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2013年11月28日 (木)

世界のエネルギーの将来展望

 IEA(国際エネルギー機関)はこのほど「World Energy Outlook 2013」を発表した。28日、東京でIEAのMaria von der Hoeven事務局長が説明の記者会見を行った。オランダの経済大臣を経てIEAの要職に就いた彼女は、英語が巧みで、説明も、質問に対する答えもよどみなかった。本題からそれるが、日本で大臣になった人がその後、有力な国際機関の事務局長などになって活躍するようなキャリアパスがあっていいと思った。

 エグゼクティブ・サマリーや、本文の第2章ノハイライトなどを読んだが、その中で目に付いた記述をいくつか紹介すると――

・グローバルなエネルギー需要は予測した2035年まで増え続ける。中間シナリオで2011~2035年に3分の1伸びる。石油13%、石炭17%、天然ガス48%、原子力66%、再生可能エネルギー77%それぞれ増える。CO2の排出は20%増え、37.2ギガトンに達する。

・世界のエネルギー需要の純増の90%以上が新興経済諸国による。ここ10年は中国、そして次にインド、そして2025年以降は東南アジアの需要増が顕著となる。石油供給地として知られる中東は、主なエネルギー消費地ともなる。

・電力需要は他の最終エネルギーよりも伸びる。発電量の純増のほぼ半分は再生可能エネルギーによる。電力構成に占める再生可能エネルギーの割合は2035年には30%を超える。原子力発電量は中国、韓国、インド、ロシアに牽引され、やがて3分の2増える。

・米国は2015年から2030年代初まで世界最大の石油生産国である。純ベースで2035年までに原油を輸入する必要がなくなり、石油製品の一大輸出地となる。ブラジルは主要な石油輸出国となる。中国は2030年ごろに石油の最大輸入国、かつ最大消費国となる。中東は唯一の低コスト産油地域であり、今後も世界全体の供給増加分の大半を担うようになる。

・天然ガス価格は2012年に、米国では欧州の4分の1以下、日本の6分の1以下だった(日本は米国の6.2倍)。米国はシェールガスの増産と経済危機による需要減で値下がりしたのに対し、日本は石油価格連動が広がって値上がりした。こうした価格差は、2035年になっても日本が米国の2.2倍になっている。

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2013年11月26日 (火)

多数党による特定秘密保護法の強行採決

 「民主主義は、51%の人が団結して、共同で49%の人々を搾取できる制度でもある。だからこそ、憲法は、政府の権力を握った多数派がしてはならないことを決めている」(原田泰著『若者を見殺しにする日本経済』62ページ)。この文を思い出したのは、自民党・公明党の与党がみんなの党および日本維新の会とまとめた特定秘密保護法案を衆議院の特別委員会で強行採決し、可決したからである。

 25日に開催された同委員会の地方公聴会(福島市)では、意見陳述者が皆、反対し、拙速な審議を避けるよう求めた。このように、国民の多くがまだ審議不十分だと感じているのに、与党が採決を急いでいるのは、今後に重要な法案の審議が控えているからだという。勝手に審議、採決などのスケジュールを立て、審議が足りなくても当初のスケジュールにしたがって審議を終え、法を制定するというのは、およそ、従来、国民が抱いていた民主政治のイメージと合わない。

 一票の格差の本格的な是正が図られないままに、自民党・公明党が衆参両院の多数を占めた結果、いまでは、与党はこの国を活かすも殺すも自由な生殺与奪の権を握っている。まことに危うい状況ではないか。

 ところで、国民はアベノミクスなどの政策の危うさに気付きながらも、他方で、日本経済の長期停滞を突破する政治に期待もしている。

 しかし、安倍政権で見えてきた本質の一つは、外交・防衛面での日米協調を基軸に、経済・社会政策の立案・実施に当たっては、霞が関の官僚たちにおんぶにだっこする点だ。平成26年度予算案づくりで、各省とも、深刻な財政危機には目をつぶって拡張的予算を組もうとしているのはその表れである。そして、与党の政治家も、ばらまきを前提に国家予算の相当な増額を求めている。内政面での展望は暗い。

