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2014年9月 2日 (火)

”ブラック企業”を考える

 最近の報道では”ブラック企業”という言葉をとんと見ない。景気が上向き、人手不足が顕著になってきたので、時給も上がり、労働市場は売り手優位になってきている。それに、ネットなどで”ブラック企業”と名指された企業が人手確保のため、長期雇用を増やすように雇用形態を変えてきているからだ。

 最近、近畿大学経営学部の中島敬方教授がこの”ブラック企業”をめぐる議論を整理して話すのを聞いた。それによると、”ブラック企業”というのは、①長時間労働、サービス残業などがひどい、②大量採用し、厳しい労働条件の中で成果を挙げた者だけが残る、③パワハラ、セクハラが常態化している―として、そこで働いたことのある人たちがネットに社名と体験などを書き込んだところを言うようだ。

 ”ブラック企業”と名指しされる企業の多くは法令無視、人格・人権無視、若者の使い捨てなど、反社会的な働かせ方をしてきた。したがって、名指しされた企業は採用・労働などのありかたを改める方向に行かざるをえなくなっている。しかし、ゲーム感覚で、安易に”ブラック企業”だというレッテルを貼ったり、不満を抱く一部の者が実態以上に誇張したりしている面もあるのではないか、と中島教授は指摘した。

 そして、学生が、「仕事が楽で給与など労働条件がいい会社」が優良企業であり、そういうところに就職したい、という安易な発想になりかねない、という懸念を教授は付け加えた。

 また、労働法令を守らせることは既存の枠組みで十分にできるはずだし、労働組合の組織率低下および機能低下の結果、ネット社会に怒りや不満のはけ口を求める動きが加速しているのではないか、という指摘もあった。

 話を聞いての感想だが、日本の社会では、長時間働くことをよくないことだとは思っていない。会社と労働組合とが合意すれば、月に100時間を超える残業であろうと、会社は社員に命じることができる法的な仕組みになっているのである。時間外賃金の割増率は月に60時間までは25%以上、60時間超だと50%、休日出勤は35%以上となっている。だから、収入を増やすために残業を歓迎するという意識もまだ残っている。

 しかし、職場に長時間いることは労働者の個々の家庭生活に相当影響を及ぼす。結婚、育児などには明らかに悪影響をもたらす。”ブラック企業”は人間らしい生き方を大切にしてこなかった歪みが表面化したということもできよう。

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