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2015年7月 9日 (木)

『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』の問い掛け

 2012年6月20日~22日、ブラジルのリオデジャネイロで「国連持続可能な開発会議、いわゆる”リオ+20”が開催された。この総会の首脳演説で、南米、ウルグアイのムヒカ大統領(当時)は、資本主義、市場経済やグローバリゼーションが人類の幸福を損ねている現実を指摘し、人々の生き方を見直すよう呼びかけた。

 その20年前、地球温暖化などの環境悪化を阻止し、持続可能な開発を促進するための国際会議、”地球サミット”がリオで開催された。この歴史的な会合では「環境と開発に関するリオ宣言」や行動計画「アジェンダ21」などを採択された。”リオ+20”は、その後の20年間を総括し、地球環境問題への新たな取り組みをめざすものだった。

 この”リオ+20”の総会でムヒカ大統領(当時)が行なった演説の内容を子供向けにわかりやすく書いた絵本『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(汐文社)を、知人に薦められ、読んだ。かつて左翼ゲリラだったムヒカ氏は今年初めまで大統領だったが、大統領公邸に住まず、自宅(農場)で暮らし、給料の大半を貧者のために寄付するような人だという。

 その彼が演説で問い掛けたのは、市場経済やグローバリゼーションで増大する生産と資源消費、それに私たちの限りない欲望に対する疑問である。絵本では「70億や80億の全人類が、いままでぜいたくの限りをつくしてきた西洋社会と同じように、ものを買ったりむだづかいしたりできると思いますか。そんな原料が、いまのこの世界にあると思いますか」と。

 「目の前にある危機は地球環境の危機ではなく、わたしたちの生き方の危機です」ととらえるムヒカ氏は「あくことなくものを手に入れ、ものをつくり続けることがいまの社会を動かしてい」ると指摘する。そして、人々は働いて、ものを買い、使い捨てる。そしてローンの支払いに追われて人生が終わる、と。

 「人と人とが幸せな関係を結ぶこと、子どもを育てること、友人を持つこと、地球上に愛があること」、これらは人間が生きていくのに最低限必要である。社会の発展はこれらを実現し、人々を幸福にするものでなければならない。多くの矛盾を抱える現代社会に対し、ムヒカ氏の演説は根源的な問い掛けをしたのである。

 3年前、ムヒカ大統領の演説を日本に紹介する報道はなかったと思う。人口も少ない農業国の指導者がすぐれた見識を披瀝したこの演説は、現代世界の危機の本質を突いた歴史的なスピーチであった。混迷する世界、混迷する日本において、改めて、指導者とは、と考えさせられた。

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