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2014年11月29日 (土)

戦前の昭和史20年の教訓

 『昭和史』(2004年刊、平凡社)の著者、半藤一利氏に対する朝日新聞のインタビュー記事「人生の贈り物」最終回(28日夕刊)に興味深い記述がある。「安倍政権の周辺には、かなりの知恵者、歴史を学んだ人がいて、先を見通し、きちっと作戦を練っている気がします」と。
 そして、その知恵者というのは、昭和史にもあった参謀本部のようなものと推察する半藤氏は、「昔の参謀本部は秀才が集まって、タコツボの中で戦略を練り、秘密を保持し、大いに誤った」、現在は、それと似ている気がすると締めくくっている。新聞記事の見出しは「タコツボの中で誤った昭和、今に似る」というものである。
 このインタビューで、同氏は、日本人とはどういう人間かを著書『昭和史』の最後に5つ書いたと語っている。同書を読むと、戦前の昭和史20年の教訓の第1は、日本人は熱狂しやすい。第2に、ものごとは自らの希望通りに動くと考える。第3に、タコツボ社会における小集団エリート主義の弊害。第4に、国際社会における日本の位置づけを客観的に把握せず、主観的思考に基づく独善に陥っていた。そして第5に、ことが起こったとき、場当たりの方策でごまかし、時間的空間的な大局観や複眼的思考が欠けていた。それに加え、根拠なく自己過信に陥ったり、ことがうまくいかなかったときの底知れぬ無責任、を指摘している。
 インタビューでは、日本人の本質は戦前と変わらないとし、「日本人は冷静に考えないまま、同じ方向に走るのが特徴」と言う。
 安倍政権が過去2年進めてきた政治が何をめざしているのか。半藤氏の昭和史に学び、その教訓を大事にして適切に判断していかなければならないと思う。

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2014年11月26日 (水)

消費増税見送りで財政再建の道は狭くなったという伊藤隆敏教授

 安倍内閣が消費増税を1年半延ばし、衆議院解散・総選挙に打って出た。それでは財政再建はどうなるのか、政策研究大学院大学の伊藤隆敏教授が26日、日本記者クラブの会見で語った。伊藤教授は去る11月4日、首相官邸で開かれた有識者会議で「来年10月に増税すべきだ」と述べたが、会見では、いまもその考えに変わりはないとし、その根拠を詳しく語った。
 伊藤教授の話で印象深かった発言内容を以下に紹介する。
①いまの暮らしでいいと思う人は多いが、いまの生活は年間40兆円余の国債発行に支えられている。即ち、後の世代に付け回しをして、身の丈以上の生活をしているのだから、切り下げが必要である。
②日本の潜在成長率は年1%あるかないかである。政府の経済見通しは2%だが、これを達成するのはかなり大変だ。年間40兆円の赤字を埋めるには社会保障費(年間30兆円)を半減し、他の歳出も減らすしかない。それらを踏まえ、消費税を10%にすべきだと考える。
③自然増収、歳出削減に加え、成長戦略法案が次々に通ったとしても、2020年にプライマリー・バランス(PB)はマイナスなので2019~2020年頃にもう一回、消費税を5%上げる(計15%に)必要がある。ここが財政再建のラストチャンスだ。
④今回の選挙で与党も野党も消費税引き上げ延期に反対しない。それが示すように、消費税の引き上げに賛成か反対かを聞くのはナンセンスだ。増税の話はパッケージで議論しないといけない。初めて提案するのだが、「逆景気弾力条項」を設けたらどうか。好景気が2~3四半期続いたら、自動的に消費税率を引き上げる(景気が悪化しても引き下げはしない)とか、平均余命の伸びるのに応じて社会保障の給付開始を遅らせるとか。また、後の世代から見て、給付が厚すぎるので、自動的に財政再建ができるようにする知恵が必要である。
⑤潜在成長率を上げることが財政再建の王道である。2%成長は人口減を考えると3%に相当する。3%成長を5年ぐらい続けるには、バブル時代に戻らないと。したがって、異次元の成長戦略をやってもらわないと、潜在成長率の大幅引き上げはむりだ。
⑥政治家は選挙で当選することしか考えない。したがって、財政再建は長期政権でなければ取り組まない。経済危機になってから増税するというのはだめだ。景気のいいときに上げるべきだ。
 記者クラブでは、会見の際に講師に記帳してもらう。伊藤教授は「最後の選択 狭い道」と記した。財政再建のための対策がきちんと行われなければ、2020年あたりで恐ろしいことが起こる、と同教授は言う。

