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2015年8月31日 (月)

財政危機どこ吹く風の2016年度予算案作成

 安全保障法制の改定が国会審議の最大の争点になっている。そのために霞が関における2016年度国家予算案の作成作業は目立たないが、安倍内閣の予算案は財政悪化がさらに深刻化するものになりそうだ。

 新聞報道によれば、一般会計の歳出規模は2015年度に続いて102兆円を超え、過去最大になるようだ。予算要求に上限を課すようなことはなく、逆に4兆円の特別枠を設けたりしたため、厚生労働省(社会保障費など)、国土交通省(インフラ、東京オリンピックなど)や、防衛省、総務省、経済産業省などの要求額は軒並み増えているらしい。

 安倍政権の経済政策は、国が主導して経済成長を図ろうとするところに特徴がある。その一つが財政規模を膨らまして、需要を創出することである。民間の自由競争や創意工夫など、”民間活力”の成果に期待するのは、まだるっこしい。そこで、即効性がある財政出動で経済発展を促そうというわけだ。

 しかし、政府ばかりに頼るのではなく、民間でできることから始めれば、労働生産性の向上・実質賃金の上昇、ひいては、デフレ脱却につながる。それこそが経済再生と財政健全化の二兎を得る近道だと土居丈朗慶応大学教授は言っている(東洋経済オンライン8月31日)。

 野党は全くと言っていいほど2016年度政府予算案の作成や、財政健全化の道筋に対してまとまった発言をしていない。日銀が年間80兆円もの国債を購入する異常事態についても、無関心である。

 国・地方公共団体の財政事情が着実に悪化していく先に何が起きるのか。まじめに考えると不安が増す一方である。

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2015年8月30日 (日)

10年を迎えた「料理ボランティアの会」

 新潟・中越地震(2004年)や東日本大震災(2011年)の被災地に、ホテル、レストラン、寿司、スイーツなどの在京の料理人・職人が一緒になって「美味しいものを食べて元気を出して下さい」と、料理を持って慰問に訪れる活動が10年を迎えた。この9月23日には、活動10年を記念するチャリティ食事会を帝国ホテル東京で開くという。

 一流ホテルの総料理長や有名なレストランのオーナーシェフなど料理界のキーマンが集うこの料理ボランティアの会は2012年に一般社団法人になり、被災地に対し、食を通じての貢献、交流の活動を続けている。

 この活動の歴史を聞いて、とてもいいなと思ったのは、縦割りになりがちな日本社会の中で、横のつながりを広げてきた点である。外食のサービスは、洋食、和食、菓子などの分野間で競争があり、またそれぞれの分野の中でも激烈な競争が行われている。そうした垣根を超えて、食のサービスのプロが仲良く、被災地の恵まれない人々に美味しいものを食べてもらうボランティア活動にいそしんでいるのはすばらしいことだ。

 また、各地の料理人や生産者、学校などとの連携を進め、料理のプロができる社会貢献を幅広く、積極的に実行しているのも意義深い。

 活動資金を得るため、チャリティ食事会を活動メンバーのホテルでときどき行なっている。これはボランティア活動を長く続けるうえで不可欠だし、東京などの住民に対して、被災地に対する支援の気持ちを忘れないようにと働きかける意味がある。

 料理ボランティアの会のメンバーによると、被災地における生活の復興がほとんど進んでいないところがあるという。それにもかかわらず、東京など他地域においては、被災地への思いやりや関心が薄れているという。それだけに純民間活動で、被災地支援にいそしんでいる料理ボランティアの会の価値は大きいと思う。

 料理ボランティアの会の活動の基本は、「被災直後の炊き出しではなく、ある程度落ち着いた時期に訪問して美味しいものを提供する」ことだという。そして「各被災地の実情をヒアリングの上、各地の情勢分析、課題に沿っての食を通じた交流を継続させる」という平時の活動を主に実施するとしている。

 自然災害の多い日本において、料理ボランティアの会は足が地に着いた活動として、持続することが望まれる。

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2015年8月24日 (月)

年金機構の情報流出に関する検証委報告を読む

 日本年金機構(元社会保険庁)から年金の被保険者・受給者125万人の個人情報が不正アクセスで外部に流出した事件で、その原因や対策を第三者から成る検証委員会(甲斐中辰夫委員長)が8月21日、報告書としてまとめた。