 また、世界を見わたすと、中国が防空識別圏を新たに設定し、日本の識別圏の中に深く入り込んで新たな緊張を招いている。他方で、米国の大国としての影響力にはかげりがみられる。日米協調をふりかざすだけで、日本の生存がいつまで保障されるか。

 日本は国内外で政治のリーダーシップがよりきびしく問われる状況に入った。特定秘密保護法案の審議や採決の過程などをみると、安倍首相のリーダーシップに不安を感じてしまう。

 

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2013年11月22日 (金)

企業に経営改善策を提示して職場を守るJAM大阪

 ものづくり産業労働組合JAM(Japan Metal ,Machinery, and Manufacturing Workers)の大阪の書記長だった狩谷道生氏の話をこのほど聞いた。ナショナル・センターの連合を見ていると、労働組合運動は闘いを忘れたように思えるが、JAM大阪の活動は、労働者の生活を護るため、働く場である企業をつぶさないように懸命に努力している点で、画期的である。

 ものづくりの中小企業が集まる東大阪などが活動対象のJAM大阪は約300の単組から成り、1単組当たりの平均組合員数が140人ぐらい。100人未満の単組が3分の2を占める。会社は中小企業が圧倒的に多く、下請けが多い。したがって、会社倒産や、会社側から人減らし、労働条件切り下げなどの「合理化提案」がなされることが多い。

 その場合、通常、労組は反対を唱えるだけで、せいぜい退職金の増額などをかちとるぐらいである。それに対し、JAM大阪は、倒産や「合理化提案」が起こる前に、労組のほうから経営改善策を提案して会社の存続、労働条件の維持を図るようにしているという。それが受け入れられた場合、組合員全員が経営改善策を実行する。それが可能になるのは、労組が普段から会社の経営状況や経営戦略などをチェックしているからである。

 これは、労働者が会社と対等のパートナーとなり、労働者が経営の主人公になることを意味する。狩谷氏は「労働者は仕事、現場を熟知している。彼らが経営に主体的に関与すれば、会社の経営力は飛躍的に向上する。労働者の主体性の発揮は、彼らの精神的力能を活発化させ、イノベーションを促進する」と主張する。

 そして、同氏は、この労使経営協議制を法制化するよう訴えている。

 狩谷氏の話で興味深いのは、労組側が会社の経営を熟知していて、会社側以上にすぐれた経営改善策を提示していくためには、労組のほうが経営分析のプロでなければならないことである。そのために、JAM大阪では会計などの経営分析手法を徹底して勉強するという。狩谷氏自身は、会社・工場の中に入ったら、すぐに、そこがどういう経営状況かわかると言う。 

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2013年11月16日 (土)

人口減少で地方都市が壊死?

 隣国の中国が一人っ子政策をやめるという。少子高齢化による経済社会の停滞を懸念してのことらしい。かたや日本では少子高齢化の進行で、地方から大都市への人口流出で”地方消滅”の事態がやってくる――月刊誌『中央公論』12月号の特集「壊死する地方都市」の中で、増田寛也元総務大臣は「2040年、地方消滅 極点社会が到来する」と題する論文で、そのような危機の到来を予言(?)している。

 それによると、子供を産める「20~39歳の女性人口」という人口の再生産力に着目。人口移動が収束しないと、2010~40年の30年間に「20~39歳の女性人口」が現在の5割以下に減る自治体数は896、全体の約半分になるという。

 大都市圏では高齢化の進行に伴い、医療・介護サービスの基盤がぜい弱化する。これに対応して、地方の雇用を支えている医療・介護の人材が地方から東京圏などに大量に流出する可能性が強いという。そうなれば、地方の若者の雇用が根こそぎ消滅するおそれすらあるというわけだ。それが「地方の消滅」をもたらす。

 一方、若者が東京などに移動しても、大都市圏の出生率は上がらず、一貫して低い。したがって、日本という国は大都市圏という限られた地域に人々が集中し、高密度の中で暮らす”極点社会”になってしまう。極点社会は経済変動に弱いし、災害リスクも大きい。

