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2014年3月13日 (木)

今春闘に対する違和感

 春闘は自動車、電機、鉄鋼などの大手企業の賃金回答が12日に出た。久々のベア回答が出て、日本経済の回復に勢いをつけるきっかけになるのかもしれない。安倍内閣の経済政策(?)の成果である。

 政府はことし4月の消費税引き上げを控えているため、経団連を通じて経済界に賃上げを要請し、連合など労働界を含めた政労使の三者会議を催して、今春闘の賃上げ実現を推進してきた。経営側、労組側のどちらも、賃金は個々の労使で決定すべきものとの原則論に立っている。だが、アベノミクスを推し進める安倍内閣の働きかけを是とし、1年前には労使とも考えていなかったレベルの賃上げ回答を実現した。円安などで企業収益が改善し、内部留保が高い水準にあることもその背景にある。

 とはいえ、今春闘を見ていて、どうも違和感がある。それを一言でうまく表現することができないが、企業や労組などの組織やそのリーダーは、自主・自立の精神が弱い、良く言えば、原理原則にこだわらず、周囲の状況、即ち、”空気”に合わせて対応するということである。経営側がベースアップに前向きになったのも、多分に安倍政権の強い要請、圧力に従ったほうが無難だということにすぎない。

 グローバルな競争に直面して、日本の大企業の多くは、過去20年前後、内部留保を高め、経営を安定させることに重きを置いてきた。株主からの経営改革への圧力もないので、一部を除いて社内からの昇進で経営陣を構成し続け、異質な人材の活用による経営の活性化などの経営革新をろくに行わなかった。そして、年功序列など日本型経営の特質を残し、密接な労使関係を維持してきた。

 労働組合は多くの企業で人事政策の補完的な存在だったことは否めない。もっぱら社員の賃上げ闘争に焦点を当て、長時間労働、男女差別など、基本的な労働条件に対する取り組みはおろそかだった。同じ労働者であるパートや派遣社員などの非正規労働者に対する配慮も欠けていた。

 したがって、海外の多国籍企業と違い、日本企業は、高度成長時代の経営体質を引きずって、ものづくりではまだ競争力を保っているが、情報、サービスなどの新分野では、世界をリードするグローバル企業がなかなか現れない。官による規制などが、新しい事業分野の誕生を妨げていることも否めない。アップル、グーグルなど、若い創業者がベンチャー企業からグローバル企業を生み出す”我が道を行く”サクセス・ストーリーが生まれにくい。

 今春闘は、中小企業や非正規労働で、どれだけ賃上げが行われるかも注目点である。消費税引き上げや社会保険料引き上げなどを考えると、大手企業の労働者でも、果たして、どれだけ実質賃上げになるか。まして、中小企業や下請け業者の場合、消費税の転嫁も容易でなく、春闘の賃上げは厳しい環境にある。こうした大企業と中小企業などの多重構造に目をつぶる大企業労組が、中小企業や非正規の労働者との連帯を強めないと、日本の経済も社会も徐々にもろくなる。アベノミクスにはそうした多様な問題点が落ちている。

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