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2014年9月27日 (土)

公的年金運用改革に不可欠な財政健全化

 厚生年金および国民年金の積立金は130兆円に達する。安倍内閣はこの巨額の資産運用について、株式投資の比率を高めるなどのポートフォリオ見直しを国内外で公言している。日本の株式相場は直近では小幅の上下をしているが、130兆円の運用に携わっているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針転換への期待が現在の株価水準までの上昇の一因になっていることは否めない。

 現在、GPIFの基本ポートフォリオは国内債券60%(±8%)、国内株式12%(±6%)、外国債券11%(±5%)、外国株式12%(±5%)、短期資産5%である。こうした分散運用は適切か、リスク管理体制等のガバナンスは大丈夫か、さらに、年金運用が日本経済の成長促進に一役買うべきではないか、そうした問題意識から、政府は年金運用改革を推進しようとしている。

 これに対し、年金問題に詳しい西沢和彦氏(日本総合研究所)は日本記者クラブでの会見で、まず諸外国の年金制度との比較紹介をした。年金基金が1階(普遍的給付、最低保障)の部分か、2階(上乗せ、所得比例給付)の部分か、3階(職域年金、個人年金)の部分か、を区別すべきだと述べ、我が国のGPIFの運用する資金は1階部分の厚生年金・国民年金の積立金であると説明した。

 そして、年金制度は国によってさまざまだが、米国、カナダ、オランダの各国は、基礎的な年金給付である1階の部分については、市場運用はしていないと指摘した。即ち、その部分については、最低保障等に基づいて決めているという。西沢氏の話で教わった重要な点は、これらの国では、1階部分に関しては、市場運用し、その成果を年金給付に充てる(即ち、運用に失敗すれば、年金給付を減らす)という考え方をとっていないということである。安倍政権のめざす改革は、欧米とは正反対である。

 西沢氏によれば、市場運用を積極的に行なっているカリフォルニア州職員退職制度(カルパース)など欧米の年金基金は、年金制度の2階部分にあたる。我が国の年金運用改革の議論は、1階部分に相当するGPIFと2階部分のカルパースなどとを同列に論じているところに誤りがあるという。

 他方、西沢氏は日本に損切りの仕組みがないため、将来世代に年金給付削減というマイナスを負わせることになっている点も批判した。そして、運用損失を直ちに給付減につなげる仕組みの導入が不可欠だと語った。

 さらに、GPIFという政府の一員を介して、市場へのリスクマネー供給やコーポレートガバナンス強化を図るという動きに対し、無理があるし、好ましくないという考えを表明した。

 以上の話に啓発された。

 筆者は、国債の大量発行および財政危機による国債価格崩落の事態到来を想定すると、GPIFの運用が国内債券中心になっているのはまずいと思っていた。したがって、カルパースなどのように株式保有の割合を高めるべきだと単純に考えていた。

 記者会見でも、1階部分の年金制度だからといって、国内債券をたくさん抱えていたら、財政破綻で厚生年金などが大打撃を受けるのではないか、株式投資を増やすということもあっていいのではないかという趣旨の質問が出た。しかし、政府は財政健全化に本腰を入れて取り組む意思がないから、年金だけが運用で頑張っても、国家財政破綻になれば、同じようなもの、と、西沢氏は言っていた。

 海外からも日本財政の健全化をという声が徐々に高まってきている。だが、それに対する与党の前向きの取り組みはうかがえない。年金運用に対する安倍政権の姿勢も、本気で改革に取り組むのが嫌で、うわべだけ取り繕っているように受け取れる。日本の真の危機が迫っているのではないかと不安を覚える。

 

 

 

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