« 長期エネルギー見通しで原発をどう位置づける? | トップページ | 信頼と合意に基づく財政再建の道とは »

2015年2月 4日 (水)

イスラム国巡る池内恵氏インタビュー(読売)は必読の価値あり

 4日付け読売新聞のネットで、「若者はなぜイスラム国を目指すのか」と題する池内恵東大准教授へのインタビュー記事を読んだ。
 池内氏によれば、イスラム教スンニ派過激組織である”イスラム国”に外国から戦闘員が参加している理由を知るには、まず、イスラム国が掲げるグローバル・ジハードの理念や歴史を、と説明する。アルカイダのビンラーディンが実行した9.11テロに対し、米国が壊滅的な打撃を与えた結果、アルカイダはジハード戦士を勧誘するなどインターネットを駆使した分散型の組織に転換した。しかし、望むらくはジハード戦士が集まれる拠点(解放された戦線)が欲しい。
 米軍のイラク撤退および2010年からの「アラブの春」が頓挫した結果、中東地域の揺らぎがひどく、そこで、アルカイダはイラク北部・西部、シリア東部・北部で現地住民の支持を広げ、かつ反対する者を殺害するなどして支配地域とした。解放された戦線ができ、世界中からジハード戦士が集まる条件が整ったという。
 戦闘員の半分ほどが近隣アラブ諸国から来ており、彼らはアッラーの教えに反する支配者をジハードで倒すのはムスリムの義務と考えている。そして、コーランには、「信仰なき者といざ合戦という時は彼らのクビを切り落とせ」とあり、法学書によっては、支配下に置いた多神教徒に改宗、殺害、奴隷化といった選択肢があると記しているという。従来は、イスラム法学者が穏健な解釈をしていたが、いまや彼らは御用学者とみなされていて、インターネットで文献に当たり、過激な解釈が行われるようになっているようだ。
 欧米からイスラム国に行く人はイスラム教徒の移民・難民の子孫だが、欧米でそれなりの学歴を持ち、生活水準が比較的高い層だという。なぜか。池内氏は、近代自由主義に生きる人間の固有の問題が現れていると指摘する。エーリヒ・フロムの『自由からの逃走』、即ち、自分がなすべきことを自分で決めるのはしんどい、それよりも、何かの権威に従えれば自分で決めないですむ、ということではないかと言う。イスラム教の「神の啓示」はなすべきことをすべて教えてくれるというわけだ。
 このほか、池内氏は、宗教の自由は中東にはなく、正しい宗教と劣った宗教とは厳然と区別され、それが政治権力により施行されていること、その上で平和と寛容がある、と、日本人のイスラム理解不足に注意を喚起した。
 イスラム国の問題を解消するには、イスラム諸国の統治能力を強くし、解放された戦線をなくすこと、およびイスラム教における近代的な思想改革が必要だとしている。ただし、イスラム教の改革機運は乏しい。このため、池内氏は、事態の打開には長い時間がかかるのでは、と深く憂慮している。
 後藤健二さんたちの殺害などで、私たち日本人は大きな衝撃を受けた。だが、イスラム世界のことをどれだけ理解しているのか、”テロ”という言葉で、私たちは、深い思考を閉ざされているのではないか。読売の池内氏インタビューは国民の皆にとって必読の価値があると思う。

 

|

« 長期エネルギー見通しで原発をどう位置づける? | トップページ | 信頼と合意に基づく財政再建の道とは »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/61085105

この記事へのトラックバック一覧です: イスラム国巡る池内恵氏インタビュー(読売)は必読の価値あり:

« 長期エネルギー見通しで原発をどう位置づける? | トップページ | 信頼と合意に基づく財政再建の道とは »