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2014年6月 7日 (土)

公的年金の財政検証

 6月3日、厚生労働省の社会保障審議会年金部会が開催された。同省は少なくとも5年ごとに国民年金、厚生年金の財政に係る収支について現況及び財政均衡期間における見通しを作成しなければならないとの法の規定に基づいて、詳細な報告書を同部会に提出し、公表した。

 少子高齢化が急速に進んでいる日本では、老後の生活を年金に大きく依存する高齢者が増え続けている。しかし、働いて年金保険料を納めている人々の数は減っていく。年金給付の原資はもともと、高齢者がかつて現役だったころに納めた保険料と、現在働いている人たちが納めた保険料、およびそれらの資金運用で得た利益から成る。

 しかし、少子高齢化のもとでは、高齢者が積み立てた保険料の取り崩しだけで100年といった長期間を前提にする年金保険の安定的な給付は維持できない。そこで、現役の働き手が納入し積み立てた保険料を取り崩したり、国の一般会計予算から年金給付に助成する仕組みになっている。現在は、毎年の年金給付総額の2分の1を一般会計が負担している。

 しかし、それでも、財政的に現在の公的年金制度を長期安定させることは難しい。ことしの財政検証の結果、現状の延長では公的年金の持続性が危ぶまれるので、年金制度および関係する各種の経済システムに関するどのような改革が必要か、を列挙している。しかし、それらのいずれもが難題である。国民各層が自分の都合ばかりを言い立てていては解決の道は開けず、いまの年金制度は行き詰まるだろう。

 報告書から読み取れる改革案は、まず、年金の受給開始を遅らせ、保険料の納入期間を長くすること。第2に、パート労働者など、年金保険の対象からはずれている人たちを加入させること。さらに、デフレでもマクロ経済スライド(年金の減額)を発動して年金支給額をカットすることである。このほか合計特殊出生率を高める施策とか、外に働きに出る女性および高齢者が増えるような環境を整えること、さらには、積み上がった保険料の運用対象を株式などリスク性の資産比率を高め、運用収益を増やすことも、安倍政権はめざしている。

 しかし、低年金で生活苦の人々がたくさんいるなどで、改革がすんなり受け入れられるか疑わしい。また、日本年金機構と国税庁の統合など官僚組織の改革については厚労省は全く触れていない。現在60%程度にとどまっている年金保険料の徴収率を上げようと本気で取り組んでいる様子はうかがえないのである。年金の問題は日本国の社会保障制度全体に関わる課題だし、財政危機に直面している日本財政そのものの課題でもある。さらには、日本の今後の経済社会の望ましいありかたとも直結する。

 国におんぶすることばかり考えて、国家財政にさらなる拠出を要求するのはよろしくない。年金制度のさまざまな問題点を改善して、年金に関する国庫負担を減らすことは可能である。したがって、ややこしい年金制度の仕組みをできるだけ国民が学び、政府に改善を求めていく必要がある。民間に核となるそうした組織が欲しい。厚労省に年金問題を任せきりにしていては思い切った改革は望めない。

 

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