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2013年11月 7日 (木)

TPPに対する『反・自由貿易論』(中野剛志著)の指摘

 経済産業省の官僚、中野剛志氏が『TPP亡国論』に続いて出版した『反・自由貿易論』を読んだ。日本政府は今年からTPP交渉に参加しているが、交渉の中身は秘密にされている。

 本書によれば、「今日の世界では、国際経済戦略の核心は、ルールの設定」だという。米国は、企業力の競争から国家間の政治力競争へと軸足を移しており、日本に対しても、米国に有利となるルール変更を迫ってきているという。

 即ち、本書によれば、米国は、すでに日本の関税が低いので、非関税障壁の撤廃に焦点を当てているという。米国の企業が日本市場に入りやすいようにするため、政府規制や民間のビジネス慣行などをやめさせようとしていると述べる。グローバル化に伴うハーモナイゼーション(調和)とは、要するに米国の利益に沿うように各国がルールを改変することだと言う。

 本書を読んで注目したのは、紛争の処理手続きとしてのISD条項(投資家対国家の紛争処理条項)である。米韓FTAにはこれが盛り込まれている。もし、日本がTPPでこれを受け入れたら、外国の投資家が日本の規制を訴えた場合、事情に疎い仲裁人による国際仲裁に委ねられることになる。その結果、当事国(この場合、日本)の固有の文化や生活などを無視した形式主義的で官僚的な結論になるおそれが大きいという。

 もう一つ注目したのは、ラチェット規定である。一旦自由化したら、その市場開放がまずかったという事態になっても、もとのように国が規制を強めることはできないというもの。米韓FTAにはこれが存在する。同様な規定を日本が受け入れることは絶対にいけない。

 普通、国際法の条約は二国間の個別利害を調整するものだ。これに対し、WTOやTPPには参加国の個別利益とは別に、参加国全体の共通利益が存在する。それにより、国家主権を越えた法制度的秩序が形成される。

 しかし、著者は、国内法が社会常識などと密接につながっていることで円滑に機能しているように、WTOやTPPなども相互の経済的な国家主権を尊重すべきだと主張している。米国主導のレジームは断固拒否すべきだと言う。傾聴に値する。

 

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