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2015年5月28日 (木)

東芝の不公正決算の背景を考える

 東芝(前の社名は東京芝浦電気)に初めて取材したのは1968年。本社機能は日比谷公園のすぐ傍にあった。土光敏夫社長の時代で、昭和40年不況時の業績不振から経営を立て直そうとしていた。土光社長は海外出張する時でも秘書を同行しないなど、当時の経済界では異彩を放っていた。

 当時から、同社の経理・財務担当役員にはしっかりした人物がいて、単なる経理屋ではなかった。岩田弌夫氏のように、社長になった人もいる。

 そんな半世紀近い昔と違い、今日の東芝は年間売上高が何兆円にも及び、連結決算を見ると、海外部門の売り上げのほうが国内よりも大きい。巨大なグローバル企業である。

 そんな東芝が2015年3月期の決算取りまとめで、利益を過大に計上しているとして、決算発表を延ばし、真相を突き止め、適切な決算を作成するための作業をしている。

 不公正決算の内容が明らかにされていないので、憶測にとどまるが、電子部品、原子力発電など、各事業とも激烈な国際競争にさらされており、各部門とも、利益確保の至上命令にしたがう中で「無理が通れば、道理引っ込む」という事態が起きたのではないだろうか。

 事業分野が多様化し、かつ企業の規模が巨大化していくと、経営トップが各事業分野の実態を把握して、企業全体を適切に経営することは容易ではない。そこで、各分野ごとに経営を任せる事業部制のようなやりかたをとることが多い。そうした集中と分散とを巧みに操るには、各事業部門を第三者的に冷静な目でチェックし、経営トップに報告する機能が必要である。そこが同社の場合、どうだったのか。

 話が変わるが、元公認会計士協会の副会長だった某氏は「決算の粉飾は必ずわかる」と言っていた。ただし、普段から、企業の経営トップに時々直接に会い、話をすることが不可欠だと。

 東芝の不公正決算の内容がわからないので、断定できないが、東芝の会計監査法人は今回の不公正決算の問題点をいつ知ったのだろうか。型通りのチェックしかせず、数字の操作に気付かなかったのかもしれない。

 企業の事業規模が広がり、国内外に、また新たな事業分野に乗り出すと、会計の数字からだけでは会計士は事業の実態を理解しにくいかもしれない。そうしたところを突かれると、大監査法人といえども、監査の手抜かりが起きうる。

 いまは東芝の内部で、不公正決算の真相を追及している段階だが、それがすんだら、会計監査と監査法人のありかたに関して徹底究明が求められよう。

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2015年5月23日 (土)

野口健さん、ヒマラヤ大震災の救援活動に

 まもなく1ヵ月になるが、4月25日にネパールでマグニチュード7.8の巨大地震が起きた。石積みの建物や家屋が倒壊し、大勢の人が亡くなった。さらに、5月12日にはマグニチュード7.3の余震があった。それで、さらに多くの建物などが倒壊したという。

 4月の地震発生時に登山中だったアルピニスト、野口健さんの体験や被災地支援の活動について、日本に帰国したご本人の記者会見(22日)で聞くことができた。その中から、いくつかの点を書き記す。

・被災者は野外テントで暮らしている。ネパールの山岳地帯では、あと3週間もすると、モンスーン(雨季)に入る。猛烈な雨が降る。4000メートルの高地なので、気温は低い。仮設住宅といったものはないので、大型のテントでないと暮らせない。

・マナスル地域とエベレスト街道の2ヵ所に対して復興支援を行なっていく。大型テントをインドのメーカーに600張り注文した。被災した各家庭に1張りずつ配る。シェルパたちの収入源でもあるロッジがたくさん倒壊したので、その修復に4000万円を見込み、寄付を募る。このほか、エベレスト街道が壊れているので、その修復も必要である。シェルパにとっては銀行から借金してロッジを建てたので、資金の問題もある。

・山岳地域の人々の暮らしは、登山などに観光客が来てくれないと再建できない。復興が秋のシーズンに間に合うのが望ましいが、せめて来年春までには元のようになればいい。

・ネパール政府はほとんど何もしない。住民も政府に反感を抱いている。他方、村長のような存在がないので、地域をまとめるということが難しい。援助は員数分、分けないと、あとで奪い合いになる。

・シェルパは昨年の遭難事故と合わせ40数人が亡くなった。したがって、来年はエベレストに行きたくないという者が多い。

・食料は目下、在庫がかなりある。しかし、道路が遮断しているため、今後は運び込むのが困難だ。

・ネパールには大型のヘリコプターが数機しかない。米軍は沖縄からオスプレーを含め3機が救援に行った。うち、1機が墜落したが、ネパールでは大変に感謝されている。日本の自衛隊もヘリを派遣してくれたらよかった。