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2014年11月25日 (火)

首相自ら”アベノミクス”と言うのは傲岸不遜ではないか

 衆議院解散、そして間もなく選挙戦が始まる。いまはその前哨戦の段階で、各政党は急遽こしらえた公約を発表しつつある。それらの内容は多岐にわたり、かつ重要なものが多いので、読んでいるうちに、これまでこれらの政党は何をしていたのかと腹立たしくなる。

 「多くの経済専門家の関心は今や、財政破綻や高インフレが「来るかどうか」ではなく「いつ、どんな形で来るか」に移っている」――日本経済新聞の24日付けコラムで、平田育夫氏(コラムニスト)は、国民の気付かぬ危機に言及している。衆議院議員選挙は近い将来に私たちを襲う経済社会の大混乱が大きな争点になるべきなのに、国民は巧みな目くらましにあっている。

 国の”借金”が1千兆円を突破し、さらに毎年、数十兆円もの借金を増やしている。それを止めて財政再建を図るには、消費税などの増税、社会保障関係の歳出の効率化・削減、公務員の削減・給与引き下げ、地方の自主・自立など国、地方あげて取り組む必要がある。

 良薬は口に苦し。財政健全化のため、上記の政策を国民に訴えて実行することで、日本の未来は拓ける。しかるに、安倍首相は「アベノミクス」などとメディアがはやすのを受けて、自らも平気でアベノミクス云々と言うようになっている。自分の経済政策をかつてのレーガン米大統領の「レーガノミクス」に並び称されるものと内心誇っているのかもしれない。そうなら傲岸不遜である。しかも、それが、財政破綻や高インフレに直結する危険性を国民に知らせようとしない。

 今度の選挙はおそらく日本にとって重大な岐路となる。

 

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2014年11月24日 (月)

消費増税を望ましいと思っても、それを主張する政党がないとは

 23日付け日本経済新聞のコラム「風見鶏」は「増税を望む人もいる」という見出し。この記事は読ませる。
 安倍首相が来年10月に予定されていた消費税の2%増税を1年半延ばすと言明、それを争点にして解散・総選挙に打って出た。しかし、経済財政諮問会議などの識者や経済界の首脳の中には、予定通り、来年10月に2%アップすべきだという意見の持ち主は多い。
 「税金を上げる」と「上げない」とを単純に比較すれば、「上げない」ですむなら、そのほうがいいに決まっている。しかし、国の財政は、歳出をいくらにするか、が先にあって、それをどうやって調達するか、である。調達は税金が基本なので、徴税で必要なカネが集まらないなら、借金(国債発行など)で賄うしかない。ただし、借金すれば、いずれ返さなければならない。それも利息付きでだ。これは、いまの世代が楽をして、のちの世代が借金の返済という重荷を背負うことを意味する。
 したがって、自民党・公明党は「将来の世代に借金という重荷を背負わせます」という公約を掲げているようなものである。先憂後楽ならぬ”先楽後憂”だ。格好よく言えば「play now pay later」、露骨な表現をすれば、「あとは野となれ山となれ」である。
 コラム「風見鶏」がずばり指摘するのは、亀井善太郎氏が言うように「国民にとっての不幸は、(消費増税)先送りがおかしいと思っても選挙でほかに選択肢がないことだ」。即ち、消費増税を当初予定通り、実施すべきだと主張する政党がないので、有権者の中で、ハイパーインフレにおびえるよりは、当初の予定通り増税したほうがましだと思う人は投票で意思表示したくても、そのすべがない。これでは投票に行かない有権者が増えるし、与野党への政治不信に直結する。
 そして、コラムは「万が一、金利の急騰やハイパーインフレが起きたとき、すべての政党が責任から逃れられないことを意味する」と述べ、ナチスが台頭したときのように、「既存の政党が国民の信を失い、極端なナショナリズムや耳に心地良い政策だけを掲げる新たな政治勢力が表舞台に出てきてもおかしくない」と指摘する。「民主主義は常に試されている」という締めの言葉は重い。 

