« 不動産売買の仲介料で自由競争 | トップページ | 統計が示す賃上げ率低下の大きな流れ »

2014年8月 6日 (水)

「誤った記事の訂正・取り消しは、記事と同じ大きさで」

 もう何十年も前の話だが、ある全国紙が鉄鋼大手メーカーに関する誤った記事を載せたことがある。しかし、鉄鋼メーカーの広報担当幹部は抗議をしなかった。どうしてかと尋ねたら、次のような答えが返ってきた。「訂正を申し入れても、ベタの訂正記事が載るだけでしょう。それでは、読者はほとんど気付かないから、訂正しないのと同じですよ。誤報が及ぼす影響を打ち消すには、誤報と同じ大きさの訂正記事を載せてもらわないと」と。

 この時のやりとりを思い出したのは、朝日新聞が5日と6日の2日間にわたって掲載した慰安婦問題の特集を読んでのことである。5日の特集は、『強制連行』、『「済州島で連行」証言』、『軍関与示す資料』、『「挺身隊」との混同』、『元慰安婦 初の証言』について「どう伝えたか、読者の疑問に答える」形をとっている。

 そして、それぞれの末尾に、「読者のみなさまへ」という2段見出しの短い記事を付している。それを読むと、「吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」とある。最後まで読んで、初めて訂正・取り消し文に出会うのである。

 記事によると、吉田清治氏の話をまともに受け取って最初に記事を掲載したのは、1982年9月2日に「済州島で200人の若い朝鮮人女性を『狩り出した』」と報じた」とある。その後も繰り返し吉田氏の話をもとに記事を書いたことが、慰安婦問題が内外で大きく取り上げられる主因となった。

 また、「女子挺身隊」は戦時下で女性を軍需工場などに動員した「女子勤労挺身隊」のことであるが、1991年、92年の朝日新聞は「慰安所で日本軍人相手に売春させられた」と報道した。その結果、20万人などというとんでもない数の慰安婦がいたような誤報が行われた。これについても、5日付け朝刊は「読者のみなさまへ」で、「当時は、慰安婦問題に関する研究が進んでおらず、記者が参考にした資料などにも慰安婦と挺身隊の混同がみられたことから、誤用しました」と記している。間違いましたと言わず、研究者に責めを負わせている。

 さらに、軍隊や警察などに「強制連行」され、無理やり慰安婦にさせられたという朝日の過去の報道については、「読者のみなさまへ」で日本の植民地だった朝鮮や台湾では、「軍などが組織的に人さらいのように連行した資料は見つかっていません」と書いている。そこで誤りを認めるのならいさぎよいのだが、「軍の意向を受けた業者が……だまして多くの女性を集めることができ、」とか、「インドネシアなど日本軍の占領下にあった地域では、軍が現地の女性を無理やり連行したことを示す資料が確認されています」とか、言い逃れに必死だ。

 朝日新聞が大きく、かつ繰り返し取り上げれば、その内容が国内外に広く受け入れられる。そのことは朝日の記者なら百も承知のことである。それだけ大きな影響力のあるメディアだ。今日、慰安婦問題が日本の国益を揺るがすところまできている原因の一端は朝日の誤報と、それを潔く訂正・取り消ししない体質にあるように思う。

 5日付け1面には、編集担当 杉浦信之氏の「慰安婦問題の本質 直視を」という記事が載っているが、「本質」は、繰り返しになるが、朝日の誤報と、潔く訂正することができない朝日の企業体質とにある。

女性の尊厳をふみにじる戦時下の慰安婦問題は戦争、軍隊の存在と表裏の関係にあり、そこからも平和の重要性が認識されよう。さはさりながら、誤報はメディアの責務としてきちんと訂正していかねばならない。

|

« 不動産売買の仲介料で自由競争 | トップページ | 統計が示す賃上げ率低下の大きな流れ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/60108602

この記事へのトラックバック一覧です: 「誤った記事の訂正・取り消しは、記事と同じ大きさで」:

« 不動産売買の仲介料で自由競争 | トップページ | 統計が示す賃上げ率低下の大きな流れ »