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2015年6月29日 (月)

企業版”ふるさと納税”にも疑問

 政府の菅官房長官は、個人の”ふるさと納税”が地域活性化につながっているとして、企業版も検討していることを明らかにした。「官民挙げて連携し、町づくりを応援する。自治体に民間資金を投入する」(日本経済新聞6月29日付け朝刊)と意義を訴えたという。

 いまの”ふるさと納税”は2008年度からおこなわれている。住民が、ふるさとなど、どこかの地方公共団体に寄付すれば、所得税や個人住民税を減額するという仕組み。寄付を受ける地方公共団体の中には、地元の高価な特産品などを見返りに贈呈するところがあり、年を追うごとに、派手な特産品などでより多く寄付を集めようと競う傾向すらうかがえる。

 どこに寄付したらトクか、という特集を記事にする雑誌などもあり、”ふるさと納税”は住民にとっても、地方公共団体にとっても関心の的となっている。

 しかし、住民税は、居住している地方公共団体から受ける行政サービスの対価であるのに、その一部を地元に納めないで、他の地方公共団体に寄付するというのは税の基本に反している。また、日本国全体の立場でみれば、地方公共団体は住民サービスにあてるべき住民税収税額の一部を特産品などのプレゼントに振り向けている。それも一部の人にだけ送っているのである。”ふるさと納税”は、税の本質に反すると言わざるをえない。

 そこへ、今度は企業版の”ふるさと納税”構想登場である。法人住民税は、個人住民税同様、地元の行政サービスを受ける対価である。地元の地方公共団体に納税すべきなのに、よそのどこかの地方公共団体に納税してもかまわない、というのは、税の本質に反するのではないか。

 菅官房長官は地域の活性化につながると強調した。だが、プレゼント合戦のような不健全な地方公共団体の資金集めは、行政に携わる人たちのモラルハザードをも招きかねない。

 

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2015年6月20日 (土)

ソフトバンクのアローラ副社長の巨額報酬

 ソフトバンクの孫正義社長の「最重要の後継者候補」と目されるニケシュ・アローラ新副社長。孫氏がグーグルから引き抜いたこのアローラ氏に対し、昨年9月から今年3月までの半年間に、ソフトバンクは入社契約金を含め、全部で165億円余の報酬を支払ったという。そのうち、ストック・オプション(株式報酬)が19億9500万円である。

 役員報酬は明らかにされていないが、孫社長の過去1年間のそれは1億3100万円である。したがって、アローラ氏の役員報酬もそれから大きくは離れていないと推定できる。ということで、入社契約金は165億円余の大半を占めると思われる。孫氏がアローラ氏を口説いてウンと言わせるのに、どんなにお札を高く積み上げたかがわかろうというものだ。

 ちなみに、ソフトバンクの社員の年収を平均1000万円と仮定すると、100億円は1000人分の年間賃金に相当する。知的に抜きん出たビジネスリーダーの経済的価値は、それほどにすごいということか。

 一方で、ビジネスリーダーも人間であり、万能ではない。孫氏が惚れ込んだ逸材であっても、ソフトバンクという経営体を自在に動かし、高い経営価値を生み出せるか、定かではない。それに、英雄並び立たずということもないではない。

 企業買収も経営者引き抜きも、当該企業を持続的、飛躍的に発展させる手段だが、ソフトバンクはそれが成功するか、長い目で見ていきたい。

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2015年6月16日 (火)

政治思想から見た財政再建

 6月12日の日本経済新聞「経済教室」のページに、小林慶一郎慶応大学教授が「財政が迫る新政治思想」と題して書いている。

 普通、政治はいま生きている人たちの多数決で決まる。したがって、財政健全化と社会保障制度の持続性維持という課題についても、本来は利害関係を持つ将来のすべての世代を含めた多数決で決めるべきなのに、現実には、現存者だけで決めている。先進諸国で支配的な個人主義的自由主義の欠陥が日本の財政問題にも表れているという。

 小林教授によると、個人主義的自由主義の政治思想は、「現在世代の快適な生活を犠牲にしてまで守らなければならないような、個人を超えた政治的価値を提供できない」。このため、適切なタイミングで十分な規模の財政再建を実行することはできないという。