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2014年11月20日 (木)

税収と国債発行とがほぼ同額の平成25年度一般会計決算

 財務省が平成25年度(2013年度)の一般会計決算概要を国会に報告した。歳入(収納済み)は106兆447億円で、歳出(支出済み)は100兆1888億円だった。歳入、歳出とも100兆円超だった。

 歳入は補正後予算では98兆769億円だったが、決算ではそれより8兆円ほど多かった。税収は46兆9529億円で、公債金収入が43兆4545億円だった。国債発行への依存度は4割を上回っている。それでも、決算では、税収が予算に比べ1兆6千億円程度増え、公債金収入が2兆円ほど予算より少ない。前年度剰余金として繰り越された10兆円余があったからだ。

 ところで、主要な税収をみると、所得税が15兆5308億円(補正予算比7458億円増)、消費税10兆8293億円(同1803億円増)、法人税10兆4937億円(同4287億円増)と、予算を上回り、景気がよくなったことを示している。そのほかでは、揮発油税が2兆5743億円、相続税1兆5743億円、酒税1兆3709億円、たばこ税1兆375億円、関税1兆344億円などとなっている。 

 また、雑収入が4兆5909億円あり、内訳は日本銀行納付金が5767億円、日本中央競馬会納付金2595億円などである。

 他方、歳出は補正後予算では105兆7654億円だったが、決算ではそれより5兆円余、少なかった。内訳をみると、社会保障関係費が29兆2320億円、国債費21兆2935億円、地方交付税交付金17兆5534億円で、これら主要3項目だけで58兆789億円と歳出全体の6割近くを占めた。

 社会保障関係費の内訳では、年金医療介護保険給付費が21兆8296億円、生活保護費が2兆7951億円、社会福祉費3兆8585億円などとなっている。また、公共事業関係費は7兆9752億円、防衛関係費4兆7922億円、文教及び科学振興費6兆1614億円だった。

 少子高齢化などによる財政負担増を考慮すると、消費税を10%に引き上げることは可及的速やかに実施せねばならない。極端な国債依存度を下げて財政破綻を避けるためにも、硬直的な歳出構造を転換する必要がある。国民は本気で財政再建に取り組む政党および政治家を総選挙で勝たせねばなるまい。

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2014年11月18日 (火)