 この報告書を頭から読み、「第2 本委員会が認定した事実」を読み終えるまでの過程で、本当に驚き、かつあきれた。

 コンピューターやネットワークは便利で、いまやビジネスや生活などに不可欠な”利器”だが、同時に情報漏洩・流出やサイバー犯罪などのリスクに備えることが絶対に必要である。その基本的な体制が日本年金機構に欠けていること、同機構を管轄する厚生労働省も、サイバー犯罪への備えがお粗末で、似たり寄ったりであると指摘されている。

 報告書によると、運用管理においては、「システム利用者全体を対象として、標的型攻撃その他のサイバー攻撃の手口、対策等に関する最新の情報に基づくセキュリティ教育及び実践的訓練を継続的に行ない、組織全体のマルウエアへの感染リスクの低減と異常発生時の対処能力の向上を図ることが重要である」と言う。

 そして、これに加えて「特に管理職に対しては、システムに異常が生じた際に、その情報が組織内で迅速に共有されるよう、日頃からコミュニケーションの円滑化の重要性について意識付けを行なう必要がある」と付け加えている。さらに、情報セキュリティ問題の責任部署は常にサイバー攻撃に関する「最新の情報の取得に常に努め、これを適時的確に組織内に周知できる専門家を配置することが必要である」としている。

 ということは、日本年金機構、そして厚労省も、サイバー攻撃に対応できるだけの専門家がいないか、いないに等しかったという恐るべき事実を報告書は指摘しているのである。年金に関して、中央政府の官庁ないしそれに準じた組織がお粗末な仕事振りで、国民の利益を害していることが報告書から読み取れる。

 報告書によれば、今回の調査検証は「責任の有無を確定し、追及することを目的とするものではない」という前提で行なったという。それで、問題点の解明が進んだのだろうが、明らかになったデタラメぶりが免責になるのは釈然としない。前回の改革は、社会保険庁から日本年金機構への看板の書き換えで終わったようなものだが、今回の事件で、もう一歩、制度改革が必要だと思う。国税庁と日本年金機構との一本化など。

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2015年8月18日 (火)

オリックス元社長・会長のコーポレート・ガバナンス論

 東芝の不正会計事件をコーポレート・ガバナンスの観点からどうとらえるか――日本記者クラブが18日に行なったオリックスの元社長・会長(現シニア・パートナー)宮内義彦日本取締役協会会長の記者会見は結構、刺激的だった。宮内氏はオリックスの実質的な創業者で、徹底した規制緩和論者。先頃、功労金44億6900万円を受け取ったという話題の人でもある。

 政府が主導した会社法の改正や証券取引所のルール改正で、上場企業ではコーポレート・ガバナンス強化に向けて社外取締役を大幅に増やす流れにある。密告が契機となって明らかになった東芝の不正会計事件は、コーポレート・ガバナンスの観点からも取り上げられている。一方で、社外取締役にふさわしい人が日本には少ないのではないか、という意見も聞かれる。

 これらの質問に対し、宮内氏は、私の解釈によれば、以下のように答えた。

・コーポレート・ガバナンスと東芝問題とは直接関係がない。コーポレート・ガバナンスは経営者のシリを叩いて企業の業績を上げるためのもの。それで不正を見つけることはできない。コンプライアンス(遵法)と勘違いしてはいけない。

・経営トップが意図して不正会計をやった場合には、コーポレート・ガバナンスの任にあたる独立取締役(社外取締役)がそれを見つけることは至難の技である。不正を見つけるために社外取締役を入れるなんてことはありえない。不正がわかるのは、内部告発か監査法人が見つけるかのいずれかだけだ。ただし、わが国では、監査法人はCEOから、決算が正しいと保証するサインをもらい、免責になるから、話にならない。

・米国などのコーポレート・ガバナンスでは、社外取締役が執行部との攻防で、ROE(株主資本に対する当期純利益の割合)の目標をまとめ、その目標達成に応じた役員報酬を決める。そして、例えば、2年間、その目標を達成できなかったら、経営者を取り替えようとする。にんじんをぶら下げ、そして、ぎりぎりまで経営者を狩り立てる、それがコーポレート・ガバナンスだ。社外取締役はアドバイス機能は求められていない。マーケット(市場)の眼で見てどうかということ、あとパフォーマンスを見ていけばよい。