 では、どうしたらいいのか。増田氏は、広域ブロック単位の地方中核都市に資源や政策を集中的に投入することを提案している。しかし、その内容はみるべきものがない。分析が面白いが、対策は物足りない。

 同じ特集の対談において、藻谷浩介氏は、地方に「去る」若者が増えていることにかすかな希望を見出している。そして「ある種、動物としての本能ではないかとも思う」と付言する。大都市では、仕事や住生活などで、人間らしい、まともな暮らしが手に入りにくい、それよりも田舎のほうが手に入るのではないか、という選択を指すのだろう。この藻谷氏の発言は正鵠を射ているのではなかろうか。

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2013年11月15日 (金)

長寿を支えている巨額の国民医療費

 平成23年度の国民医療費(推計)が厚生労働省から発表になった。まず総額は38兆5850億円、前年度より3.1%も増えた。1年で1兆2千億円近くも増加しているのである。GDPが500兆円程度なのに、国民医療費だけで年間1兆円余も増えるのには驚く。

 これを国民1人当たりで見ると、30万1900円、前年比3.3%増という。65歳未満と65歳以上とで分けると、65歳未満は17万4800円、65歳以上は72万0900円。75歳以上の男性に限定すると96万8300円、女性は84万5600円となっている。長寿は健康の証しであり、めでたいことだが、それを支えている医療費はかくも大きい。

 巨額の国民医療費の財源は、第一に保険料で、18兆7518億円に達する。被保険者が10兆9555億円、事業主が7兆7964億円負担している。第二に公費で、14兆8079億円。そのうちの10兆0307億円が国庫、4兆7772億円が地方(自治体)の負担である。

 国民医療費の一部である薬局調剤医療費は6兆6288億円である。65歳未満では1人当たり3万0400円だが、65歳以上だと12万2700円に膨らむ。

 少子高齢化のもとでは、増える高齢者の医療費を、減る傾向にある生産年齢・年少人口の人たちが支えるしかない。だが、それはますます困難となろう。財政再建が焦眉の課題となっていることを踏まえ、医療はじめ社会保障のありかたを根本から見直すことが必要である。

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2013年11月14日 (木)

即時原発ゼロを求める小泉発言

 小泉純一郎元総理大臣が、わが国の原子力発電所を即時、廃止するよう求めている。そして、安倍首相が決断すれば、それが実現するとの考えを示している。名指しされた安倍首相はそれに応じない。だが、郵政民営化を唱え、それを実現するために国会解散まで行なった信念の人の発言だけに、政界だけでなく、反原発運動などにも波紋が広がる可能性もある。

 小泉氏はフィンランドで建設中の高レベル放射性廃棄物の処分場を視察したことで、核ごみの後始末が困難なこと、つまり「トイレなきマンション」の本質的な問題点に気付いたようだ。しかし、原発をゼロにしたあとのことは「必ず智恵のある人がいい案を出してくれるというのが私の考え」と言うだけ。そこが物足りない。郵政民営化のときと同様、説得力が足りないように思う。

 おりからCOP19(第19回国連気候変動枠組条約締約国会議)がワルシャワで始まったところ。これまでの地球温暖化対策では、温暖化の急速な進行を阻止できず、今世紀のうちに人類の生存を危うくする気候変動のさまざまな現象が起きると予想されている。

 燃やすと二酸化炭素が出る化石燃料と違って、原子力発電は温室効果ガスをほとんど出さないですむ。このため、原子力発電は、温暖化を抑える切り札として、多くの国で運転され、また新しく建設されている。一方で、ドイツは2022年までにすべての原発を停止する方針を打ち出している。そして、風力発電、太陽光発電などの、二酸化炭素を出さないエネルギーへ全面的に切り替えようとしている。

 こうした中で、日本の安倍内閣は原発依存を縮小していく方向を示しているが、それは日本においていちばん可能性が高い政策路線ではなかろうか。即ち、新規の原発建設はもはや日本では不可能である。反対を押し切ってまで新たに建設する力は企業にも政治にもない。

 また、いまの火力発電依存は環境対策上まずいだけでなく、化石燃料輸入による貿易収支の悪化をもたらしている。原発停止と火力再開は電気料金を引き上げ、需要者のエネルギーコストが上がっている。

