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2014年12月31日 (水)

尖閣をめぐる軍事紛争を懸念する

 中国の国家海洋局が「釣魚島――中国固有の領土」というサイトを30日に開設したという。日本が固有の領土だと主張する尖閣諸島(中国は釣魚島と呼ぶ)について、中国は自国の領土だという主張を広く世界に訴えていこうというわけだ。
 この日も、中国公船が尖閣沖の日本の領海に侵入したが、中国政府はサイト開設で、尖閣の領有権をめぐって新たな攻勢に出たと言えよう。
 中国政府はここ数年、日本との間に領土をめぐる紛争があることを日本政府に認めさせようとしてきた。しかし、日本がそれを認めないため、中国公船や軍艦を尖閣諸島方面にしばしば出動させ、しばしば、領海侵犯をしてきた。それによって領土問題が存在することを日本側に認めさせようとしてきた。
 それに対し、日本政府は海上保安庁の巡視船を派遣したりしており、巡視船の新規建造にも着手している。また、万が一、中国側が尖閣に武力行使で侵略してきた場合には、安全保障条約により、在日米軍と連携して対処する構えだ。
 このように緊迫した状況をどう考えるべきか。「メディア展望」(新聞通信調査会発行)12月号に毛利和子早稲田大学名誉教授が書いた「進む大国化、共産党の大変身」は参考になるのではないか。
 中国は「外交の手段として軍事行動を取る」ことがあり得ると毛利氏は指摘。1979年の中越国境紛争で、中国が中越国境を越えて軍隊を送り、ほぼ2週間ぐらいの限定戦争をし、計画的にさーっと退いたケースを挙げた。それを念頭に、毛利氏は、中国が「政治的な目標、外交的な目標を達成するために、極めて限定的に軍事力を使うことがあり得る」と述べ、「尖閣をめぐって中国がそれをやるのではないかと私は大変恐れている」と語っている。
 もし、そんな事態が生じたら、日本は「全面的な軍事行動で対抗することになりかねない」と毛利氏は言う。そして、両国の軍関係者が集まってリスク管理体制をつくるとか、両国の首脳会談を突破口にして対話の窓を開けていかなければならないとも述べている。
 日中政府間の関係は、きわめて危険な段階にある。軍事紛争につながりかねない対立をいかに上手に管理するか。2015年の対外関係の大きな課題ではないか。

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2014年12月28日 (日)

抑制なき借金財政のゆくえ

 毎年、暮れになると、きまって補正予算案が組まれる。春に政府が年度予算案を決め、国会で審議して決めたあと、何ヵ月かの間に、予測しない事態が生じ、予算の見直しが必要になるのはわかる。

 しかし、補正というのは追加と同義ではないはずだ。当初予算を見直して、不要になった、あるいは減額したほうがよいという歳出項目もありうる。それらのうち、まだ中止可能な予算は削減するのが筋だ。また、景気の上昇などで、税収が当初予算よりも増えた場合、それを赤字国債などによる”借金”の削減に充てるべきなのは言うまでもない。

 景気が悪い時に”借金”による景気刺激策をとり、景気がよくなったとき、増えた税収を”借金”返済に充てる。というのが健全な財政政策である。しかし、日本国の財政は、”借金”を積み重ねることで先進国では類のない巨大借金国になってしまった。その異常な事態に与党も政府も不感症になってしまっている。野党もだ。

 安倍政権はアベノミクスの効果が行き渡ることを優先しているが、それは赤字国債の大増発を続けることを意味する。財政破綻への道をひた走りに走っているとしか思われない。

 では、国会がそうした財政政策を十分に審議して予算案を成立させているか、といえば、審議らしいものはほとんどみられない。野党議員は財政を深く勉強して、補正予算案の審議を実のあるものにしてほしい。

 ところで、最近、相続税の重税化にからんで、与党が非課税措置をいろいろ導入しようとしている。高齢者が子や孫に無税でおカネを贈与する範囲を拡大するといったケースだ。高齢者の貯蓄を消費などに向かわせるというねらいもあるが、政府が国会審議を経ることなく、政省令改定で相続税の課税強化に踏み切ったため、資産保有層が資産を海外に移転させるなど反発が起きているからでもある。

 税は民主主義国家を支える根幹である。だが、この相続税強化は、役人の考えだけで極端な増税になっていて、国会がこの問題を十分に審議した形跡は見られない。

 アベノミクスは金融、財政の膨張、および民間経済活動への介入によって景気を押し上げようとしている。しかし、それらの副作用というか反動の大津波がいずれ襲ってこよう。そうした危機を予想して、国民経済の混乱をできるだけ抑える備えが必要である。政治の抱える課題はとほうもなく大きい。 

