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2015年2月 5日 (木)

信頼と合意に基づく財政再建の道とは

 わが国の財政再建の展望は暗い。経済成長による税収増、消費税の増税、社会保障の効率化が主要な手段と目されているが、基礎的財政収支の黒字化さえ容易でない。こうした八方ふさがりのような状況をどう打開すべきか。昨年10月末に出版された『租税抵抗の財政学――信頼と合意に基づく社会へ』(佐藤滋・古市将人著)は、そうした疑問に対する答であるかもしれない。

 所得税は”痛税感”が強く、租税抵抗を引き起こすが、北欧諸国など、社会保障制度を充実している国々はそれを克服して、所得税中心の租税構造を確立している。これに対し、日本の個人所得税の対GDP比は欧米主要国に比べきわめて低い。

 我が国は、”クロヨン”の課税不公平を解消できないため、中間層の租税抵抗を緩和するため、所得税率の引き下げを行ない、他方、消費税(付加価値税)率を上げたり、社会保険料を引き上げてきた。そして、税による負担の分かち合いではなく、受益者負担という形でサービス利用者に負担を課すようにしてきた(長期経済低迷のため、なおかつ財源が足りないので、国債を大量に発行してきた)。

 政府不信が高い国は増税が難しいので、公的債務、つまり政府の借金が膨らむ。また、所得格差と社会的信頼とは相反し、格差の高まりは政治不信に直結する。結果として、政府が最も公的支援を必要とする人に資源を投下する選別主義的政策がとられる。だが、そうなると、中間層を含む多数の納税者は受益感を感じなくなり、結果として負担増に同意しなくなる、と書いている。日本が歩んでいるのはこの道だろう。

 スウェーデンの税・社会保障制度改革は、納めた税金が国民皆のニーズを充たすことに使われたと感じ、政府への信頼が高まるようになることに成功する。その要因の1つが、全所得階層の人々が現金給付を受けていること、かつその給付も所得税の課税対象としていることである。負担者と受益者を分断せず、制度を安定化する知恵だろう。

 同書の末尾で、「求められているのは、所得税の復権を通じた租税体系の再構築である。所得税財源による社会保障制度が存在しなければ、消費税負担は人びとの生存を脅かすだけになってしまいかねない。納税者が納得して負担できる租税体系は、社会保障制度に安定的な財源を提供する。人々の生存と尊厳を保障する社会保障制度が機能することで、さらに人々は安心して日々働き、納税に協力し政治に関わろうとするだろう」と書いている。

 

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