取引にせよ、「ニコニコしながら相手を油断させて気持ち良くさせ、裏でしっかりと相手が気づかない間に自分の利益になるように仕組みを作る」ことこそが日本に欠けている大事な点だと指摘している。

 人に勧められて読んでみたのだが、内向きな日本が抱える問題点を指摘していて、教わることが多かった。

 そのついでに、石角氏のWebをのぞいたら、今月4日に「麻生太郎副総理への手紙」と題する文章を載せているのを知った。それによると、麻生副総理に対し、「ナチズムとアドルフ・ヒトラーの礼讃者だとは知らなかった」、「ナチズムの礼讃者として次のG20に出席する資格があると思うか」、「直ちに公的な地位から退くことを勧める」という趣旨である。

 石角氏はユダヤ人だから、麻生発言に敏感に反応したのだろうという見方もできなくはない。だが、発言を取り消したからといって問題は解消したという日本の政府・与党の態度は、国際的に容認されないだろう。麻生発言が大きく国益を害したのに、その責任を徹底的に追及しようとしない日本のメディアもまた、日本の危機の深化に手を貸しているのではないかと思う。

 

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2013年8月11日 (日)

国債+借入金+政府短期証券=1000兆円突破

 財務省が9日発表した「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」(6月末)は1008兆6281億円と1000兆円の大台を突破した。GDPの約2倍、国民1人当たり800万円弱という金額である。日本の政府はこの1000兆円という大台を割り込んで、国の債務を削減していく財政健全化の道を歩むのか。それとも、財政膨張路線を続け、その結果、インフレを加速して、国民の貯蓄を簒奪し、国民経済を壊すのか。大きな岐路に立っていると思う。

 知人のメールを読んだら、「敗戦のどん底から立ち直った日本人のことだから、ギリシャ化する前になんとかするだろう。希望的観測かもしれないが」と書いてある。そうあってほしい。だが、誰が「なんとかするだろう」か。いまの安倍政権が進めている”アベノミクス”がそれにあたるのならうれしいが、期待をかけていいものか、どうかきわめて疑わしい。

 例年のように、ことしの8月前半も太平洋戦争をめぐるテレビ・新聞の報道が盛んに行われている。報道のテーマや内容はそれぞれ異なるが、日本国内に引き付けていえば、さまざまな分野での戦争への歩みをその当時の国民が必死になって止めることがなかったことを知る。一つひとつ、やむをえないと順応していった結果があの戦争であり、敗戦であった。さらに言えば、現在の中国や韓国との緊張関係も、それがもととなっている。

 財政破綻のリスクが現実化する可能性が高まる一方の今日、私たちは将来世代のため、財政再建に本気で取り組むように政府、政党に強く要求しなければならない。過ちを繰り返さないために。

 

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2013年8月 8日 (木)

ケータイ・スマホの営業政策に疑問

 4年間使っていたケータイ電話が故障したので、同じ通信会社の同様な機能の機種に買い替えた。買い替えでは機種変更に伴う手数料を2千円余り要求された。店内の広告を見ると、他社の機種からこの通信会社の機種に乗り換えると、毎月の基本料1000円弱が2年間タダだという。ざっと2万4千円近い。長い間使ってくれた顧客からは余計にカネをとり、新たな乗り換え客には大サービスをする、これは商売の基本に反するのではないか。

 ケータイ・スマホの販売店が駅の周りに5軒ほどあるように、ケータイ・スマホの商売は非常にもうかるらしい。通信会社にとっては、設備費用はほぼ同じだから、顧客が増え、売り上げが大きくなれば、急速に利益が伸びる。したがって、普及率が頭打ちになると、他社から客を奪い取ることが利益を増やす早道となる。そうした商売のメカニズムは理解するはする。だが、顧客が長く同一機器を使い続けることは資源・エネルギー・環境の面で大事だし、また、お客が同じ通信会社の機器に買い換えてくれることに感謝することも商売のイロハではないかと思う。

 ケータイ・スマホが技術革新の担い手の1つであり、世界を変えつつあることは間違いない。と共に、さまざまな犯罪に利用されたり、子供や若者にとって時間を忘れ、没頭するような麻薬的存在でもある。通勤電車で座っている人のほとんどがうつむき加減に画面を見ている様子は異様だ。そのおおもとである通信会社は、自らの事業が社会にもたらす影響をきちんと踏まえ、マイナス面を最小化する努力をすべきである。それは企業の社会的責任(CSR)でもある。

 付け加えれば、こんなにおいしい商売の源泉である電波の使用権を、政府はなぜ入札などで高く売ろうとしないのか。国家財政が危機的な状態だから、政府は少しでもかせぐ必要がある。電波使用料が高ければ、利用者の費用負担も増えるだろうが、それで行き過ぎたケータイ・スマホ依存症がいささかでもおさまれば、結構なことである。

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原発事故の終息まで電力自由化は慎重に

 東京電力福島第一原子力発電所の建屋近くの地下水が放射能に汚染され、大量に海に流出しているという。これまで汚染水を地上タンクに貯めてきたが、それ以外に海に流れる汚染水がたくさんあることが明らかになったわけである。

 このため、地下水が原発施設に流れ込まないように特殊な壁をつくることが検討されているようだ。朝日新聞によると、工事費は数百億円規模であり、国が費用の一部を負担することにしたという。

 3.11のフクシマ原発事故から2年半近いが、放射能汚染による被害からの回復や損害賠償がいくらになるか、炉心溶融を起こした原発を撤去し終えるのにいくらかかるか、運転再開が認められず廃炉にした場合の損失がいくらになるか、などの費用はある程度予測できようが、それらの費用を誰がどれだけ負担するかは全くわからない。