 その結果、もし財政の破綻的な調整が起きれば、その国は全体として長期的に衰退する可能性があると同教授は指摘する。現代の民主制国家が皆、抱えるこの個人主義的自由主義の欠陥が日本の財政問題に表れているというわけだ。

 同教授は、公民的自由主義(シビック・リベラリズム)という新しい政治思想を踏まえ、「政治から独立した中央銀行のような長期的財政機関を設立し」、そこに「議会や政府の財政運営を規律づける権限を与えるというような民主制の補正が正当化」されることを期待している。

 安倍政権は6月末に財政健全化の方針を定めるが、小林教授は、そんなもので財政再建は不可能だと暗に言い切っているのだと思う。

 

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2015年6月13日 (土)

マスコミも大変な自主規制をしているとの批判

 安保法制に関する緊急会見が12日(金)、日本記者クラブで行われた。かつて自民党などで党幹部だったり、大臣を務めたりした4人の元国会議員ないし現国会議員がそろって会見し、安倍政権が進めている集団的自衛権の導入は自衛隊の活動を地球規模に広げ、70年間続いた平和主義をがらりと変えようとしているなどと批判した。同クラブは1時間半にわたる録画を公開しているので、関心のある方は見てほしい。

 山崎拓、亀井静香、藤井裕久、武村正義の4氏は80歳前後で、いずれも戦争の悲惨さを体験してきた。そして、平和主義に立って専守防衛に徹してきた戦後日本を高く評価している。このため、国是とも言うべき平和主義を一内閣、一国会だけで議論し、変えてしまおうという安倍内閣・与党の性急さ、強引さを厳しく批判した。

 「集団的自衛権は対等の軍事同盟であり、仮想敵国を必ずつくる」、「米国は世界の警察官。日本に半分やってくれと求めてくる。経済でも米国は金融の超緩和をやめて、日本に肩代わりさせようとする」、「地球の裏側まで行って戦争する。それは憲法違反だ」、「後方支援はきわめてリスクが高い」、「いまの法改正を認めると、自衛隊に戦死者が出る。それを国民が認める覚悟はあるか」、「一番恐れるのは、イスラム国退治に自衛隊員が動員されること」などと、厳しい発言が相次いだ。

 また、与党議員から反対の声が出ないことについて、「挙げる声がない。皆、ヒラメになっている。安倍政権にひれ伏している。反対するのは、出世の妨げになる、と」など、派閥の強かったかつての自民党との違いを指摘する声もあった。

 亀井氏は「マスコミの人、発信していますか」と言い出し、「マスコミは大変な自主規制をしている。言論の自由をなくしたら、国が亡びる」とも語った。確かに、この4長老会見をマスコミがどう扱ったかを見ると、極端に小さく扱ったり、無視したりするメディアがあるように思われる。メディアの経営環境が悪化し、新聞や放送が時の政権を厳しく批判することを控えるようになっているのではないか。亀井氏の感覚は鋭い、と思う。

 

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2015年6月10日 (水)

違法な長時間労働などと監督行政の現状

 オーストラリアに住む日本人から最近聞いたジョーク。オッシー(オーストラリア人)の仕事ぶりを記したカードを示し、内容を紹介した。それによると、

 規定の始業時刻は朝8時30分。実際の出勤は9時30分。

 9時45分にモーニング・ティー。11時ごろに仕事開始。11時15分、ランチの準備。

 12時ランチ。

 午後2時45分仕事再開。3時アフタヌーンティー。

 4時退社準備、4時30分退社。規定の終業時刻は5時。

 以上、ジョークの内容だが、彼によれば、「とにかく、オッシーは働かない」と言う。石炭、鉄鉱石など自然資源が豊富なので、大して働かなくとも、豊かに暮らせるということらしい。

 そして、最近、日本の厚生労働省の労働基準監督行政の責任者から日本の労働基準監督の仕組みや長時間労働や過重労働対策などの現状を聞く機会があった。天国と地獄というか、労働事情があまりに違うことに驚いた。過労死が繰り返されるほどに働かなければならない日本は、貧しい国と言うべきだろう。

 一般労働者(パート以外の者)の総実労働時間は2021時間に達する。週60時間以上働く雇用者は減少傾向にあるが、それでも2014年実績では464万人(8.5%)いる。うち、30代男性が126万人(雇用者に自営業主と家族従業者を含む)に達する。これは、30代で週60時間以上働いている者が17.0%もいることを表している。

