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2014年12月21日 (日)

出光の昭和シェル石油買収に驚く

 国内石油精製販売の大手、出光興産が昭和シェル石油を買収する交渉を進めているというニュースには驚いた。1966年に初めて出光興産を取材したときのことを思い出した。創業者の出光佐三氏が店主(社長)で、天皇を崇敬するため、皇居が見えるビルの上階に本社のオフィスを置いていた。いまの本社オフィスも皇居がよく見える。出光美術館もそうだ。
 出光はずっと石油連盟のアウトサイダーで、一匹狼のようにみられていた。それが、精製・販売の体制が確立したのをきっかけに業界団体の石油連盟に加入したばかりの頃だった。それでも、幹部連中は日本石油なにするものぞ、といった威勢のいい人が多かった。社員は皆、家族だという発想の経営なので、定年退職といった制度もなく、労働組合もなかった。
 役員室には、茶室があり、店主自らが客人を迎え入れていた(実際のそうした場面は見たことがないが)。当時、山種証券の創業者、山崎種二氏がやはり茶室を本社内に持っていたのを見たことがあるから、山崎、出光の両創業者のことは忘れられない。
 出光佐三氏はイランの石油国有化で世界が緊張状態にあった頃、タンカーを一隻、同国に差し向けて、イラン原油を輸入したことで世界をアッと言わせた。宗像神社への信仰厚く、美術品の収集などでも知られた佐三氏だが、独自の経営理念を持っていて、知る人ぞ知る第一級の人物だった。私が会ったりしたときは90歳ぐらいだったと思うが、もう鋭い感じは陰にひそめ、どちらかといえば、好々爺という印象を受けた。
 出光といえば、このように、独自の企業文化を持つ会社とみられてきた。それが出光一族が経営トップに就かなくなってから、企業風土が少しずつ変わってきたのではないか。2006年の株式上場は、この変化を象徴するように思う。また、早くから海外への事業展開に着手した。1960年代に米国でガソリンスタンドを経営したこともある。石油の販売および精製中心から、海外で石油、石炭などのエネルギー資源開発に積極的に乗り出していく過程で、家族主義の企業風土が開放的になっていったのではないか。
 かつては業界内で異端ともみられた出光興産は来年、昭和シェル石油を買収し、国内外での事業拡大をめざす。昭和シェル石油自体も、外資と民族資本とが統合した会社である。グローバルな競争のもとでは、企業体質が異なるところがあるにしても、企業規模拡大こそが競争を勝ち抜くという考えがそこにうかがえる。
 かつて取材したことがある企業が数十年というレンジでみると、様変わりすることがある。それはとても興味深い。
 

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