GDPの落ち込みが解散・総選挙の理由になるのか

 7~9月のGDP(国内総生産)が速報値で年率マイナス1.6%だったのを理由に、安倍政権は来年10月の消費税2%引き上げを1年半延ばすことにし、国民に信を問う衆議院解散・総選挙に打って出るという。自民党と連立を組む公明党もそれに賛同している。野党の各党とも、不意打ちのような解散・総選挙に対応するため、野党間の共同歩調を模索するなどあわただしい。そして、国民は「どうして選挙なの?」とあっけにとられているようだ。
 安倍政権はどんな政策をとり、成果はどうだったか。振り返ってみると、軍事・外交に力を入れたが、それ以外ではめぼしい成果をあげていない。これまでの非戦・平和志向を改め、集団的自衛権容認など戦争がしやすい態勢づくりに力を入れてきた。また、アジアにおいて中国が力ずくの拡張政策をとっているのに対抗するため、途上国に経済援助などを約束してきた。
 他方、内政面ではデフレ脱却を図る”アベノミクス”を提唱し、先陣を切って日銀が量的緩和、ゼロ金利政策を実施。公共事業を大幅に増やしたり、企業の賃上げを誘導したりした。しかし、アベノミクスの核となるべき経済構造改革はきちんと行われず、ことし4月の消費税3%引き上げ後の日本経済は、円安の影響もあり、回復が遅れている。
 地方経済の衰退傾向にどう歯止めをかけるか。従来のばらまき政策を改め、地域の主体性を重んじつつ、地方を活性化するという難題に対しても、安倍政権は明確な処方箋を示していない。農業改革も中途半端な段階にある。
 何より問題なのは、財政再建の一歩となる消費税の引き上げを先延ばしすれば、1000兆円を超えた国の”借金”の削減が一段と困難になることである。日本政府が財政再建をおろそかにすれば、金利、円レートなどで危機的状況が起きてもおかしくない。
 また、国会議員の定数是正など選挙制度の改革をしないまま、衆議院の解散・総選挙に踏み切るなど、国民を愚弄しているとしか言いようがない。野党の各党も、”アベノミクス”にのまれ、安倍政権に太刀打ちできる態勢づくりを急ぐことを怠ってきた。そこにつけこまれたようにみえる。 
 今回の解散・総選挙は7~9月のGDP速報値をきっかけにしている。しかし、GDP至上主義とでもいうか、GDPに一喜一憂するのはいささか疑問がある。まず、速報値は所詮、速報値であり、確報値とはかなり異なることがある。住宅投資が減ったのを良くない指標と見ているようだが、空き家がたくさんあるのを考慮すれば、住宅投資の落ち込みは至当ではないか。
 GDPとかGNPというのは、増えなければいけないものか、という根源的な問いもなされている。GDPという指標には、環境負荷、地域社会保全、生活の質や倫理性などの要素を織り込んでいない。したがって、地球という有限な世界で、GDPを指標にして経済成長を図り続けることは人類の滅亡につながるからである。
 最近、ブループラネット賞(旭硝子財団)を受賞したハーマン・デイリー氏(米メリーランド大学公共政策学部前教授)の講演を聴いた。氏は著書「成長を超えて(BEYOND GROWTH ~ The Economics of Sustainable Development)」、「定常経済学(Steady-state economics)」などで、GDPを物差しとする経済成長重視に対し、厳しい批判をしてきた。同氏の講演を聴いたあとだけに、安倍首相が衆議院解散・総選挙に踏み切ったことに強い違和感を持つ。 
 

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2014年11月12日 (水)

中国漁船の赤サンゴ密漁を放置する国会

 中国漁船が大挙して日本の領海などで赤サンゴを根こそぎ獲っている。小笠原諸島の住民などは日本政府に対策をとるよう要請している。しかし、海上保安庁は追い払う、現行犯で捕まえる、処罰(罰金)するなどの対策をとっているが、多勢に無勢。しかも、船長らが捕まっても罰金を払えばすぐ釈放されるため、巨額の利益が得られる密漁を抑制する効果はない。

 中国の密漁船に好き勝手に資源を収奪されているばかりではない。貴重な資源を根こそぎ獲っていくので、日本の赤サンゴが絶滅してしまうおそれがある。また、中国漁船の出没はホエール(鯨)ウオッチングなどの観光事業にも打撃を与えつつある。

 日本の領海において、このように中国漁船による資源収奪など無法がまかりとおっているのは、国民に「政府は何をしているのか」という不信を抱かせる。日中関係が厳しく、北京におけるAPECの会議で、安倍首相と習近平国家主席がようやく会談できたという状況にあるとはいえ、赤サンゴ密漁を止められない日本の政府は、法治国家の体をなしているのか、疑わしい。

 また、国会はこの問題を最重要課題として、密漁の摘発をやりやすくし、かつ刑事罰を中国並みに厳しくする法律をつくるべきなのに、国会議員の皆さんは手をこまねいてきた。行政府も立法府も、国民の気持ちに寄り添う政治から離れたままだ。

