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2014年2月26日 (水)

脱「成長」戦略と消費税

 経済学者の橘木俊詔氏と福祉経済学者の広井良典氏の対談による著書『脱「成長」戦略」~新しい福祉国家へ』を読んだ。今後の日本では社会保障制度がますます重要になる。いまでも財政危機が深刻だが、増え続ける社会保障ニーズにどう対処すべきなのか。そんな視点で同書を読むと、いくつか示唆が得られた。

 同書は、高福祉、環境保全、および”定常型経済”の3つから成る”定常社会”をめざすべきだという視点から成る。経済成長を通じて社会保障の充実や財政再建を果たそうとするアベノミクスとは異なる問題提起である。

 両氏はデンマークなど北欧の高福祉高負担国が日本のめざすべき道だと考えている。しかし、現在の日本では、高福祉は求めるが高負担はいやだという人々が少なからずいて、政党にも同様な主張をするところがある。これについて、両氏とも消費税を上げるしかないと言う。社会保障給付は年間100兆円を超えていて、かつ医療費だけでも毎年1兆円以上増加している。防衛費の削減、大企業への法人課税引き上げ、所得税の累進度引き上げで捻出できるカネとはけた違いに大きい。

 高福祉高負担か、低福祉低負担か。そもそも、「国民投票をやらないといけない」(橘木氏)、「各政党が高福祉高負担か低福祉低負担か、税中心か社会保険料かそのビジョンを示して、有権者が自分がよいと考えるものに投票することが政治本来の役割ではないでしょうか」(広井氏)。「高福祉高負担も必要なのだということを正面から問うような政党が出てこなかった」(同)。

 広井氏は社会保障制度の維持発展には消費税、相続税、環境税の3つが特に重要だとしながら、財源として大きいのは消費税だと指摘している。「社会保障費が国の予算の大半を占めている状況で、しかも社会保障費として支出する段階で所得の再分配効果が起きるのですから、結果として消費税率を引き上げて社会保障費を手厚くした方が、むしろ格差は圧倒的に小さくなり、生活保障がしっかりするという認識がもっと共有されるべきです」とも言っている。

 そして、消費税は「日本は端的に言えば、10%でも足りなくて、15%、さらに20%前後の水準にまで引き上げなければ、少なくともヨーロッパ並みの福祉を実現することは難しい」と言い切る。

 医療、生活保護などの各論についても、対談は参考になる。診療報酬は高度医療を担う病院や看護など入院部門が非常に低く、他方、診療所に手厚いので、是正が必要だという。

 増え続ける生活保護受給について、橘木氏は、高齢者の年金、医療などを充実するなら、生活保護費を引き下げるのに賛成だとし、中年・若年の無職者については働く場を見つける策のほうがいいと言う。広井氏は若者については、人生前半の社会保障という観点で、「雇用も重要ですが、教育も含めてしっかりと支援を厚くしていって、理想としては結果的に生活保護を受けなくてもいいということになればいい」と指摘している。

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