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2014年12月23日 (火)

長時間労働を減らすには

 中国の上海市中には、中国人の守るべき価値観12項目が貼り出されているという。12項目とは、「富強、民主、文明、和諧、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業、誠信、友善」。同じような漢字を使っているからといって、日本語と同じ意味だとは限らないが、なかなか興味深い。

 日本人としては民主、自由、平等、公正、法治などという言葉が、およそ民主国家と正反対の中国で唱えられているのには違和感を抱いてしまう。上海人も、この12項目の掲示には目もくれないらしい。スローガンは政治的なもので、庶民には関係ないということだろう。だが、個人的には、なぜ、この12項目を突然、掲げるようになったか知りたいところだ。権力闘争か何かが背景にあるのだろう。

 以上は前置き。厚生労働省が「今後の長時間労働対策について」を発表した。過労死等防止対策推進法が議員立法として成立したのを受けて、「長時間労働削減推進本部」を9月末に設置した。その下に、過労死を引き起こす長時間労働を減らすための「過重労働等撲滅チーム」、「働き方改革・休暇取得促進チーム」、「省内長時間労働削減推進チーム」を設けており、新たに来年1月、各都道府県労働局に「働き方改革推進本部」を新設する、という。

 この「働き方改革推進本部」では、都道府県労働局長や労働基準部長が地域の企業に対し、自主的に働き方を見直すよう働きかけることにしている。その際、地方自治体や労使団体などとも連携して、気運の醸成などにも努めるという。

 過労死を招くような長時間労働の削減は誰にとっても望ましい。だが、これまでろくに進まなかった。したがって、過労死等防止対策推進法の制定や厚労省の長時間労働削減推進本部の設置などが、単なるスローガンにとどまるおそれはなくはない。

 問題は、残業で稼ぐのが当たり前になっている現実をどうやって改めるかだろう。いまは労働組合自体が三六協定で長時間残業を肯定しているのである。答えの1つは、時間外労働賃金の割増率を50%以上とか休日100%へと高くすることではないか。そうなれば、経営側が時間外労働を減らそうとするだろう。そのためには、労働運動がもっと闘争に本腰を入れる必要がある。

 労働を終えてから次の就労までの間が少なくとも11時間は空いていなければならない、という法規制を設ける必要がある。このILO(国際労働機関)のルールを、日本国はいまだ法制化していない。政府は労使の主張を超えて、働く者を護ることに徹すべきではないか。

 厚労省は、都道府県の働き方改革推進本部の設置にあたって、仕事と生活の調和を図ることができる環境の整備だとか、地域の特性を生かした魅力ある就業の機会の創出などといったスローガンを掲げ、「地方創生」につなげる、と言っている。しかし、どうにも美辞麗句くさい。お役所仕事にとどまらないことを望む。

 

 

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2014年12月21日 (日)

出光の昭和シェル石油買収に驚く

 国内石油精製販売の大手、出光興産が昭和シェル石油を買収する交渉を進めているというニュースには驚いた。1966年に初めて出光興産を取材したときのことを思い出した。創業者の出光佐三氏が店主(社長)で、天皇を崇敬するため、皇居が見えるビルの上階に本社のオフィスを置いていた。いまの本社オフィスも皇居がよく見える。出光美術館もそうだ。
 出光はずっと石油連盟のアウトサイダーで、一匹狼のようにみられていた。それが、精製・販売の体制が確立したのをきっかけに業界団体の石油連盟に加入したばかりの頃だった。それでも、幹部連中は日本石油なにするものぞ、といった威勢のいい人が多かった。社員は皆、家族だという発想の経営なので、定年退職といった制度もなく、労働組合もなかった。
 役員室には、茶室があり、店主自らが客人を迎え入れていた(実際のそうした場面は見たことがないが)。当時、山種証券の創業者、山崎種二氏がやはり茶室を本社内に持っていたのを見たことがあるから、山崎、出光の両創業者のことは忘れられない。
 出光佐三氏はイランの石油国有化で世界が緊張状態にあった頃、タンカーを一隻、同国に差し向けて、イラン原油を輸入したことで世界をアッと言わせた。宗像神社への信仰厚く、美術品の収集などでも知られた佐三氏だが、独自の経営理念を持っていて、知る人ぞ知る第一級の人物だった。私が会ったりしたときは90歳ぐらいだったと思うが、もう鋭い感じは陰にひそめ、どちらかといえば、好々爺という印象を受けた。
 出光といえば、このように、独自の企業文化を持つ会社とみられてきた。それが出光一族が経営トップに就かなくなってから、企業風土が少しずつ変わってきたのではないか。2006年の株式上場は、この変化を象徴するように思う。また、早くから海外への事業展開に着手した。1960年代に米国でガソリンスタンドを経営したこともある。石油の販売および精製中心から、海外で石油、石炭などのエネルギー資源開発に積極的に乗り出していく過程で、家族主義の企業風土が開放的になっていったのではないか。
 かつては業界内で異端ともみられた出光興産は来年、昭和シェル石油を買収し、国内外での事業拡大をめざす。昭和シェル石油自体も、外資と民族資本とが統合した会社である。グローバルな競争のもとでは、企業体質が異なるところがあるにしても、企業規模拡大こそが競争を勝ち抜くという考えがそこにうかがえる。
 かつて取材したことがある企業が数十年というレンジでみると、様変わりすることがある。それはとても興味深い。
 