・「野口健 ヒマラヤ大震災基金」を設けた。5月22日までに6500万円の寄付が集まった。長丁場なので、日本人がネパール支援に関心を持ち続けてもらうようにしたい。

 

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2015年5月20日 (水)

巨額の財政赤字が小説などのテーマに

 財政危機、財政破綻、財政再建、財政改革……、こうした言葉がメディアに頻繁に登場するようになったのは近年のこと。安倍内閣においても、経済再生を優先しつつも、財政健全化を唱えざるをえなくなっている。だが、基礎的財政収支(PB)の大幅な赤字を2020年までにゼロにする道筋をつけることは難しそうだ。日本は、先進国で最も財政悪化が深刻とされるが、国民はこの問題にどれだけ関心を持っているのだろうか。

  「このミステリーがすごい」大賞を2013年に受賞した『ボクが9歳で革命家になった理由』(八木圭一著)、それを改題・加筆修正した小説『一千兆円の身代金』を読んだ。元副総理の孫を誘拐し、日本政府に対し、身代金として国の借金と同額の1085兆円を要求する誘拐事件の話である。

 「一兆円の紙幣は重さにして百トン、上に積み上げれば一万メートルらしい。この一〇八五倍となると、想像を絶するものがある」と書かれている。日本の国家財政の危機の実相は目方などで測っても、途方もないスケールである。

 そして、この身代金要求が受け入れられない場合には、財政危機を招いた責任を謙虚に反省し、国民に公式に謝罪するとともに、具体的な財政再建案の提示、それを実施するまでの消費税増税、議員賞与一時凍結を確約するよう求めている。それも、小学生にも伝わる説明を条件としている。

 事実は小説より奇なり、という言葉があるが、日本政府が国民一人当たり800万円以上もの借金を積み上げてきたことは恐るべき退廃である。そして、それを漫然と許してきた国民の無関心さも。小説は荒唐無稽と片付けられない深刻な現実を読者に突き付けている。

 2013年3月に公開された東映映画の「相棒」シリーズ「Xday」は、国家財政が破綻したときに金融取引などで何が起こるか、シミュレートする話が出てくる。この映画はことし4月にもテレビで放映され、それを私は見たのだが、日本の政・官の指導層が財政破綻をやむなしとして破綻後に備えているという筋書きは、かなりいい線を行っているように思われた。安倍政権も、本音では、この通りではなかろうか。

 小説などで財政危機が直接間接に取り上げられるなら、国民のこの問題に対する理解や認識は深まると思う。そうなってほしい。

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2015年5月17日 (日)

鳥獣戯画展は行列するだけで3時間半もかかった

 東京国立博物館は京都・高山寺の国宝「鳥獣人物戯画」を4月下旬から6月上旬まで展示している。前期と後期に分けて、甲、乙、丙、丁の各巻について、前半部分の展示と後半部分の展示を入れ替え、展示しない部分はコピーを展示するというやり方。前期はきょう17日までだ。きのう(16日)は夕方6時まで開館しているというので、午後に見に行った。

 展示は平成館で行われているが、この建物に入るにはまず、長い行列に並ばねばならない。午後4時過ぎに並んだら、係員がいて、5分ごとに20人余入れている。それが30人前後になり、40人ほどにと増えていった。それでも、私たちが入館したのは夕方5時半過ぎだった。入館するまでに80分余りかかった。

 係員は、閉館時刻を午後7時に延ばしたと言い、教科書などによく出てくる鳥獣戯画の甲巻に限り、午後7時までに行列に並んでいれば、何時になろうと見ることができると言った。入館してエスカレーターで2階の展示場に上がったら、甲巻を見るための長い長い行列ができていた。そこで、まずは甲巻以外の展示を見ることにした。珍しい白描画像、中興の祖、明恵上人をめぐるさまざまな展示は結構興味深いものがあるが、時間がないので、ちらりと見るだけにとどめ、戯画の展示室に行った。人は多かったが、断簡、丁巻、丙巻、乙巻を一通り見た。

 6時半ごろに一休み。2時間以上、立ちっ放しだったので10分ほど座った。そして、今度は甲巻の行列に加わった。夕方6時40分ごろだ。それからが難行苦行。夜の8時50分ごろまで2時間余り、おとなしく行列していた。腰が痛くなるし、腹は減ってくるし、年寄りにはきつかった。