・米国の企業経営は、出資者である株主さえ喜ばせればいい。従業員が多いとなればクビにする、地元が不利になったら、よそに移る、というようなことで。これに対し、日本の経営者は、会社の利益だけ考えるのではなく、従業員、顧客、地域などのすべてがよかれと考える。だから、社会的に尊敬もされる。それだけに疲れ果てる。

・日本のコーポレート・ガバナンスは米国に2周遅れだ。しかし、これから走れば追いつく。誰が社外取締役を決めるか、指名委員会のメンバーが友達を連れてくる、その繰り返しをしていけば、10年で、株主の利益を代弁する社外取締役と経営者との緊張関係がしっかり出来上がる。

・米国の資本主義は、上場会社クラスの株主の大部分が機関投資家である。そこではファンドマネジャーやアナリストのボーナスが運用成績に比例するので、短期売買中心になっている。そして事業会社の経営者も短期志向なので、ファンドマネジャーと経営者の利害が一致している。ただ、最近、これを是正する動きが米国、フランス、日本(トヨタの種類株)に出始め、最近は、長期的な株主に対して大きな権利を与えるような動きが出てきた。

・日本の経営のありかたは、日米の真ん中が望ましい。「まずはアメリカに向かって漕ぎ出せ、ハワイが天国だ」と私は言っている。

 

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2015年8月15日 (土)

日本は独立国ではなく米国の”保護国”(松本健一)なのか

 先頃亡くなった松本健一氏の著書『なぜ日本にアメリカ軍の基地があるのか』(2010年)を読んだ。

 民主党政権のときにブレーンだった松本氏は、5年前、東京新聞のインタビューで「原則として、独立国家の日本に外国の軍が駐留し、防衛を任せるのはおかしい」などと述べた。そのインタビューをきっかけに出版社の要請に応じて書いたのが本書だという。

 けさ(8月15日)の新聞は戦後70年の首相談話(安倍談話。閣議決定)を大きく取り上げている。冒頭のところで、「先の大戦への道のり、戦後の歩み、二十世紀という時代を、心静かに振り返り、その歴史の教訓の中から、未来の知恵を学ばなければならない」と言っている。

 だが、松本氏の著書が指摘するように、「独立国とは、必ず自分の国を護るための国軍を持たなければならない……」が、日本は「アメリカ軍が駐留軍基地を設けて日本を保護してあげている……」という状態、言うなれば米国の保護国である。

 戦後70年の歴史の教訓を云々するなら、占領下にあった時期の日本、沖縄返還後も日米安保条約によって沖縄に米軍基地が置き続けられること、横須賀にアメリカ第七艦隊の母港が置き続けられること等、米国の保護国という歪んだ同盟に言及すべきだったと思う。

 日本国自身は独立国のつもりだが、米軍の基地が恒久的に存在し、在日米軍の経費の多くを日本国が負担している。憲法第九条を持つ日本はカネで自国防衛を買っているつもりかもしれないが、国家としての誇りを意識せず、こうした日米の特殊な関係を当然視している。首相談話は歴史の教訓と言いつつも、こうした現実を無視した。

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2015年8月11日 (火)

沖縄の「護郷隊」

 11日のNHK総合テレビは「アニメ・ドキュメント あの日、僕らは戦場で」を放送した。今夏も、メディアは70年前の敗戦をさまざまな角度から報じているが、沖縄で、未成年者を約1000人動員して「護郷隊」(遊撃隊)に仕立て、上陸してきた米軍と戦わせたという事実は知らなかった。

 いま中東でIS(イスラミック・ステート)が子供を爆弾テロなどに利用している。いまの日本人はそれを非人道的な行為だと思っているようだが、かつての日本国の軍隊は総力戦ということで未成年者まで戦闘に動員し、多くの死者を出していたのだという。しかも、戦後の”民主国家”ニッポンは、この「護郷隊」にかりたてられた子供たちや家族に対し、詫びの一つもしていないし、償いもしていない。