 そんなところに衆議院解散、総選挙の風がにわかに吹き始め、政党、議員の活動が選挙一色に染まりそうな気配である。任期の半分が過ぎたから解散・総選挙という口実は全く納得できない。財政が厳しいおりに総選挙実施で歳出を増やすのも賛成できない。

 赤サンゴ密漁対策は無論のこと、国政上、大至急、立法が必要な分野は少なくない。それを放置して安倍政権が衆院解散に踏み切るとしたら、それは消費税再引き上げを口実に、別のことを狙っている可能性がある。例えば憲法改正とか。

 野党は弱小の政党ばかりで、足並みをそろえることも難しい。それが、安倍政権の早期解散を誘っているのだろう。この際、日本の野党政治家がよほど覚悟して強い対抗勢力づくりに結集しなければ、日本の未来は危うい。

 

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2014年11月 8日 (土)

石川文洋写真展で実感する戦争の悲惨さ、愚劣さ

 横浜の日本新聞博物館で開催中の石川文洋写真展「ベトナム戦争と沖縄の基地」を見てきた。ベトナム戦争は自由主義世界のチャンピオンである米国が、ベトナムで拡大しつつあった共産主義勢力を本気で制圧しようとしたものの、勝てず、撤退せざるをえなかった戦争である。この戦争で米国は経済的、精神的なひずみを抱え、かつての勢いを失い、それが今日にまで尾を引いている。
 写真展によれば、1965年から73年までに米国が使用した爆弾は424.6万tに達する。太平洋戦争で米国が日本に対して使った爆弾の約26倍だったという。当時の関係者も、いまになってみれば、なんと馬鹿げたことをしたものかと心のどこかで反省しているのではないか。
 石川氏のベトナム戦争の写真が強く訴えてくるのは、戦争とは殺し、破壊すること、兵士ではない一般の人たちも悲惨な目にあうということである。
 そして、石川氏が生まれた沖縄、そこもまた、太平洋戦争末期、戦場となり、住民はベトナム戦争の住民同様、殺され、破壊され、悲惨な目にあった。その傷跡はいまも家族や暮らしなどに残っている。そして、ベトナム戦争時、沖縄は、米軍のベトナム攻撃の拠点となり、今日も極東における米軍の最大の基地となったままである。
 私は数年前にベトナムを訪れ、同国が経済発展を遂げているさまを見てきた。かつては地下にトンネルをはりめぐらし、敵の米国兵を狙撃し、恐怖におとしいれたベトナム解放軍だが、いまや経済発展、生活向上などで両国間は恩讐のかなたである。地下トンネルは格好の観光見物になっている。そうした現実からみると、戦争がいかに愚劣か、が一目瞭然である。
 写真展から離れて世界を見れば、戦争、軍事的紛争は、今日、減るどころか、逆に増えている。政治的イデオロギー、人種、宗教などの対立が原因だが、武器・兵器・弾薬などを消耗品のように生産し、供給・販売するビジネスが対立をあおっている面もある。世界は平和に向かって歩んでいないのである。
 写真展を見て、いろいろ考えさせられた。

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2014年11月 6日 (木)