 日本政府は2014年9月30日に長時間労働削減推進本部を設置し、過重労働等撲滅チーム、働き方改革・休暇取得促進チーム、省内長時間労働削減チームの3チームを設けた。同年11月、過労死等の労災請求のあった事業場等に対して「重点監督」を実施した。

 ことし1月に発表されたこの「重点監督」の結果によれば、「重点監督」を実施した4561事業場の83.6%にあたる3811事業場で労働基準関係の法令違反があった。「違法な時間外労働」2304事業場(50.5%)、「賃金不払い残業」955事業場(20.9%)。

 「過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善指導」2535事業場(55.6%)、「労働時間の把握が不適正であり指導」1035事業場(22.7%)。

 また、ことし1月から、月100時間超の残業が行われている事業場等に対する監督指導を徹底し始めた。さらに、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合、都道府県労働局長が経営トップに全社的な早期是正を指導し、かつ、その事実を公表するようにした。

 ゆっくりとだが、働き過ぎの歪みを是正するための取り組みが進んでいる。冒頭のオーストラリアとの違いは大きいままだが。

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2015年6月 7日 (日)

財政健全化への安倍政権の姿勢

  「これまで、政治が歳出改革や国民負担をお願いすることを逡巡し改革を先送りしてきた結果、財政が悪化の一途を辿った」――5月13日の自由民主党政務調査会「財政再建に関する特命委員会報告」(中間整理)はそう述べ、「国民とともに改革を実現し、その責任をはたしていく」と決意を表明した。

 政府はどうか。6月1日の経済財政諮問会議は、民間議員の新浪剛史氏が「経済再生なくして財政健全化なし。これが歳出・歳入改革の根幹をなす考え方である」と口火を切り、骨太方針の骨格となる改革について説明した。それによれば、2016~2018年度を集中改革期間とし、18年度の基礎的財政収支赤字をGDPの1%程度に縮小するというものである。1%とはおよそ5兆円にあたる。

 そして、この1%程度の目安に到達しないと判断される場合には、歳出・歳入両面でとるべき措置を検討し、2020年度の基礎的財政収支の黒字化を図っていくべきだとしている。以上は、安倍首相および彼を支えるブレーンのまとめた財政改革のプロセス案を新浪氏が代読したものと思われる。

 しかし、名目GDP変化率に対する税収の変化率、つまり、GDPが1%増えたら、税収が何%増えるかという想定について、安倍政権は1980年代並みの1.2~1.3程度を見込んでいる点が批判を浴びている。近年は成長率、税収ともに0(ゼロ)近傍にある。0だと基礎的財政収支赤字がはるかに大きく、したがって、もっと歳出を削り、大幅税収増を覚悟しなければならない。そうした政治的に厳しい対応を安倍政権は避けようとしていると見ることができよう。冒頭の「逡巡し、改革を先送りしてきた」歴史の繰り返しになるおそれが大である。

 同じ諮問会議の席上、麻生太郎議員(副総理兼財務大臣)は、「デフレ脱却に伴う金利上昇を見据えれば、今後は基礎的財政収支だけでなく、財政収支を注視しながら財政健全化を進めていく必要がある」と指摘した。

 そして、「経済が成長過程にある今のような時こそ、公的需要にこれ以上依存することなく歳出改革を進め、民需にバトンタッチして、民間主導の経済成長を実現していかねばならない。それこそが経済再生と財政健全化の両立の王道だ」と述べた。

 この日の諮問会議では、アベノミクスの三本の矢の一つである日銀による量的・質的金融緩和政策について直接触れることはなかった。だが、米国が年内に金利引き上げに踏み切る可能性が強く、その影響を考慮する必要があるように思われる。断トツの財政赤字を抱えていながら、”苦い良薬”を避け続ける安倍政権は、安全保障面だけでなく、経済面でも日本を危機に陥れようとしているのではないか。 

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2015年6月 2日 (火)

日本年金機構からの情報流出

 日本年金機構が保管管理している年金加入者氏名や年金番号などが職員の端末へのサイバー攻撃で外部に流出した。職員が受け取ったメールの添付ファイルを開けたためという。

 ネット時代という言葉が普及したように、ネットは文明社会で生きていく人たちには不可欠の要素になっている。そして、ネットに疎い人は、それがために、社会から疎外されるような時代になりつつある。