 いま、自民・公明両党から成る安倍政権は、平和国家ニッポンの安全をいっそう高めるために集団的安全保障など安保法制の整備を図ると主張している。しかし、無理やり動員した子供たちに殴る、蹴るの軍事教練を強制し、「お国のために死ねるか」と脅迫的な言辞を弄した70年前の戦争国家の記憶は消えていない。

 最近の東芝の決算粉飾も同様、わが国は、国とか会社とか、組織を優先し、個人の権利などを後回しにするDNAがいまも存続している。それが、企業の競争力の源泉になっているとともに、民主主義の定着を妨げているのではないか。そうしたカルチャー(風土)のもとでは、米軍の要請に応じて外国に自衛隊を派遣し、戦争する可能性は否定しがたい。 

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2015年8月 9日 (日)

埼玉県知事選の結果にあきれる

 9日(日)に投開票された埼玉県知事選挙は、上田清司氏が当選した。上田氏はこれまで埼玉県知事を3期続けてきており、今回の結果で4期目に入る。しかし、上田氏といえば、3期を超える多選はすべきではない、と主張して当選してきた経歴の持ち主である。それが、自らの手でつくった多選自粛条例に反して、今回、立候補し、当選したというのは一体全体どういうことなのか。

 政治家は言葉が命だとされる。県政の最高責任者である知事自らが、かつて選挙の公約にうたった多選自粛の主張を弊履のごとく捨てるのでは、政治への信頼を損なうこと必定だ。

 こんなデタラメな人物を当選させた選挙民も選挙民ではないかとも思う。自民党県連が推薦する総務省出身の候補者が準備不足などで票を集めることができなかったなどの事情があるにせよ、多くの選挙民が投票に行って、他の候補者に投票し、アンチ・上田氏の意思をもっとはっきりと表明してほしかった。

 投票率は26.63%と、前回(2011年)の投票率より2%ポイント弱、高かった。そこに、選挙民の気持ちが表れているようにも思うが、この程度では、選挙民・住民の”なめんなよ”という怒りまでは読み取れない。国政もそうだが、選挙民・住民は政治家の好き勝手にさせていては、未来が暗いことに気付くべきだ。

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2015年8月 2日 (日)

「プレミアム付き商品券」もバラマキ

 名古屋市が8月1日に「プレミアム付き商品券」を発売したところ、あちこちの販売所に行列ができ、熱中症で倒れる人が幾人も出たという。1冊10000円だが、これで12000円の買い物ができるというので、市民が殺到したわけだ。

 横浜、岡山、熊本、秋田などの各市でも今夏に同様な「プレミアム付き商品券」を販売し、ほぼ即日売り切れになっている。自治体によって若干、制度の違いがあるが、1人で10冊まで買うことができるところもある。100000円出せば、20000円ももうかる勘定だ。行列を厭わねば、労せずしてカネがもうかるという商品券売り出しを政府が大々的に実施することは倫理的に問題があるのではないか。

 それにもましてまずいのは、国・地方が財政再建に真剣に取り組まねばならないのに、「ふるさと納税」や「プレミアム付き商品券」のように、国が地方自治体を使って、せっせとバラマキをしている現実である。

 「ふるさと納税」は、本来、住んでいる自治体に行政サービスの対価として納めるべき個人の所得税や住民税を、他の地方自治体に寄付すれば、そちらからプレゼントが送られてくるという仕組みである。国全体という観点からすれば、納税額のかなりの部分がプレゼント代に費やされてしまう。プレゼント代に費やされた金額は自治体財政の歳入不足につながるので、それだけ国は地方自治体に対する地方交付税交付金を増やさざるをえないことになろう。

 安倍政権は2020年を目途としたプライマリー・バランス(基礎的財政収支)黒字化の目標を取り下げてはいない。だが、2014年度税収が当初見積もりよりかなり多くても、国の借金減らしに充てることなく、財政の大盤振る舞いを継続している。そして、財政再建の目標達成にからんで、楽観的すぎる経済見通しを立てている。

 いまの自民・公明連立政権は政権を維持するため、国民に対し、ことさらに明るい経済展望を示し、国民のご機嫌とりのバラマキを続けている。しかし、それゆえに、財政破綻に至るリスクが大きくなっていることは明らかだろう。

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