『人類は80年で滅亡する』(西澤潤一他著)が現実味を帯びてきた

 国連の気候変動に関する政府間パネル、いわゆるIPCCがこのほど統合報告書をまとめ、発表した。科学的見地からの地球温暖化の進行および将来予測、温暖化への適応および緩和策をパッケージで取りまとめたものである。
 すでに地球温暖化は氷河の後退、海面上昇、豪雨、干ばつなど、さまざまな天変地異を引き起こしており、放置しておけば、ますます人類の生活基盤を脅かすことは必定とされる。そこで、IPCCの報告書は工業化以前と比較した温度上昇を2度未満に抑制することを求め、温室効果ガスの排出量を2050年までに2010年比40%~70%削減し、今世紀末までにほぼゼロにする必要があると結論づけている。化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出を抑制するのは無論のこと、二酸化炭素の地中埋蔵など、あらゆる方策で大気中の温室効果ガス量を抑制することが破局回避に求められている。
 1992年のリオ地球サミットで世界が取り組み始めた地球温暖化対策は、京都議定書などの若干の進展はあったが、アウトサイダー、中国の経済発展によって温室効果ガスが急増。同じくアウトサイダーの米国も排出抑制にコミットしないで今日に至っている。EUはこれまでも温暖化対策で独自の道を歩んでいるが、中国、米国、ロシアなどの各国の抵抗もあり、世界全体として温室効果ガス削減で大きな前進は望めないのが現実。
 2000年に西澤潤一東北大学教授らが出した『人類は80年で滅亡する』は、CO2地獄で人類は21世紀中に滅びるおそれがあるとし、主に工学的な視点から「CO2地獄からの脱出」策を説いている。この14年も前に出版された本が”予言”した道を世界は歩んでいるのではないか。
 ところで、今年9月発行の『日本の感性が世界を変える』(鈴木孝夫著)は、地球環境問題を解決するため、鎖国の江戸時代の経験を世界に広めることを提案している。
 温暖化は、地球という閉鎖社会の中で、これ以上、人類が物理的な拡大を求めることを許さない段階にきている。したがって、閉鎖社会の中で、人類が争わず共存して生き延びるには、無駄な資源浪費もなく、自然環境に過度な負担をかけないソフトな生き方が必要である。それには江戸時代のような生き方を世界に広める必要があると著者は訴えている。可能な限り衝突を避け、自分を抑え、相手を立て、友好的な人間関係を維持するために気をつかう日本の文化も温暖化問題に直面している人類に不可欠だと言う。
 地球温暖化が人類滅亡をもたらすおそれはかなりある。したがって、世界は戦争したり、宗教対立で殺し合ったりとか、よその国と些細なことでいがみあっているようなゆとりはないはずだ。鈴木氏の本は、そうした対立の愚劣さを気付かせてくれる。

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2014年11月 2日 (日)

公的年金の運用方針変更

 9月27日のブログ「公的年金運用改革に不可欠な財政健全化」で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が内外株式および海外債券の保有比率を高め、国内債券の保有比率を下げようとしている動きを取り上げた。その中で、年金問題に詳しい西沢和彦氏の意見を紹介した。欧米では、年金のうち、国民の誰にも支給される基礎的な年金については、運用リスクの少ない国内債券で運用しているとのことだった。
 だが、10月31日に塩崎厚労相が認可した新しい運用方針は、国内債券の保有比率を60%(±%)→35%(±10%)に引き下げ、国内株式12%(±6%)→25%(±9%)、海外株式12%(±5%)→25%(±8%)、海外債券11%(±5%)→15%(±4%)とリスク/リターンの度合いが大きい資産の保有比率を高める、というものである。
 毎年の運用成果を年末の保有資産で割った収益率をみると、2001年度マイナス1.80%から、02年度マイナス5.36%、07年度マイナス4.59%、08年度マイナス7.57%、10年度マイナス0.25%と、5年も資産縮小の憂き目にあっている。GPIF設立以降の2006年度~14年度第一四半期までの収益率は2.52%と低水準である。130兆円近い運用資産が新たな運用方針によってもっと高い運用成果を上げられるか否か、それは米欧の経済発展や金融市場の動向、さらには運用担当者の能力にかなり左右されるだろう。
 そうした運用で高い成果が得られればよし。さもなければ、年金支給財源が不足し、何らかの方法で穴埋めしなければならなくなる事態も予想される。年金制度を安定的に存続するには、加入者の確保、支給開始年齢の引き上げ、年金支給額の引き下げといった措置も必要になるかもしれない。
 GPIFの委員会名簿を眺めたら、これが130兆円ものおカネの運用に責任をもってあたる人たちか、と不安になった。独立行政法人という役所がお飾り的に外部の有識者を集めただけではないか。GPIFの設立前、やはり厚生官僚が運用の責任者で、天下り先づくりに投資して損を出したことを思い出す。基礎的な年金については、欧米主要国のように、国内債券中心の運用で行くのがまっとうではないかと思う。

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