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2014年6月 3日 (火)

「財政健全化に向けた基本的考え方」(財政審)の国民への説明は十分か

 国の財政悪化はとどまるところを知らない。財政破綻をどうやって避けるかは、日本の直面する主要な課題の1つである。5月30日に開催された財政制度等審議会(吉川洋会長)は「財政健全化に向けた基本的考え方」を取りまとめて発表した。この「考え方」については、4月30日のこのブログ「途方もない財政赤字を改めるための試算」で取り上げた。

 最終報告書の要旨は、①経済社会の構造変化、②我が国の財政に関する長期推計、③今後の予算編成における取り組みに分けられている。①では、超高齢化で医療・介護の給付費が増えて財政悪化がひどくなる、家計部門の資金余剰が減少し、経常収支の悪化に伴い海外投資家の投資動向に振り回されやすくなる、などのため、2020年度の国・地方の基礎的財政収支(PB)黒字の目標を先送りしてはならない、と言う。

 ②では、現行社会保障制度のまま歳出・歳入を伸ばすと、2060年度まで実質成長率2.0%、名目成長率3.0%が続いても、一般政府の債務残高対GDP比は608%にまで膨らみ、財政再建は不可能、したがって、2020年度の国・地方のPB黒字化はそもそも出発点ととらえるべきだと説く。

 そして③では、2020年度の国・地方のPB黒字化という目標に向けて具体的な取り組みを早急に検討すべきだとし、社会保障について、中期的に給付と負担の均衡を実現できるように各年度の着実な取り組みを求めるなど、PB対象経費全体の抑制を求めている。また、来年度予算編成に対して、中期財政計画を上回る規模で収支改善を図ること、および、そのうえで、その後の5年間の具体的な工程を来年夏までに明らかにすることを求めている。

 債務残高対GDP比を2060年度に100%に低下させるには、2020年代前半にGDP比11.9%の収支改善が必要だと言う。それは2021年度名目GDPで計算すると約76兆円に相当するとのこと。いまの国の歳出から国債費を引いた残り全部とほぼ同じだ。

 なお、発表資料によれば、現在の国民負担率(長期推計2020年度)は租税13.7%、社会保険料21.4%。それに上記の収支改善幅11.9%を足すと47.0%になる。これはおおむねヨーロッパ諸国並みの負担率だとしている。
 
 こうした財政健全化に向けた試算や改革の方向については、国民の理解が欠かせない。高齢者、医療・介護関係者など、既得権益の保有者は改革に強く反対するだろう。したがって、財務省は財政審の「考え方」を出しっぱなしにしないで、できるだけ各方面にわかりやすく説明することが望ましい。

 

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