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2014年12月14日 (日)

日本企業が弱くなったわけを学ぶ

 有力な日本企業が競争力を失う――そんな事例が相次いでいる。さまざまな理由があると思われるが、イノベーションマネジメントの専門家である藤村博之法政大学経営大学院教授の話は傾聴に値するものだった。

 同氏の話で私なりに解釈した重要な指摘は、第1に、企業はカネの結合体であると共にヒトの結合体である。経営者はカネのほうを重視するが、ヒトの結合体をおろそかにすれば、カネの結合体も成り立たなくなるという。

 第2に、共通の目的に向かって力を合わせて動き出すとき、人間集団は組織になる。組織は構成員が徹底的に議論してこそ元気になる。管理職はやめる業務を判断することを求められるし、上位の者と交渉しないと部下の信頼を得られない。

 第3に、日本企業は異常対応力の低下、即ち、重大事故につながる異常を察知する能力を軽視する傾向がある。マニュアル化が行き過ぎてしまい、なぜ、これをやるのか、もっといいやりかたがあるのではといった工夫、改善が行われるようなガイドラインが必要である。

 第4に、日本企業は競争力がヒトの中に蓄積されるのを軽視。もっぱら競争力の源泉をコスト引き下げに求め、過度の人員整理を行なった。また、ヒトを育てる余裕を失っている。

 第5に、日本企業の職場は元気がない。従業員が楽しそうに仕事をしていない。チャレンジしなくなったし、管理職になりたがらない若手が増えている。メンタルな問題を抱える者が増えている。

 第6に、労働組合は経営側に協力して賃上げを我慢してきた。それでかえって、日本企業の競争力が弱くなった。

 こうした多くの問題を抱える日本企業を活性化するにはどうしたらよいか。藤村教授はさまざまな指摘をしたが、その中で重要なのは、労働組合の役割である。経営チェックの機能だけでなく、能力育成の場としての労組の役割などを挙げた。

 いまの日本の労働組合は、もっぱら会社側に配慮した賃上げなど穏当な活動にとどまり、残念ながら、単組を超えて、社会をよりよくするための運動という視点が乏しい。藤村教授の話は、そうした問題点の克服にもつながる広がりを秘めているだろう。

 

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2014年12月13日 (土)

言論NPOの”安倍政権の通信簿”を見て

 特定非営利活動法人言論NPOが「安倍政権2年の通信簿」を作成し、発表した。総合評価(11分野)は2.5点(5点満点)で、1年前の通信簿の2.7点より低かった。分野別にみると、農林水産が上がり、外交・安保、政治・行政改革のそれぞれも若干上がったが、エネルギー、経済再生(アベノミクス)、地方再生、財政、復興・防災、教育、社会保障などはかなり評価が下がっている。
 評価点が2.0にとどまっているのは、財政、社会保障、エネルギー、地方再生、憲法改正と5項目もある。いずれもこの国のこれからを左右する、きわめて重要な分野ばかりである。それらで、国民に理解され、納得される政治・政策を安倍政権が推進してはこなかったというのは、国の将来に不安を抱かせる。
 言論NPOの工藤泰志代表は通信簿の発表文書において、「私たちはマニフェスト至上主義ではありません」と言い、「日本の政治が、日本が直面する課題解決に取り組む十分な力を持っているのか、それを国民に誠実に説明しているのか」、そして、この通信簿が「有権者と政治の間に緊張感ある関係をつくるためのきっかけになってほしい」と述べている。
 私なりの受け止め方をすれば、通信簿の成績が低下したということは、いまの政権が国民とともにあるべき民主政治から遠くなっていることを意味する。日本は前途多難である。
 