 長い長い立ちっ放しの苦行のあと、やっと私たちが甲巻を見始めたら、複数の係員が「立ち止まらず、左へ一歩ずつ進んでください」、「前の人との間を空けないでください」などと繰り返し背中のほうから言う。私たちは立ち止まらず、左へ、左へと移動しながら見ていった。したがって、1分も見ていたかどうか。

 私たちの場合、もともと夕方6時閉館の予定だった。それが3時間弱、遅くなった。私たちのあとに並んでいた最後尾はおそらく10時近くに見終わったのではないか。前日の金曜日には8時閉館が11時ごろにずれたという。職員たちもくたびれただろうが、これからも、長い行列になすすべがないのだろうか。

 鳥獣戯画は蛙、兎、猿などが人間のようにユーモラスに描かれており、国民の誰もが学校の教科書で見たことがある。新聞社の拡販用に無料券が大量に配られたせいもあり、博物館にどっと押しかけたのだろう。しかし、若い人も年配者も、長い長い行列にいて、誰も不満の声一つ洩らさなかった。静かに本を読んでいたり、スマホをいじっていたり、あるいは、何もせず、じっとしていたり。幸い、体調を崩して行列から離脱する人は見かけなかった。

 博物館の表玄関には、入館までの時間などの表示がされていた。入館者はそれを承知で入ったのだろうが、「長時間、静かに待つ」ことに慣れない年寄りとしては、博物館に対し、苦情の一つでも言いたくなる。展示をじっくり鑑賞できるゆとりを保てる範囲の入場者数しか受け入れないというのが、本来の博物館の役割ではないか、と。そして、独立行政法人化したため、もうけ主義になっていないだろうか、と。

 

 

 

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2015年5月13日 (水)

財政再建に及び腰の安倍政権

「債務が過剰に積み上がると、好況期には予想もしなかったシステミック・リスク(金融システムの不安定化リスク)が高まる」、「市場に潤沢に資金を供給すれば、政府は実力以上の経済成長を演出することができる」、「金融危機の歴史を振り返ってわかるのは、何かが起きると思われているときには、その何かはいずれ起きる、ということだけである。債務が膨れ上がった国は、悲劇に向かっている」(カーメン・ラインハートほか著『国家は破綻する』)

 政府の経済財政諮問会議で、安倍首相は財政健全化計画を6月末までにまとめるよう指示した。2020年度までに基礎的財政収支の赤字を解消すると国際的に大見得を切っているので、それに整合的な計画をまとめあげる必要がある。

 そこで、民間議員が政府を代弁して示した論点整理は、①税収を多めに見込むため、実質2%以上、名目3%以上という相当高い経済成長を基本とする、②消費税率を10%のままとする、③医療、年金など社会保障費を抑制する、との基本方向を打ち出した。それに加え、2018年度の中間目標として、基礎的財政収支赤字の対GDP比率を1%前後とする案を提示したという。

 財政再建を強く打ち出せば、国民の反発や不満が強まるおそれがある。自民・公明両党はそれが国政選挙などに響くことをおそれて、危機的な財政状況を直視しようとしない。現実離れした経済成長率をかかげて、赤字国債増発による放漫財政を続けようとしているわけだ。

 国民のほうも、借金財政の行き着く先を知らされず、既得権擁護など、個別の利益追求に走っているようにみえる。

 しかし、このままでは、遠からず日本の国家財政は破綻する。おそらくは猛烈なインフレになり、国民経済や暮らしは混乱に陥る可能性が大きい。

 いまこそ、財政の歳出、歳入を抜本的に改革する方向に転換すべきだろう。望ましい福祉社会・平和国家像を掲げ、課税の不平等を是正するなどの改革を推進していきたい。与党が目先の利益一辺倒になっているのに対し、民主党など野党がしっかりアンチテーゼを打ち出していくことが望ましい。

 ところで、先日、米国の労働運動のナショナル・センター、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟産別会議)のリチャード・L・トラムカ会長が訪日し、日本労働組合総連合会(連合)と協議したあと、講演した。その中で、AFL-CIOが労働組合員だけの活動にとどまらず、地域のさまざまな階層、非労組員、困窮家庭などに助けの手をさしのべる活動「ワーキング・アメリカ」を全米各地で展開していることを強調した。

 AFL-CIOの全米各地にあるローカル組織が地域社会に相談窓口などを設け、住民の抱えるさまざまな悩み、相談事などを聞き、その解決のために年中、フルに活動しているという。と同時に、そうしたローカル組織は大統領選などで民主党候補者を支援するという。

