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2015年9月 2日 (水)

衰退する日本農業の問題点:山下一仁氏の指摘

 TPPはここにきて行き詰まり気味だが、衰退を続ける日本の農業をがらり、成長産業に転換するための重要なステップである。元日本政府の通商交渉担当だった山下一仁氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は9月2日、日本記者クラブでの会見で、問題点と打開策について総括的に語った。その中から、興味深かった指摘をいくつか記す。

・1960年から現在までの日本農業の衰退を示すのが65歳以上の高齢農業者の比率である。1960年には1割だったのが現在は6割に達する。また、農地面積は、609万haだったのが455万ha。生産額は1984年に11.7兆円だったのが、一番保護してきたコメの減少により2009年8兆円に減った。

・日本政府がやってきたコメ農政は、減反による国の財政負担が4千億円、高い米価による消費者の負担が6千億円、計1兆円/年に達する。零細兼業農家がコメづくりを続け、大規模専業農家が増えないため、コメの高コスト構造が続いている。

・コメの生産量は1994年1200万トンから2012年800万トンへと大幅に減っている。高関税で守ってきた国内コメ市場は、高齢化と人口減少でさらに縮小する。しかし、グローバルに見ると、世界の需要は増大しているし、グローバル市場で最も重要なのは品質の違いだ。

・グローバル市場では、日本産コシヒカリなどのように、評価が高いコメは高く売れる。農業輸出を増やすには、TPPなどのように相手国の輸入関税引き下げが必要である。

・農業は衰退し、農協は繁栄するという奇妙な構図が続いている。協同組合・法人の中で、JA農協だけは銀行、生保、損保の業務を兼業できる。高米価政策に加え、非農家でも農協の准組合員として受け入れることができるので、預金量は94兆円と、国内金融機関の中で第2位の座にある。農業衰退と農協繁栄は、TPP反対の運動の裏に隠されている仕組みである。

・農業政策は、高関税などによる価格支持か、それとも直接支払いか、いずれを採るかが問題。日本は前者を踏襲し、座して農業の衰亡を待つのではなく、米、EUがやっている生産と関連しない直接支払いによる構造改革に賭けるべきだ。

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