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2014年12月 6日 (土)

安倍首相のブレーン、本田悦朗氏の話を聞いて

 静岡県立大学の本田悦朗教授といえば、安倍首相のブレーンで、アベノミクスを推進する内閣官房参与。昨日(5日)、日本記者クラブで、アベノミクスと消費税10%の1年半先延ばしに関して講演し、質疑を行なった。
 安倍首相とは30年ほど前に知り合い、その後、2011年にロンドン勤務から帰国したとき、同教授はデフレについて心配している安倍さんと同じ考えだった、とアベノミクスの発端を紹介した。
 本田氏によると、デフレとは物価以上に賃金が下がることで、日本は15年~20年も物価が下がっていた。デフレのもとでは、企業も消費者も貯蓄にはげむのが最適な行動であり、その結果、若い人が集中的にダメージを受ける。そこで、2011年後半から12年夏まで、安倍首相に何回か会い、「数値目標を立てて思い切った金融緩和をやろうということになった」という。緩やかなインフレ率を国民に予想として持ってもらう、そうすれば、皆がそれを前提に行動するようになるので、インフレ目標が自己実現するという。このように将来予想を変えることがアベノミクスの目的だと述べた。
 来年10月の消費税2%引き上げについては、本田氏はもともと反対だったと言い、「3党合意という固定観念に皆がとらわれていた。私は疑問点を与党の政治家などにぶつけた。それで潮目が変わってきた。安倍さんが解散総選挙を言い出したから、彼の強い意思が浸透し、長老ら、皆の態度が変わった」と語った。そして、「2%のインフレは来年の終わりまでに実現する」、「2016年10月頃、デフレ脱却宣言できよう」と見通しを語った。
 一方、日銀の大量国債購入は”財政ファイナンス”ではないかとの批判に対しては、「政府は資金調達、日銀は流動性供給、と建て前は違うが、財政ファイナンスに近いことが現実に起こっているのは確か。それで、何が悪いのか。かつて高橋是清は赤字国債を日銀に引き受けさせ、デフレ脱却に成功した」と反論した。
 このほか、「日本経済には、協調・協力、政府との補完関係がある」とか、「日本の資源を活用すべきだ」など、安倍首相のブレーンであることを感じさせる発言が相次いだ。そして、「成功への道 アベノミクス この道しかない」と自信たっぷりだった。
 なんとか長期デフレから抜け出せそうになっているのは、政府の強引な政策や指導にもよるが、安倍政権の功績と言えよう。しかし、GDPの2倍にも達した国の”借金”の削減や、日銀の財政ファイナンスの後始末など、まじめに考えたら深刻な問題について、本田教授はデフレ脱却後に考えればよい、と考えているのだろうか。そこが気になった。

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2014年12月 3日 (水)

ムーディーズが日本国債を格下げ

 米国の格付け会社、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが12月1日、日本国債の格付けを1段階引き下げた。上から4番目のAa3だったのが5番目のA1とされた。安倍政権が来年10月の消費税2%引き上げを1年半先に延ばしたことで、財政赤字の削減目標(2020年にプライマリーバランスをゼロに)達成が危ぶまれるからである。

 ちょうど衆議院総選挙が始まり、財政再建が争点の1つに上げられている。GDPの2倍に及ぶ”借金”を減らしていくには、思い切った歳出の削減、消費税増税、経済成長の3つが必要だが、ほとんどの政党はそれらに真っ向から取り組む構えを示していない。

 ムーディーズの格下げは、そうした日本国内の政治動向を踏まえて行なわれたものと思われる。過去、日本では”外圧”を受けると、まじめに問題に取り組むようになる傾向がうかがえた。果たして、今回はどうか。

 今回の格下げは、金融市場のメンバーである格付け機関――それも外国の会社――が行なったもので、日本政府、日銀、民間金融機関などへの警報と受け取るのがいいのではないか。「アベノミクス」に対する疑念を表明したという見方もできる。

 日米間のさまざまな経済摩擦においては、日本政府は国内の抵抗勢力を抑えるため、”外圧”を積極的に利用した。しかし、今度の格下げは、それらとは違い、日本政府や利害関係者に対し、市場そのものが、財政健全化に取り組まないと大変なことになりますよという無言の圧力をかけていると思っていい。

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