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2015年8月18日 (火)

オリックス元社長・会長のコーポレート・ガバナンス論

 東芝の不正会計事件をコーポレート・ガバナンスの観点からどうとらえるか――日本記者クラブが18日に行なったオリックスの元社長・会長(現シニア・パートナー)宮内義彦日本取締役協会会長の記者会見は結構、刺激的だった。宮内氏はオリックスの実質的な創業者で、徹底した規制緩和論者。先頃、功労金44億6900万円を受け取ったという話題の人でもある。

 政府が主導した会社法の改正や証券取引所のルール改正で、上場企業ではコーポレート・ガバナンス強化に向けて社外取締役を大幅に増やす流れにある。密告が契機となって明らかになった東芝の不正会計事件は、コーポレート・ガバナンスの観点からも取り上げられている。一方で、社外取締役にふさわしい人が日本には少ないのではないか、という意見も聞かれる。

 これらの質問に対し、宮内氏は、私の解釈によれば、以下のように答えた。

・コーポレート・ガバナンスと東芝問題とは直接関係がない。コーポレート・ガバナンスは経営者のシリを叩いて企業の業績を上げるためのもの。それで不正を見つけることはできない。コンプライアンス(遵法)と勘違いしてはいけない。

・経営トップが意図して不正会計をやった場合には、コーポレート・ガバナンスの任にあたる独立取締役(社外取締役)がそれを見つけることは至難の技である。不正を見つけるために社外取締役を入れるなんてことはありえない。不正がわかるのは、内部告発か監査法人が見つけるかのいずれかだけだ。ただし、わが国では、監査法人はCEOから、決算が正しいと保証するサインをもらい、免責になるから、話にならない。

・米国などのコーポレート・ガバナンスでは、社外取締役が執行部との攻防で、ROE(株主資本に対する当期純利益の割合)の目標をまとめ、その目標達成に応じた役員報酬を決める。そして、例えば、2年間、その目標を達成できなかったら、経営者を取り替えようとする。にんじんをぶら下げ、そして、ぎりぎりまで経営者を狩り立てる、それがコーポレート・ガバナンスだ。社外取締役はアドバイス機能は求められていない。マーケット(市場)の眼で見てどうかということ、あとパフォーマンスを見ていけばよい。

・米国の企業経営は、出資者である株主さえ喜ばせればいい。従業員が多いとなればクビにする、地元が不利になったら、よそに移る、というようなことで。これに対し、日本の経営者は、会社の利益だけ考えるのではなく、従業員、顧客、地域などのすべてがよかれと考える。だから、社会的に尊敬もされる。それだけに疲れ果てる。

・日本のコーポレート・ガバナンスは米国に2周遅れだ。しかし、これから走れば追いつく。誰が社外取締役を決めるか、指名委員会のメンバーが友達を連れてくる、その繰り返しをしていけば、10年で、株主の利益を代弁する社外取締役と経営者との緊張関係がしっかり出来上がる。

・米国の資本主義は、上場会社クラスの株主の大部分が機関投資家である。そこではファンドマネジャーやアナリストのボーナスが運用成績に比例するので、短期売買中心になっている。そして事業会社の経営者も短期志向なので、ファンドマネジャーと経営者の利害が一致している。ただ、最近、これを是正する動きが米国、フランス、日本(トヨタの種類株)に出始め、最近は、長期的な株主に対して大きな権利を与えるような動きが出てきた。

・日本の経営のありかたは、日米の真ん中が望ましい。「まずはアメリカに向かって漕ぎ出せ、ハワイが天国だ」と私は言っている。

 

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