 そうした活動を通じて、AFL-CIOは加盟組織およびその労働者数が増加に転じており、最近時点では加盟産別が56組織、約1250万人になっている。

 かたや、民主党を支援する連合は、AFL-CIOのように中小企業労働者や一般の生活者などの相談相手になる活動が散発的である。日本国家の財政再建を進めるには、連合などナショナルセンターが「ワーキング・アメリカ」のように弱者を支え、連帯する活動を推進し、民主党などの革新政党を支えることができればいいなと思う。

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2015年5月 9日 (土)

280兆円に達した日銀の国債保有

 財務省が8日に発表した2014年度末の国の国債、借入金などの債務は1053.36兆円だった。13年度末より28.40兆円増え、過去最高である。内訳を見ると、内国債が881.48兆円で、このうち、普通国債が774.08兆円、財投債が98.99兆円だった。借入金は54.98兆円、政府短期証券は116.89兆円である。

 日本経済は財政再建が焦眉の課題となっているはずだが、税収の半分に近い新たな”借金”が上乗せされていることがわかる。

 一方、日本銀行が発表する営業毎旬報告によると、ことし4月末の日銀の総資産は332.82兆円で、内訳を見ると、国債が279.67兆円(うち長期国債229.62兆円、国庫短期証券50.05兆円)、貸付金34.11兆円などである。

 ちなみに、2014年度末にあたることし3月末では、総資産が332.57兆円、うち国債が269.79兆円(長期国債220.13兆円、国庫短期証券49.66兆円)、貸付金が34.10兆円だった。その1年前の2013年度末には、総資産が240.78兆円で、国債は198.34兆円、貸付金26.31兆円だった。

 2013年1月の日銀の政策転換に伴い、日銀の国債保有は2012年度に38.1兆円(43.7%)増えて、2013年3月末に125.36兆円に達した。そして14年3月末には72.98兆円増の198.34兆円に、さらに15年3月末には71.46兆円増の269.79兆円にと急激に膨らんでいる。

 ただ、日銀の負債を見ると、ことし3月末現在、発行銀行券が89.67兆円と若干の増加にとどまっているのに対し、当座預金は201.56兆円(56.7%増)に達している。日銀にある金融機関の預金口座にお金がとどまっていて、経済活動の活発化につながっていないということだろう。

 ところで、日銀は現在、年間80兆円に相当する国債を購入する方針を掲げている。すでに国債残高の約3割を日銀が保有しているので、政府・日銀の財政・金融政策が変わらなければ、国債残高の半分を日銀が保有する異常な事態が数年のうちに起きるかもしれない。

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2015年5月 4日 (月)

財政規律がゆるんだままの安倍政権

 東短リサーチ代表取締役社長チーフエコノミストである加藤出氏が言論NPOの「言論スタジオ」(5月1日)で、日銀の超金融緩和からの出口戦略について、次のように語った。

 「日銀が国債を買い続けると、ますます政府の財政規律は緩むことになる。そうするとますます出口が遠くなる……」。 

 「いまの日本のように政府が日銀に「甘えている」ような構造が続くと、(出口戦略は)難しくなる」と。

 4日の日本経済新聞は、2020年度までに基礎的財政収支を黒字化するため、政府が夏にまとめる財政健全化計画について、実質2%以上という高い経済成長率を前提にすること、2017年4月に消費税を10%に引き上げたあと、さらなる消費税増税はしないこと、そして2018年頃に健全化計画を見直すことなどの基本方針を固めたと報じている。

 財政再建には、歳出削減、増税、経済成長による税収増といった3つの方策がある。すなわち、①高齢化による社会保障費の増大を抑えるために医療、介護などの歳出を効率化し、削減する、②法人税は国際的な企業誘致のために下げざるをえないが、消費税は西欧に準じて上げる、③産業保護規制の緩和などで経済・産業の成長発展を促し、それによって税収の増加を図る、である。

 しかし、安倍政権はアベノミクスを支える日銀の超金融緩和と潜在成長率を超えるような経済成長という、国民が目先、痛みを感じない政策に傾斜。消費税増税や、歳出の合理化、効率化といった国民が痛みを感じるような政策を避けてきた。

 良薬は口に苦し。政治は本来、国民を説得し、問題を将来に先送りしないようにすることが望ましい。だが、政府与党は、そうした役目を避け、その結果、財政悪化を加速してきた。日経の記事から推察すると、2018年頃に、また国民の目をくらます新・計画を出すのではないか。

 いまのアベノミクスだと、政府は財政赤字を補てんするため、さらに多くの赤字国債を発行し、日銀は限りなく赤字国債を買い取る状態が続きそうである。それがどこまで続くか。日本経済はどうなってしまうか。安全保障政策も重要であるが、国の基盤である経済が正常化するメドはたっていない。

 事態は容易ならざるところまで来ているようだ。

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