 一方で、政府は経済的に原発に依存している地域の意向を無視するわけにはいかず、停止中の原発を厳しい審査を経たうえで再稼働させることになろう。

 「フクシマ」の後始末は何十年とかかる。それだけに、原発に関わる技術を保持する電力会社、機器メーカーなどが事業を継続し、競争力を持ち続けることが不可欠である。そうだとすれば、わが国の原発は徐々に縮小していくということになる。

 その一方で、政府は再生可能エネルギーの量的な拡大を進めるだろう。また、軽水炉と違って、圧倒的に安全性の高い原発の研究が進んでいるので、そう遠くない時期に、実用化されることも考えられる。

 小泉氏の発言は単純明快だが、こうした諸事情を踏まえて独自の発言をしてもらえたら良かった。

 

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2013年11月13日 (水)

巨大台風にやられたセブ島(フィリピン)

 レイテ島のタクロバンはじめフィリピンのあちこちが巨大な台風30号にやられた。ことしの9月中旬に短時日だが、セブ島および、すぐ隣のマクタン島を訪れたばかりなので、遠くの国のこととは思えない。

 セブ島、マクタン島に着いた日。マクタン島の海岸に沿って走るバスの中で、ガイドのフィリピン人が「ここは津波が来ることはありません。大きな地震が起きませんから」と語り、住むにもってこいのところだと言っていた。フィリピンは大爆発したピナツボ火山があり、大きな地震が起きるのではないかと思うが、そんなことをこの地元民は言っていた。

 しかし、最大風速が90メートルを超す台風で、レイテ島のタクロバン市沿岸部に5メートルもの高潮が押し寄せたという。写真で見て、地震でなくとも、津波と似た被害を及ぼすことに驚いた。レイテ島の西南にあるセブ島、マクタン島はどうだったかわからないが、死者の数から推して、台風による被害はかなり大きかったのではないかと想像する。

 セブ島にくっつくような小さな島、マクタン島は輸出加工区があり、日本企業が進出している。リゾート地として有名なセブ島の中心、セブ市は北に行くほど海抜が高くなっている。ビバリー・ヒルズと呼ばれる高級住宅街は北にあり、びっくりするほどの豪邸が並んでいる。そして、中心の繁華街は南のセブ海峡、セブ港の傍にある。商店街は、小さな店がびっしり軒を連ねている。その一方、大きなショッピングモールもある。貧富の差が大きいフィリピンを垣間見たような気がした。

 多少なりとも事情を知ったフィリピンだけに、救援、復興が順調にいくことを願う。

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2013年11月 7日 (木)

TPPに対する『反・自由貿易論』(中野剛志著)の指摘

 経済産業省の官僚、中野剛志氏が『TPP亡国論』に続いて出版した『反・自由貿易論』を読んだ。日本政府は今年からTPP交渉に参加しているが、交渉の中身は秘密にされている。

 本書によれば、「今日の世界では、国際経済戦略の核心は、ルールの設定」だという。米国は、企業力の競争から国家間の政治力競争へと軸足を移しており、日本に対しても、米国に有利となるルール変更を迫ってきているという。

 即ち、本書によれば、米国は、すでに日本の関税が低いので、非関税障壁の撤廃に焦点を当てているという。米国の企業が日本市場に入りやすいようにするため、政府規制や民間のビジネス慣行などをやめさせようとしていると述べる。グローバル化に伴うハーモナイゼーション(調和)とは、要するに米国の利益に沿うように各国がルールを改変することだと言う。

 本書を読んで注目したのは、紛争の処理手続きとしてのISD条項(投資家対国家の紛争処理条項)である。米韓FTAにはこれが盛り込まれている。もし、日本がTPPでこれを受け入れたら、外国の投資家が日本の規制を訴えた場合、事情に疎い仲裁人による国際仲裁に委ねられることになる。その結果、当事国(この場合、日本)の固有の文化や生活などを無視した形式主義的で官僚的な結論になるおそれが大きいという。

