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2013年8月31日 (土)

リーダー三流の日本を再確認

 「吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」という副題が付いたノンフィクション『死の淵を見た男』を読んだ。2012年12月発刊なので、もう9ヵ月も経っているが、久しぶりにすぐれたノンフィクションにお目にかかったような気がする。

 2年半前、東京電力福島第一原子力発電所の1~4号機が大地震・津波で全電源を失い、冷却不能に陥った。そのとき、吉田昌郎所長や原子炉の操作・運転などの業務にあたる現場の人々が、格納容器爆発など最悪の事態を回避するために死を覚悟して注水などの作業をした。そこに焦点を当て、日本という国家が死の淵に立たされたが、彼らの懸命の努力により、ラッキーにもかろうじて踏み止まり、国が救われたという経緯を描写したのが同書である。

 彼ら現場がいくら頑張っても、最悪の事態を避けられなかったという可能性もあった。その場合には、日本国は東北・関東などが放射能飛散で人間が近寄れなくなっただろう。日本が壊滅するに等しい。それほどに過酷な原発事故だった。このことはあまり国民に知られていないが、脳裏に刻み込むべき重大な事実である。

 原発現場の人たちの活動を支えた外部の人たちのこと、例えば、自衛隊などの懸命な救援も本書はきちんと描いている。また、菅総理大臣ら時の政府要人や東京電力の本社のお偉方などのリーダーシップ欠如についても触れているが、著者、門田隆将氏の眼は、日本企業を支える現場の人たちに向けられている。東電と言えば、いまや十把一絡げで悪者扱いされる傾向があるが、現場で働く人たちの中に、危機に際して「私」より「仕事」に殉じようとする人が多々いたことには感動する。

 いま、日本政府は、安倍首相が先頭に立って、日本の原発輸出を推進している。しかし、本書を読むと、東電や系列会社の従業員が放射能汚染を覚悟して、原子炉の暴走を食い止めようと命がけで作業したから、かろうじて国が救われたのであり、政治家や企業トップはそのことがわかっているのかと疑う。それに、いまだに、放射能に汚染された冷却水の処理が始末におえず、肝心の廃炉作業もどうしてよいかわからない状態である。このように、自国においてさえ、原発を満足に制御できていないのである。このことを安倍首相ら、この国の政官業のリーダーたちは忘れているのではないか。

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