 目下、事故を起こした張本人、つまり東京電力が費用を負担するのが当然で、東電が背負いきれないとみられる費用を国がやむをえず肩代わりするしかない、というのが報道などで読み取れる方向である。

 しかし、目下、東電は抱える原発が多く、かつ、それらの事故の後始末、および運転再開の見通しが厳しいことから、その発電コストは他社よりも高くならざるをえない。電気料金も9電力のなかで一番高くなっている。

 そうした非常時に、電力の自由化が行われつつある。そして、中部電力が東電管内の三菱系の独立系電力会社を買収し、東電管内で販売競争をしかけるという。

 ということになれば、安く電力を売る独立系(ないし背後の中部電力)から電力を購入する顧客が出てくるのは当然だ。その結果、東電は顧客が減り、電力料金をさらに上げざるをえなくなる。そして、顧客が逃げる、という悪循環に陥る。”フクシマ”の後始末が終わらない中で、電力自由化するのは、東電のさらなる経営悪化を招き、国家管理に導く。要するに、税金の投入に至る。

 9電力体制は一蓮托生の仕組みだったはず。原発の導入も、国の原子力政策をバックに進めてきた。したがって、非常時のいまは、販売面からの自由競争は手控え、かつて、戦時中に全国の電力会社を一本化して日本発送電会社を設立したように、9電力を統合するほうが料金面からみて合理的ではないかとさえ思う。自然エネルギーによる発電を促進することも忘れてはならないが。

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2013年8月 6日 (火)

社会保障制度改革国民会議の報告書

 年をとるにつれて医者通いが増える。あちこちの病院や街の医者、そして薬局に行くようになると、見えてくるものがある。検査がよくあること、それに、処方される薬が多いことがままある。個人的な経験だと、3か月ごとに病院の眼科に通っているが、毎回、必ず視力検査を受ける。看護婦が担当しており、それが終わってから、医師の診察を受ける。年に一度ぐらい歯科に行くと、X線の撮影をされる。

 医師が書いた処方箋を、病院の周りにある薬局に持っていく。薬剤師は「どんな様子ですか」などと話しかけてくる。薬の効能などについてはすでに医師から聞いているので、特に薬剤師から教わることはまずない。しかし、薬局は、薬剤師が患者にどうってことない話をするだけで何百円という収入になる。医薬分業を実施した結果、病院の周りにいくつも薬局ができたのは、処方箋に基づく薬の販売にうまみがあるからだ。

 医療、介護、年金、少子化対策といった社会保障制度の改革を議論してきた政府の社会保障制度改革国民会議が5日、報告書を発表した。社会保障の総費用は年間およそ100兆円にも達し、いまなお年々3兆円増えている。しかも、国の一般会計で、社会保障制度関連歳出は税収に近い規模に及ぶ。これで、国の財政が順調に回るわけがない。そのツケが国債の大量発行である。今回の報告書は、社会保障制度を充実し、それを持続可能にするため、消費税増税で財源を増やすとともに、給付の重点化・効率化を図るよう求めている。

 しかし、社会保障制度や、それを支える財政制度に対して、従来、繰り返し指摘されてきた問題点が素通りされているという印象を受ける。例えば、医療費に関して言えば、カルテの電子化を早急に徹底し、過剰な検査、病院ごとの検査、過剰な投薬などをチェックする仕組みを完成する必要がある。

 また、中小企業に対する消費税のいわゆる益税化を是正しなければならないというようなことは触れられていない。消費税の引き上げに伴い、実施すべきだろう。

 報告書は、こうした既得権にからむ改革を避けて通っている。国民会議のメンバーは社会保障分野の学者、専門家が中心であり、財政、税制などを踏まえた総合的な視点でどこまで議論したのか疑わしい。

 社会保障制度および経済制度とは一体で議論し、政治が焦点を絞るべきだろう。その意味で、今回の報告は、あくまで叩き台として国会で参考にされる程度のものである。

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2013年8月 3日 (土)

見えない財政再建の道

 2日の経済財政諮問会議に、財政健全化への道筋の骨子が示された。要するに、2020年度に基礎的財政収支の黒字化を実現するという、政府が採ってきた道筋は無理だということである。この問題を担当する内閣府の担当者がどこかの国の政府のようにウソを並べたてることなく、本当のところを国民に提示したことは、官僚の良心として評価したい。

 日本財政が破綻への道をひたすら歩んでいることは繰り返し指摘してきた。その最大の原因は、政治家が政権の座を下りたくない、選挙で落選したくない、というエゴである。一度やったらやめられない、そういう政治家中毒症にかかる人がいかに多いことか。

 安倍政権は3本の矢をもとに日本再生を図ろうとしている。しかし、国・地方の政府債務がGDPの2倍をはるかに超える財政危機に正面から向き合うのを避けているようにみえる。消費税の引き上げ実施時期を慎重に検討するのはいいが、どうして消費税引き上げが必要か、を国民・消費者にとことん説明することは避けている。それに、現在の歳出構造を洗い直して、思い切った歳出削減に踏み切るということもしない。安倍政権は、経済成長すれば財政再建ができるという、実現可能性が極めて低いストーリーにひたすら期待をかけているのである。

 国際金融市場やIMFなど国際機関は、日本が財政再建にどれだけ本気かを注視している。日銀が大量に国債を購入する”財政ファイナンス”を続け、財政健全化をおろそかにしていることが、いずれ大きな問題となって現れる可能性は大だ。

 自民党の政治基盤が強固になったのはいいが、古い自民党の政治に回帰して、国民を危機に突き落とすような政治運営は絶対に困る。野党は安倍政権の本質を踏まえ、結束して事態の転回に努めてほしい。

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