 もう一つ注目したのは、ラチェット規定である。一旦自由化したら、その市場開放がまずかったという事態になっても、もとのように国が規制を強めることはできないというもの。米韓FTAにはこれが存在する。同様な規定を日本が受け入れることは絶対にいけない。

 普通、国際法の条約は二国間の個別利害を調整するものだ。これに対し、WTOやTPPには参加国の個別利益とは別に、参加国全体の共通利益が存在する。それにより、国家主権を越えた法制度的秩序が形成される。

 しかし、著者は、国内法が社会常識などと密接につながっていることで円滑に機能しているように、WTOやTPPなども相互の経済的な国家主権を尊重すべきだと主張している。米国主導のレジームは断固拒否すべきだと言う。傾聴に値する。

 

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2013年11月 6日 (水)

診療報酬の見直しではこんな点も考慮を

 診療報酬の見直しの時期が近づいてきた。医療費が増え続け、財政赤字が拡大しているにもかかわらず、医師会は消費税増税による税収増を社会保障に充てるのは国民との約束だとして、診療報酬の値上げを要求している。

 消費税が2014年度から引き上げられるが、安倍政権の膨張的な財政政策のもとでは、財政再建の道筋は全くできていない。そうした中で、診療報酬の改定がプラスだと、財政悪化に拍車をかける一因となる。

 しかし、診療報酬については正直言って、国民はよくわからないのが実態ではないか。診療報酬とはどういうものであり、その内容が適切か、国民にオープンにして広く議論してほしい。

 たまたま、手元にある某病院の領収書を見ると、初診料、再診料、医学管理料、在宅医療、投薬料、注射料、処置料などの項目がある。また、ある薬局の領収証は、調剤技術料、薬学管理料、薬剤料などという内訳がある。

 後者の領収証の事例を紹介すると、薬剤料が62点(620円)なのに、調剤技術料80点(800円)、薬学管理料41点(410円)である。医師が書いた処方箋を提出し、小さな瓶に入った薬をもらうだけなのに、調剤技術料なるものに800円も支払うのは納得しがたい。

 単なる一例だが、患者がよく知らないのをいいことに、過大な診療報酬を払わされているということはないのか。

 自民党政治復活のもとで、医師会と厚生労働省が診療報酬の増額を求め、政治家の多くも応援団になるという旧来の政治構造が復活する公算が大きい。国民、患者は少し、診療報酬の内容について学び、医療費増を当然視しないようにしたい。

 

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2013年11月 1日 (金)

「牛脂注入の加工肉」問題を考える

 大阪、東京、名古屋、京都などの著名なホテルが、牛脂を注入した加工肉であることを表示せず、牛ステーキとして提供していたなど、料理の素材の名称を高級なものにみせかけて客に提供する商法がメディアであばかれている。最初は、特定のホテルだけかと思いきや、あちこちのホテルやレストラン等で同様なことが行われていたことが報じられている。

 一連の報道を読んでいると、いろいろ考えさせられる。第一に、消費者の味覚はまがいものを見分けるだけの感度がないのだろうか。高級品というイメージに味覚がだまされるのだろうか。

 第二に、客のほうは、そうした実態を知らないでいたのかと言えば、結構、承知していた人が多いのではないか。彼らは、本物だと、料理の値段がもっと高いと内心感じていただろう。

 第三に、表示と異なる素材であっても、客の多くは十分おいしいと思っていたのではないか。料理がそれなりにおいしくつくられているからだ。

 日本では古くから、鴨南蛮で、鴨肉の代わりに鶏肉を載せるうどん屋は多い。庶民の手が届く値段のそっくりさんを提供するビジネスが得意だ。イクラは随分前に、人工的にそっくりさんがつくられた。そうした慣習が、牛脂注入肉など、最近、誤った表示が問題とされているホテルなどの料理の表示にも反映しているような気がする。

 いま一つ付け加えると、同業者間の競争が激しいため、一流店でも、おいしく、かつ安い点をセールスポイントにしがちだ。そうした店は、客の味覚のあいまいさにつけこんでコストの安い食材に手が伸びがちだろう。しかし、それは禁じ手だ。

 消費者をだましていたと言えば、その通りだが、このようにそう単純ではないように思える。

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