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2014年5月14日 (水)

クー氏の財政赤字解消論

 バブル崩壊後の日本経済が長期デフレに陥ったのはなぜか、について”バランスシート不況”という独自の視点を提示したリチャード・クー氏。彼が著わした『バランスシート不況下の世界経済』(2013年12月刊、徳間書店)を拾い読みした。

 同書は、GDPの2倍以上に膨らんだ日本国の政府債務について、財政出動は不可欠だったとして、次のようにとらえている。

 バブルがはじけ、企業(法人)の持つ資産価格が暴落したため、企業の財務内容は大幅に悪化した。このため、企業は投資を抑え、借金を減らし、財務内容を改善することに奔走するようになった。この法人部門の内需減少を放置すれば、国内景気はスパイラルに落ち込み、大恐慌のような事態に陥る。それを避けるため、政府は財政出動による景気刺激策をとった。おかげで、日本のGDPは落ち込まないですんだ、と。

 また、国債の利回りがゼロに近いということは、財政赤字が民間企業の負担になっていないと言い、「企業が国内で上げている収益のかなりの部分は、政府が民間の未借貯蓄を借りて使ってくれることで、総需要が支えられているからこそ可能になっている」と書いている。

 では、どうやって財政再建するのか。これについては、まず、企業が借り入れて投資に充てる以上に貯まったままになっている未借貯蓄が解消されて初めて財政再建が可能となるという。そして、「5年や10年で何とかしようとすれば大きな無理が発生し、またその努力が景気を悪化させることになりかねない」とし、「この種の不況が数十年に一回しか発生しない」ので、税制の根底からの見直しなど「あらゆる手段を使って経済効率と経済成長率を高めることで対応できる可能性が出てくる」と述べている。

 「日本経済の成長率を上げる選択肢がそう多くあるわけではない」と慎重な言い回しをしつつ、「第4章 アベノミクスに宿る大きな可能性」の末尾で「バランスシート不況とその後遺症である借金拒絶症の実態をしっかり把握した上で、それに見合った大胆な成長戦略を打ち出す必要がある」とクー氏は締めくくっている。

 財政出動の必要性を説く部分は説得力がある。でも、財政再建の道筋、展望については、政治、経済、社会の今後の動向が大きく影響するので、説得力を感じない。

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