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2015年3月 1日 (日)

ハイパーインフレへの道を回避するには

 日本の財政危機について、経済学者、小林慶一郎氏(慶応大学教授)に社会学者、橋爪大三郎氏が問いかける対談本『ジャパン・クライシスーーハイパーインフレがこの国を滅ぼす』(筑摩書房、2014年10月刊)を読んだ。10年ぐらい前に、まともな学者・専門家がこのように日本の直面する財政危機の実相と解決策とを世に問うてくれていたら、日本の将来に救いがあると思っただろう。

 日本の政府の借金はGDPの2倍を超え、さらに増え続けている。というか、時の政権は税収に近い規模の国債を発行して財政支出の大盤振る舞いをしている。これに対し、同書は、日本経済を強化し、成長軌道に乗せるには、成長戦略と同時に財政再建を推進すべきだと主張。思い切った増税と社会保障の切り詰めが不可欠だとしている。

 アベノミクスでは、国債の増発は、日銀による国債買い支え、通貨供給量の急増、物価の高騰などを通じてハイパーインフレを招くおそれが大きい。国民の預貯金は紙切れ同然になる。ハイパーインフレを抑制するため金利を引き上げれば、金融破綻や大不況などを引き起こす。いずれにせよ、国民生活を大混乱に陥れる。

 夢まぼろしのアベノミクスに代わってなすべきことは何か。同書では、GDPに対する公的債務の比率をいまの220%から60%に100年かけて引き下げるとして、消費税の税率をすぐに35%に引き上げるよう提案している。そしてこの政策を50年も続ければ、財政は目に見えて改善し、財政破綻の可能性はなくなるとしている。

 いきなり消費税率を35%に引き上げるなどというのは正気の沙汰ではないように感じる。ただ、同書では、「消費税として徴収されたお金は年金給付や公的医療に使われ」「暮らしに還元され」るとし、小林教授の友人である外国の学者が計算したところ、「社会全体としては消費水準がわずか1.4%ほど落ち込む程度で済むことがわかった」という。

 小林教授は2014年4月28日に財政制度等審議会財政制度分科会で報告された「我が国の財政に関する長期推計」のグラフを紹介。「消費税率30%分の財政収支(約70兆円)の改善ができれば、債務残高は2060年にはGDPの100%まで低下し、その後も減り続けるので、日本の財政危機は回避される」と説明している。

 外国の学者がその後の新しいデータに基づいて試算したら、2018年から消費税率60%になどという数字になったという。これを受けて、同教授は消費税率35%への引き上げは日本を救うための最低限の必要条件なのだと覚悟すべきかもしれないと注記している。

 これらの数字を示されても、国民の多くはピンとこないだろう。しかし、ここに示されたデータをもとに、迫りくる破局の深刻さを一人でも多くの国民が認識することが望ましい。

 

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