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2015年7月14日 (火)

レスター・ブラウンの研究所閉鎖

 レスター・ブラウン氏と言えば、「ワールドウオッチ・インスティチュート」、21世紀に入ってからは「アース・ポリシー・インスティチュート」を拠点に、地球環境問題について広い視野と先見性に富んだ研究をし、国際的に啓蒙活動を行なってきたことで知られる。日本に来たとき、講演会場にスポーツシューズを履いてきたのを見て、親しみを覚えたのを思い出す。その彼が81歳となり、主宰する研究所を6月30日で閉鎖した。

 研究所での最後の”成果”は、レスター・ブラウン氏の自伝と、『The Great Transition:Shifting from Fossil Fuel to Solar and Wind Energy』の2冊。後者は翻訳書が出たばかりだ。まだ、読んではいないが、エネルギーの主役が資源量に限りのある化石燃料から、太陽光や風力といった再生可能な自然エネルギーにシフトしていく大きな移行期にあることを書いているのだろう。

 レスター・ブラウン氏は米農商務省出身であり、地球環境の変化と世界の食料事情を踏まえ、すぐれた見識と展望、および具体的な処方箋を示してきた。『Who Will Feed China?』は、人口急増の中国が食料をどうやって確保するか、と疑問を投げかけ、中国政府に大きな衝撃を与えたといわれる。

 彼の著書やニューズレターは世界のあちこちで読まれ、翻訳書も数多くの国で出版されてきた。彼の”予言”通りに事態が悪化することが多かったが、彼の”処方箋”には、まだ希望があるという明るさがあったように思う。彼は稀有の語り部であった。

 ひるがえって日本を見れば、政府は化石燃料である石油、天然ガス、石炭をエネルギー供給の柱に据え、原子力発電にも2割余、依存するという供給構造を想定している。原発にいたっては、”フクシマ”の巨大事故の教訓を十分に踏まえることなく、もっぱら”経済性”の観点から再稼働を求める声が経済界において聞かれる。

 わが国は公害対策や省エネなどではきわめて先進的であるが、他方で、化石燃料・原発依存から抜け出せないように、にっちもさっちもいかないのである。日本にも、レスター・ブラウン氏のように、環境問題を広く、深くとらえ、世論を動かすような優れた人物が出現することを望みたい。

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