 しかし、ネットについては、くわしい知識を持つ人と、基本的な使い方しか知らないでいる人とでは、利用によって得る利益が大きく違う。ことに金融のように、瞬時に巨額の資金がグローバルに動いている分野では、金融の知識に秀で、かつネットを自在に使いこなせる人や、その属する金融、証券などの企業は、おカネを動かすことで巨額の利益を得ることができる。

 また、目に見えないネットを利用して、個人や企業などに呼び掛けておカネを集めることもできるし、個人や政府機関・企業などの保有する個人・企業の情報を盗み出して、犯罪に利用することもありうる。したがって、個人や企業などに関する各種の情報を扱う政府機関や事業者は保有する情報が漏洩しないように万全の注意を払わなければならない。

 しかし、情報秘匿保全のために強大なウオール(壁)を設けると、ネットの利便性が失われる恐れが大である。したがって、コストと利便性とを測りつつ、ネットの利用を可能にしなければならない。というわけで、ネットの利用により、私たちは常に大なり小なり危険にさらされていると言える。

 政府などは、よく、システムが万全で、情報を盗まれることはないという言い方で国民を安心させようとするが、ネットの世界には絶対に安心なものはない。そういう相対的なものの見方、考え方が大事なのではないか。

 日本年金機構は加入者一人ひとりの年金に関する個人情報を抱え込む。これからも、情報を盗みたいアクセスがあるだろう。したがって、分散管理しておくことによって、たとえ盗まれても、加入者一人ひとりのある項目だけというように、ごく一部の情報洩れしか起きない柔軟なソフトウエアを作成利用する必要があるように思う。

 職員にすべての責任を負わすのは、管理職側の責任逃れである。職員も、管理職も、起きた事態にしかるべき責任をとることは必要である。

 

 

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2015年6月 1日 (月)

わが国で初めて、旭川刑務所の”個室化”

 札幌矯正管区で進められている旭川刑務所の建て替えが2016年3月に終わる。受刑者は現在、雑居房か独居房に収容されているが、新しい建物では、すべて独居房になる。現在の2倍近い約500人の収容が可能になるという。高齢者への配慮により、囚人収容がすべて”個室化”という刑務所は我が国で初めてという。

 1日付けの読売ニュースによるもので、同刑務所はすべての独居房を洋間にし、テレビと暖房が完備していて、部屋面積が7平方m程度。受刑者の高齢化に対応して、布団の上げ下げを伴う和室から、必要のない洋間に変更したともいう。昔ながらの牢名主がいる雑居房での受刑者間のトラブルなどをなくせるともいう。

 このニュースを読んで、先頃、川崎市で起きた簡易宿泊所の火事を思った。2棟が全焼し、多数の死者が出た。宿泊者のほとんどが自活能力がなく、親類縁者もいない。生活保護を受けており、狭い板囲いの部屋で過ごしていた。テレビは有料だった。

 かたや懲役10年以上の受刑者たちが閉じ込められる刑務所であり、もう一方は、外に出る自由があるとはいうものの、寝るところ、食事などは刑務所に劣るかもしれない。

 京浜東北線の駅の傍にあるパチンコなどのゲームセンター。きょうも夕方の店内は中年、高年齢、若者が入り混じってゲーム台に向かって並んでいる。別の日には、高齢の男、女がゲーム台に並んでいる。朝方の開店間近では、何人も若い男たちが並んでいた。

 上記の現象は、それぞれ、別々の場所での話だ。しかし、それらは、日本がバランスのとれた落ち着いた社会とはおよそ違って、どこか、不安定になっている、そうした状況のいくつかである。最近の新聞は、簡単に人を殺す事件の報道が相次ぐ。政治も、テレビ画面で見ると、せっかちに戦争準備に国民を駆り立てる政治家が一方的にまくしたてている。そして、海外では、中国やISISなどの侵略的な独断が周辺を不安に陥れている。国内外がおかしくなっている。

 いま、私たち日本人は、冷静に物事を判断し、大局を踏まえて行動すべき大事なときにいる。強く、そう思う。

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