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2014年6月 1日 (日)

小宮隆太郎『経済学 わが歩み』のいくつかの指摘

 ミネルヴァ書房のシリーズ「自伝」の一冊である元東京大学経済学部教授だった小宮隆太郎氏の『経済学 わが歩み~学者として教師として~』を読んだ。小宮氏については、1968年に八幡製鉄・富士製鉄の合併に対し、近代経済学者約90人が反対声明を出したときの中心的な役割を演じたことで強い印象を受けたのと、その後、見ていて、政府の審議会にほとんど加わらず、学者として毅然としている人だなと感じたことで、好印象を抱いていた。今回、氏の自伝を読んで、生き方に共感を覚え、さわやかな気持ちになった。

 脈絡なしに、読んでうなづいたところを以下に記す。
●「日本の少子化の原因にも年功序列があると思っている」=米国では出産、育児があっても働き続ける女性がたくさんいる。その多くは同じ給料で同じ仕事を続けている。一方、日本の企業では毎年のように昇給、昇進があるので、出産、育児をする女性に対する同性の風当たりが強いこともあり、出産しない女性が増える。

●「「監督官庁」は日本独自のシステム」=1960年代にドイツで自動車産業担当の役所はどこかなどと聞いたら、経済財政省であり、自動車産業の担当者は2人だけ、それ以外にはいないとの答えだった。かつての日本は、輸入割当、関税率、設備投資調整、不況カルテルなどに経済関係官庁が関与していた。こうした行政指導は日本が国際経済システムのフルメンバーとして復帰する過程で根拠が失われていったが、監督官庁による非公式は規制は依然として存続しているようにみえる。

●中国の秘密主義=1986年に西南財政大学(成都)で講義、研究をした。そのときの経験だが、中国社会では情報流通と意思疎通が円滑ではなかった。中国で出版される書物、雑誌は①一般発行、②国内発行、③内部発行に分類され、②と③は国外持ち出し禁止、③は一定階級以上の幹部のみが見ることができるという。外国人の留学生・研究者に情報を厳しく制限していながら国際学術交流をさかんにしようなどと言うのは絵空事である。政府は経済、企業関係の法律は発表しても、省令、施行規則、通達、自治体条例などは内部資料として外国企業などに見せない。

●バブル経済の背景=日本の経常収支黒字を減らすために行なわれた放漫な金融政策、そして日米構造協議で米国などに対して公約した公共投資430兆円がバブル経済の背景になっていた。1986年の「前川リポート」の内容は経済学的な批判に堪えない間違ったものである。国際通貨基金協定では、黒字国が黒字を減らさねばならない理由は一切ない。

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